第4話
召喚が終わり、部屋の中央にスライムがいる。
とくに挨拶なども無いようだが、俺の方から歩み寄った方がいいのかな?
「あー……よく来てくれたな。俺は宮田、ダンジョンマスターだ。分るか?お前の主だぞ。今後ともヨロシク。これからの働きに期待しているから頑張ってくれ」
表面はヌメヌメと蠢いているが、本体は微動だにしない。
「と、とりあえず隅っこで待機してもらえるかな。あ、ペットボトル潰したやつ要る?」
表面はヌメヌメと蠢いているが、本体は微動だにしない。
潰したペットボトルを本体にぺとっと乗せてみると、ゆっくりと体内に取り込み溶かしているようだ。キャップとラベルもついでに乗せる。
「凄いな、お前がいるとゴミの分別をしなくて良さそうだな。そのうち環境大臣に任命するかも知れんから、頑張ってくれ。
とりあえず隅っこで待機してもらえるかな。あ、ビニール袋はやめて、何かに使えるかも知れんから。とりあえず隅っこで待機してくれ」
コンビニの袋は放置していると溶かされるので、三角に折りたたんでズボンのポッケに入れる。
それにしても、あの場から動かないな……あそこに居られると次に召喚した魔物が登場した瞬間、脚がジュ―ってなりそうなんだよなぁ。
そうなると新しく来た奴の心象も悪いだろうしなぁ。
メニューにスライムの飼い方とかないかしら、と操作パネルを見ると――――
クリアおめでとう!初召喚は特殊な演出となっております。如何でしたか?スライムごときの召喚でたった1度のステキな演出を消費される……新人のエフェクト担当がニヤニヤしておりました。
さて、魔物には忠誠度があります。召喚時はある程度命令は聞く。でもやりたくてやっている訳ではないと言う事を理解し、奴等としっかりコミュニケーションをとって忠実な駒を作ってください。
特にスライムやゴブリン等の下等な奴らは、あなたと同じくらいアホなので何度も言い聞かせて下さい。
いつの間にかクリアになっていた。ファンファーレが鳴らない様にSEをオフにしたら全てのSEが鳴らなくなるのか……個別に設定が出来るようにしてもらいたいな、済ハンコの音は豪快で結構気に入っているし。
まぁ他のダンマスも同じような思いをしているだろうから、そいつらが運営にお願いメールをしてるだろう。
俺は改善される事を信じて待つ。
プレゼントを開ける。
運営よりプレゼントが送られてきました。
・チュートリアル その3クリアボーナス・・・5p
取り出しますか?
はい いいえ
はいを選ぶと画面が勝手に切り替わった。
オールクリアおめでとう!
チュートリアルが終了しました。
今後は新参者共のご指導ご鞭撻をお願いいたします。
また、私たちの運営するダンジョンマスター保護の会への寄付も常時受け付けております。
恵まれていない振りをしている我々に愛の手を。定期振り込みが簡単な手続きで便利ですよ。
嘘だろ……チュートリアル、何の役にも立っていない。ホントにこれで終わり?
ポイントも全然貯まっていないし、ダンジョンの拡張方法も全く解ってないし、そもそも出口は?俺は外に買い物とかに行けるのか?
心細い。こんなに心細い気分になったのはいつ以来だろうか……
とりあえずメニューを見てみるとプレゼントが届いていた。
運営よりプレゼントが送られてきました。
・チュートリアル終了記念プレゼント・・・魔物ランダム召喚チケット1枚
取り出しますか?
はい いいえ
なるほど!このチケットでナビ的な魔物が召喚されるんだな。
良かった。このまま死ぬまでスライムと過ごすのかと……そう思ってチラリとスライムを見ると、部屋の隅で待機している!
「鳥取!エライぞ!その調子で頼む!」
召喚チケットと鳥取のお利口ぶりでテンションが上がってくる。
よし、この勢いでチケットを使うぞ!
取り出すを選んだ瞬間、部屋の四方八方から光の糸の様な物が伸びて、中央で絡まり光の繭の様な物を作り始める。
「おぉ!凄い!」
光の繭がバレーボール程の大きさになると伸びていた光の糸が消えた。
静寂が訪れる。
息を呑む俺。部屋の隅で待機している鳥取。
チケット召喚だとこんな演出なのか!あの大きさなら妖精さんかな?
妖精さんのナビ、良いと思います。
繭の内側から光が漏れ始め、部屋全体が光に包まれた瞬間――――召喚チケットが現れた。
魔物ランダム召喚チケットを取り出しました。チケットを使用しますか?
はい いいえ
気を静めながら‘’はい‘’を選んだ。
選んだ瞬間、ビリっとチケットがもぎられる。
2つに分かれたチケットがゆっくりと床に落ちて消える。
嫌なサキュバス、バッテン荒川はエフェクト担当の専属にしてやる。俺は心に刻み込んだ。
魔法陣が現れる。見た感じ鳥取の時と同じやつっぽい。
が、その魔法陣がギュルギュルと回転を始めた。
あれ?鳥取の時こんなだったっけ?何か覚えてないな。
光の柱が魔法陣から立ち上る。あ、これは覚えてる。
光の柱の中に小さな黒い点が現れる。黒い点がどんどんデカくなる。
どんどん、どんどんデカくなり……
何かヤバイと思った時は既に四畳半の部屋の許容を楽に超え、轟音と共に大破壊をもたらした。
黒い奴に跳ね飛ばされた俺は天井や壁の崩落に巻き込まれ、何も分からなくなった。
『暗黒竜が召喚されます。周囲の状況にご注意ください』
薄れゆく意識の中で、操作パネルから感情の起伏が全くない機械音声が聞こえた気がした。
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