第3話

「長男は法学部だけど、次男は理系だから医学部ね」

という清美の思惑は外れ、陽介は理工学部を卒業して建築士になった。


就職先は「海外でも大規模事業を展開する大手上場企業」で、

まぁ『及第点』というところか。


だが、連れてきた嫁は『落第点』にも程遠い高卒女だった。


「最終学歴が高校ってこと?」

呆れているのは陽介の妹の涼香だ。

涼香は大学院を修了後、公立美術館で学芸員をしている。


「そんな人が義理でも姉なんて嫌よ」

「しかも田舎出身の垢抜けない人なのよ」


「ママが反対すればいいのに」

「陽介は言い出したら聞かないから。進学や就職もそうでしょ」


「親戚には隠すしかないわね」

「ええ。高卒なんて誰も想像すらしないわ」


奈央の経歴は「ふぁ~」と隠されたまま結婚式が挙げられた。

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