第5話

「わかるわ、それ!」

共感した山崎美咲が、座っているベンチを叩いた。


美咲は2歳の娘を持つ28歳の専業主婦で、奈央のママ友だ。

近所の公園で雑談するのが日課になっている。


「ウチも学歴に夫婦格差があるのよね」

美咲は短大卒で、夫は有名私立大学を卒業している。


「子供がバカだと私のせいになるでしょ。だから結衣は絶対にお受験させるの」


はっきり言い切る美咲が羨ましい。

奈央には、お受験の経験も知識もない。

専門誌を読んでもネットを見ても、情報が多すぎてよく解らない。

何からどう用意すればいいのか? さっぱり判らない。


恐る恐る訊ねてみた。

「結衣ちゃん、もう準備してるの?」


ニヤリと笑った美咲は、遠くに建つタワーマンションを指差した。

「あのタワマンに……、お受験の達人が住んでるの」

「お受験の達人???」


「長男と次男を○○幼稚園に入れた人よ」

奈央でも知ってる超名門幼稚園だ。


「次男のお受験のとき、山下さんの息子が同じお教室に通って合格したの」


そういえば、近所に○○幼稚園の制服を着た子がいる。


「来年は長女がお受験だから、結衣を同じお教室に通わせるの。

 お受験スキルも伝授してくれるって」


奈央は、砂場で遊ぶ光希と結衣を見比べた。

光希は結衣ちゃんに負けてない。

山下さんの息子にも、義兄夫婦の息子にも負けてるとは思えない。


ちゃんと教育すれば! 教えてあげれば!

光希も名門幼稚園に入園できる。姑や小姑を見返せる。


奈央は美咲に頼んだ。

「お願い。その人を紹介して」

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