第3話   野乃

道成が「香子、学校遅れるぞ」と香子の家に上がって、香子を起こした。

香子が「あ、本当だ。まさか、こんな時間になっても寝ていたんだ」と目覚まし時計が横を向いて居たのは、香子がテーブルの所に頭を乗せていたからだ。

道成が「そろそろ学校に行かないと先生に怒られる」と香子にバックを持たせて、自転車で走って行った。

野乃は、「あれ?お姉ちゃん。何処に居るの?」と家の辺りを見回していた。

何処にも香子の姿はなく、野乃は「私も学校に行かなきゃ」と小さなランドセルを背中に背負って、学校までの道を玄関の扉を鍵閉めて歩いて行った。

野乃は「すみません。遅れました」と学校の門を叩いた。

先生が「野乃さん、遅刻ですよ?こんな時間まで何をしていたんですか?」と野乃を問い詰めた。

野乃は「すみません。ちょっと、寝坊をしてしまってこの時間になってしまいました」と申し訳なさそうに話をした。

先生が「しょうがないですね?遅刻をしてしまうのは本当に残念ですが、まぁ今回は見逃してあげましょう」と野乃に話をした。

野乃が「こんな時、お母さんがいてくれたらな」と空を眺めながら、お腹がグーっと鳴って居た。

道成がそこに居て「何か食べるか?これ、良かったら余った奴だから食べて良いぞ」と野乃に話し掛けた。

野乃が「ありがとう」とお辞儀をして返事を返した。

道成が「お前の家、母さんが居なくて大変だな?もし、不便な事が有ったら、いつでも俺を呼んだらいい」と優しい笑顔を見せた。

野乃が「道成、ありがとう。でも、私にはお姉ちゃんがいつも、お母さん変わりしてくれていたから何とかやって来た。でも、このままお姉ちゃんに甘えてばかりじゃ悪いし」と下を向いていた。

道成が「まぁな。姉ちゃんも、野乃が大人になるにつれて一人で出来る事は一人でやって欲しいのかもしれないな」と野乃の返事に答えた。

野乃は「心配してくれてありがとう。私が今日は食事の手伝いをするよ」とキリッとした顔で返事に答えた。

道成が「そうだな。野乃も香子に甘えてばかりじゃ駄目だから、一人で何でも出来るようにならないと」と笑顔で返事をした。

野乃は道成に笑顔で手を振って、教室に戻って行った。

野乃が階段をダンダンダンと言う音と共に1階へと降りて行った。

屋上で気持ち良い風が、道成の髪の毛をなびかせていた。

そこへ香子が来て「あれ?屋上の扉が開いている」と急いで屋上の扉を閉めに行こうとしたら、道成が居た。

道成が「よ、香子」と手を上げて、香子の方に顔を向けた。

香子が「道成?何で、こんな所に?」と驚いた顔をして屋上に顔を出した。

道成が「それがさ、調度、さっき野乃に会ったんだよね?母さんが亡くなってからお前の家大変だろう?」と香子に声を掛けた。

香子が「あ、そうだね?でも、野乃は私が見て居るから大丈夫よ」と道成に返事を返すと、道成が「さっき、野乃がお腹を減らして屋上に居たから明太子パンをあげたんだ」と香子に返事をした。

道成が「あいつがまだ小さい頃に亡くなってから、母親の姿も憶えていない位だっただろうし、まぁ、気持ちは分からなくもないよ。でも、何かご飯を食わせてやった方が良いぞ」と香子に声を掛けた。

香子が「そうね。あんまり朝ご飯を一人で作る気力も無くて、もし可能ならば2人で料理を作りたいなって思って居るよ」と道成に返事を返した。

道成が「そうか?そういう事を香子の口から、野乃に伝えた方が良いな」と話し掛けた。

香子が「うん、そうだね。ありがとう」と道成に感謝を述べた。

道成が「良いって事よ?ま、頑張れよ」と香子の肩を少し叩いて屋上を後にした。


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