第14話

「〈限定コース〉に入ったんだって」


奈央と美咲は、公園のベンチに並んで座った。

砂場で、光希と結衣が楽しそうに遊んでいる。


「なんで知ってると思う?」

「お教室で見たんでしょ」

 

「詩織さんから聞いたの。で、アナタもいかが? って」

「あぁ、詩織さん優しいから」


「違う。あの人、楽しんでる。私と貴女を競争させて面白がってる」

奈央には意味が解らない。


「光希くんが〈限定コース〉に入ったとか〈科目別コース〉を全受講したとか、

私に伝えて反応を見てる。競わせようとしてるのよ」

「二人とも合格させたいからでしょ」


「結衣のこと何か言ってた?」


結衣が〈特別コース〉と〈英会話コース〉に入ったことは詩織から聞いた。

でもそれは、光希を思っての親切だ。


そう伝えると、美咲は身体を奈央に向けて、真正面から謝った。

「ごめんなさい。あんな人を紹介して」

「えっ? そんな! 詩織さんと出会えて感謝してるのに」


「真意は解らないけど、あの人は恐い。付き合いは止めた方がいいよ」

美咲はそう言ったが、奈央は信じない。


次の日も詩織と出掛けた。

お受験面接に着る服を選んでもらうためだ。


「奈央さんお似合いよ。面接にも相応しいわ」

という詩織の一言で、高級スーツを購入した。


マイホーム貯金は、どんどん減っていく。

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