お受験地獄に堕ちた女

第18話

奈央は『特殊詐欺グループ』の［出し子］として逮捕された。

特殊詐欺は［掛け子］［受け子］［出し子］で構成されている。

［掛け子］が被害者に電話を掛けて嘘をつき、

［受け子］が被害者に会ってキャッシュカードと暗証番号を入手し、

［出し子］がキャッシュカードを使って金を引き出す。

奈央が預かったカードは、［受け子］が入手したカードだった。

奈央は、騙し取ったカードでＡＴＭから金を引き出していた。

［掛け子］［受け子］は「他人を欺いて金品を騙し取る」ので詐欺罪。

［出し子］は「他人の口座から不正に金銭を引き出す」から窃盗罪になる。

［出し子］は大学生の『闇バイト』が多いが、次に狙われるのが主婦だ。

本人に罪の意識は無いが、犯罪に加担し逮捕される。

奈央が引き出した金は、反社会的勢力の活動資金になっていた。

社会への影響が大きく、初犯でも実刑を受ける場合がある。

奈央は実行回数も多く、執行猶予は付かなかった。

なぜこうなったのか？　

奈央は『買い取り店』を出た瞬間から目を付けられていた。

『買い取り店』から出てくる人は二通りある。

モノを処分したい人と、お金に困っている人だ。

店から出てきた雰囲気で、どちらかはすぐ判る。

「金に困ってる女」と見抜かれた奈央はチラシを渡された。

あとは組織の思う壺だ。

特殊詐欺グループは［出し子］から逮捕されることが多い。

ＡＴＭの防犯カメラに映るので無防備だ。

組織もそれを解って、主婦や大学生を使い捨てにする。

トカゲの尻尾切りだ。

何を聞かれても、奈央は「本当に知らない」のだから。