第2話  大好きな母

小さい頃、香子は「お母さん、おはよう」と大きな声で縁側に立って挨拶をした。

静が「あら?香子、おはよう」と後ろを振り返り挨拶をした。

香子が「お母さん何やって居るの?」と話し掛けると、静が「これね?今まで育てていた枝豆が収穫できたのよ。それを収穫出来たから茹でて食べましょう」と笑顔で答えた。

香子は「うわー、ありがとう」と嬉しそうに両手を上げて喜んだ。

静は大きなお腹で、「よいしょ」と大きなかごに入れた枝豆を、大きな鍋を持って来てコンロの上に載せた。

カチャッとコンロの火を起こして、鍋の中に塩を入れて、枝豆を沸騰した湯に入れた。

母の背中がまだ香子にとって、あの時の事が目に焼き付いていた。

静は「子供、産まれそうよ」と大きなお腹を抱えて、医者までタクシーを呼んで、急いで走って行った。

そこには、香子が居て「お母さん、頑張って」と静の手を握り返した。

静が「香子、大丈夫よ。あなたに妹が出来るの。私は、もうこの子を産んだら私の身体はもたないわ」と笑顔で答えた。

そこには、母の静が妹の野乃を産んで、「後は、お姉ちゃん宜しく」と哺乳機に入れられた、野乃を見て息を引き取った。

その後は、香子が「私が野乃のお姉ちゃんです。家に引き取りに来ました」と看護師に声を掛けた。

看護師は「はい、わかりました。では、香子お姉ちゃん、野乃ちゃんは重たいかもしれないけど、大切に家まで送って行ってね」とベビーカーを押していく小さなお母さんになって香子が家まで乗せて行った。

香子は、ベビーカーから野乃を家の座敷に移動させて、オムツを替えたり、食事を持って行って離乳食を作ったり、哺乳瓶にミルクを入れた。

おぎゃおぎゃと泣く、野乃の涙をタオルで拭き、哺乳瓶のミルクを飲ませた。

食事をスプーンですくって食べさせて、香子も自分で食べていた。

夜には夜泣きが凄く、それでも香子は、「よしよし」とあやしていた。

たまには野乃が夜泣きをして耳を塞ぎたくなるくらい嫌になった事も有って、何もしない日も有ったが、必ずオムツだけは取り替えてミルクを与えていた。

香子は「あの時は、お母さんが亡くなって大変だったな」と小さい頃の記憶がふと頭から蘇って来ていた。

ポタポタと水道から零れる水の音が、あの時の小さい頃の香子にとって、母の静が今でも笑顔で「おかえり」と言ってくれて居る様なそんな気がしていた。


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