第7話

奈央は、詩織が推薦する『幼児教室』の【体験レッスン】に参加した。

詩織の子供達は、ここで【1歳児クラス】から受講している。


「お教室を選ぶポイントは二つよ。合格実績と保護者へのケアね」


詩織によると、この教室は『実績』も『ケア』も万全らしい。

あとは、子供が雰囲気に馴染めるか? 保護者が信頼できるか?

で決めればいいわ、と言われた。


まずは塾長面談だ。

63歳の女性塾長は、とても優しく親身に話を聞いてくれた。

光希のことも褒めてくれる。

「他の子供と遜色ありません。賢いお子さんです」

「本当ですか!」

「ですが、賢いだけでは名門幼稚園に合格できません」


2歳から3歳は『脳の成長期』だ。知力が急激に発達する。

多くの言葉を覚えるから、コミュニケーション力も上がる。

光希の友達は結衣だけだが、もっと多くの友達と遊んで学び、

「集団に溶け込みながらも、自立できる」ことが必要だ。


「当塾では、理解力や行動力を高めて協調性を育てる一方、

子供が自らの意思で問題に取り組む、自主性を高めます。

それらのすべてが、名門幼稚園のお受験に必要だからです」


「合格した先輩から情報を集め、過去問を精査しています。

根拠ない噂や誤った情報に騙される心配はありません」


塾長がテーブルの上に資料を開いた。

「こちらが昨年の実績です」


名門幼稚園合格リストだ。

塾生数から考えると、全員がどこかに合格している。

詩織の言う通り、『実績』は万全だ。


では『保護者へのケア』は?

奈央には大きな問題だ。

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