第15話

この調子で半年が過ぎた頃、ついにマイホーム貯金が底を突いた。

日々の暮らしは平常通りだから、陽介にはバレてない。


だがここからは大変だ。もう家計費を削るしかない。

そうなると、すぐバレるだろう。まず食卓が寂しくなる。


「そうよ。働けばいいんだ」

近所に新しいコンビニができてパートを募集している。だが、


「ダメよ。お受験ママが働くなんて。とんでもない」

詩織に止められた。


アテにしていた実家からの援助は……、

「えっ? 蕎麦屋そばや?」


父が会社を早期退職して「蕎麦屋を開業する」と言い出した。

先月から『手打ち蕎麦教室』に通っているらしい。

近所の古民家を借りてリノベーションすると張り切っている。


「だから孫に使う金は無いよ」


最近の祖父母は「自分の人生」を楽しむ傾向にある。

孫の機嫌を取ったり、孫守りに疲れ果てたりしない。


働きに行けない。親の援助もない。どうすれば……? 

スマホをいじってると『主婦も稼げる在宅ワーク』の広告が現れた。

「在宅???」


そうだ! 

家で働くなら詩織さんに秘密にできる。

陽介にもナイショでお金が入る。


奈央はさっそく『在宅ワーク』に応募した。


だが、そこは詐欺まがいの会社だった。


登録料、研修費、システム利用料をカードで支払ったが、

仕事はまったく無く、ローンだけが残った。

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