第31話


〜星宮華恋とのやりとり・続き〜


”やばくないよ。加賀美くんが誰にも言わなければ“


”つまり外部に漏れたらとんでもなくやばい話ってことじゃねーか!“


”まぁそうだよ。だから誰にも言わないでね加賀美くん。絶対だよ“


”そんな重大な話を聞きたくないんだが…“


”どのみちもう半分言っちゃってるようなものだから変わらないよ。聞いてきたのは加賀美くんなんだから最後まで聞いて“


”わかった…“


”あの時三浦くんと喧嘩っぽくなってたのは三浦くんから持ちかけられてた交際を断ったからなんだよね。それで三浦くんは不機嫌になったの“


”こ、交際って…つまり三浦に告白されたってことか?“


”直接好きだとは言われてないよ。ただ周りの人からそれっぽい話は聞こえてきてた。多分三浦くんが自分で話してたんだろうね。いわゆる根回しってやつ?気づいたら身の回りを固められてて、そう言う空気になってたんだよね“


”な、なるほど…“


”それで今度のドラマの撮影になって、三浦くんと顔を合わせることになって。そしたら三浦くんから交際しないかって誘われたんだよね。もう事務所には話を通してあるって。三浦くんの事務所も私の事務所も乗り気だって“


”でもスキャンダルになるんじゃないか?星宮も、それから三浦もファンが多いだろ?“


”確かに、一部のファンの人たちはよく思わないかも。だけど、私たち、なんかの雑誌の今芸能人で付き合ってほしい二人、みたいな企画のアンケート投票で一位になっちゃったんだよね“


”へ、へぇ…“


“私としてはすっごく不本意なんだけど、世間的には私たちが付き合ってほしいって思ってる人たちが多いみたい。私は絶対に嫌なんだけど”


“絶対に嫌なのか…三浦はかっこいいと思うんだが…”


“三浦くんはかっこいいし人気もあるけど、それと好きになるかは別問題だよね?私のことあんまりそう言うのを重視する女だと思って欲しくないかな加賀美くんには”


“お、思ってない。あくまで一般的な話をしただけだ”


“とにかく私は三浦くんと交際とか絶対に嫌だったわけ。でも向こうは乗り気だし、うちの事務所の人たちもそれとなく付き合ってほしいみたいなことを仄めかしてくるし…”


“事務所は星宮に三浦と付き合ってほしかったのか?それで星宮の人気が低下することになったら事務所的には困らないのか?”


“どうだろ?三浦くんと同じできっと私と三浦くんのカップルが世間に歓迎されるって思ってるんじゃないかな。とにかく話題になればいいって考えの人もたくさんいたみたい。ドラマの放送と同時に発表すれば、作品の中でも主人公とヒロインの関係の私たちだから、きっと盛り上がるだろうって”


“確かに…役者同士が付き合うってよくあるよな…”


“私はそう言うのはどっちかっていうとなしかなって思う派なんだけどね。作品は作品。自分の感情とは何の関係もない。ましてや世間に期待されてるからって好きでもない人と付き合うなんてもってのほか。加賀美くんはそう思わない?“


”どちらかといえば俺もそっち派だな“


”でしょ?だから断ったの。そしたら三浦くんはあんな感じになっちゃった“


”そんなことがあったのか…“


”そう。それがあの時の言い争いの真相だよ。加賀美くんも全く無関係でない以上、話ておいた方がいいかなって思って“


”そ、そんな重要なことを俺に話してしまって大丈夫だったのか?“


”まぁいいんじゃない?“


”でもこれ、外部に漏れたらだいぶまずいんじゃないか?“


”まずいと思うよ。自分で言うのもあれだけど、大騒ぎになると思う“


”だよな“


”でも加賀美くんは絶対にそんなことしないでしょ?だから大丈夫“


”も、もちろんだ。絶対に誰にも言わない。そこは信用してくれ“


”うん、信じてるよ“


”でも…そんなことがあったあと、撮影は大丈夫だったのか?”


“三浦くんもプロだからね。撮影中は普通だったよ。でも、終わった後に色々ネチネチ言われたりはしたかな。私は相手にしなかったけど”


“芸能人って大変なんだな”


“そうだね。色々面倒くさいと思うことあるよ。でも私は自分の意思で芸能界に入ったわけだし、楽しいこともたくさんあるよ”


“撮影が始まる前に三浦と話した後、落ち込んだように見えたのもそれ原因だったのか?”


“うん、そうだね。あの時、事務所の偉い人にも三浦との交際、考えておいてほしいとそれとなく言われてた時だったから、どうしようって悩んでた。いっそのこと芸能人辞めちゃおうかなとかそんなことも考えてたよ”


”マジかよ…星宮がやめたりしたら大騒ぎになったんじゃないか?“


”なるだろうけど、好きでもない人と無理やり付き合うぐらいなら芸能人なんて続けなくてもいいかな。テレビに出ることだけが人生じゃないし“


”すげー達観してるんだな“


”そうでもないと思うけど“


”いや、テレビに出ることだけが人生じゃないって言える高校生なんて見たことねーよ。誰だって人気者になりたいって欲求はあるだろ?そう言うのを捨てられる覚悟ってなかなかできるものじゃないと思うぜ。すごいと思う“


“そうかな?私なんて加賀美くんに比べたら全然すごくないよ。世界を救う使命を帯びてるわけもないし。あくまで自分のためにやってるわけだしね”


”……”


“加賀美くん?”


“じ、事務所の偉い人は何て言ってたんだ?星宮と三浦が付き合うことを望んでたんだろ?交際を断ったって知ったら怒ったりしたんじゃないか?“


“苦言みたいなのは呈されたよ。でも私がここ辞めてライバル事務所に行きますよって脅したら謝ってきたよ。だからもう圧力かけられることはないかな”


“お前すごいな…”


“だからすごくないんだって。世界を救うために使命に奔走している加賀美くんの足元にも及ばないよ。あ、それとなんか私と三浦くんのカップル推しだったマネージャーが考え直してくださいって鬱陶しかったから、私には使命がある!だから誰とも付き合うわけにはいかない!って言ってみたよ”


“はぁ!?何してんだお前!?”


“マネージャーびっくりしたような顔して、その後に星宮さんがおかしくなってしまったのは私の責任ですしばらく芸能活動を休みましょうって提案してきてすっごく優しくなったよ。これ、すごく便利だね”


“…マジで何やってんだお前”


“私、学校とかでもよく告白されるし、これからは使命があるから付き合えない!ってことにしていこうかな”


“いや、マジでやめろ。真剣に告白してくる奴らに対してそれは流石に適当すぎる。相手が可哀想だ“


“それ加賀美くんが言う?”


“…その説は誠に申し訳ありませんでした”


“あはは。嘘嘘。冗談だよ?私と違って加賀美くんには本当に使命があるんだもんね。私にはわかってるよ”


“いや…星宮。俺は…”


“だから、使命が終わったら言ってね。前にも言ったけど、色々言いたいことがあるから”

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