四畳半のダンジョンマスター

第2話

　チュートリアルを始める、を選んだ瞬間画面が切り替わり、即座に内容が発表された。

　その１

ダンジョンコアに登録をしよう！・・・報酬　５P

ダンジョンコアに触れ、あんたがマスターである事をコアの奴に教えてやりましょう。

　ん？さっき触ったけどな。

そう思いながら、数々の精神的な疲労で重くなった身体で立ち上がり、のそのそとコアに近づく。

その途中で再び、気の抜けたファンファーレが鳴り響き、クエストの画面にでっかく済のハンコが、ダンッ！と豪快な音と共に押された。

　クリアおめでとう！コアの奴はあんたをマスターと認めたようですぜ。

　どうやら、その１はクリアできたらしい。ご褒美の５ｐというのは多いのか少ないのか判らないが、なんとなくショボく感じる。大量ポイントゲットとは……

　画面左下にプレゼントのアイコンが出現し、２と表示されているのでマークをタップして中身を表示させる。

　運営よりプレゼントが送られてきました。

・チュートリアル開始記念プレゼント・・・水

　取り出しますか？

　　はい　いいえ

・チュートリアル　その１クリアボーナス・・・５ｐ

　取り出しますか？

　　はい　いいえ

「運営……なんか……ソシャゲみたい……」

　なんとなくやり切れない思いを押し殺しながら、取り出すを選ぶ。

開封したらオートでゲット出来るようにしろよ……ゲットしないを選ぶ奴なんか居ないだろうに……

　水を取り出すを選んだ瞬間、後ろからガサッと何かが落ちた音がして、驚いて飛び上がる。

恐る恐る確認するとコンビニ袋がどこからともなく現れていて、中身は５００ｍｌのペットボトルの水だった。あとレシート。豪華景品とは……

　モンマート　暗黒流れ星ダンジョン前店

・おいしい水×１・・・120円

・おにぎり（しお）×１・・・90円

計210円

「え？おにぎりも？」

　慌てて袋を確認するが、おにぎりは入っていなかった。

店の名前とか場所とか、おにぎりはどこへいったのか？とか、消費税は？等と思う事が多いが、水を一口飲んでチュートリアルを続ける事にする。

　その２

ダンジョンを作ろう！・・・報酬　５ｐ

コアに触れ、「ダンジョンクリエイト」と大きな声で元気よく、ハキハキと叫びましょう。

　叫べと？この俺に？ＩＴ家電の声で操作する系の奴が、なんか恥ずかしくて避けているこの俺に、ここで、一人で、物に向かって叫べと言うのか……

　２つめの課題でかなりの難問が来た……いや、叫ぶよ？叫びますよ？やるしかないならやりますよ。

大きく息を吸い込んだ瞬間、ピロンと画面から音がして、追記表示が現れた。

　おばあちゃんの知恵袋　-其之弐-

両腕欠損などでコアに触れることができない山田は、目の前にある画面のメニュー項目から色々できるんよ。画面の操作は念じるだけで可能な事に気付いてなかったじゃろ？アホが。

　一言多いおばあちゃんはムカつくが有益な情報である事には違いない。

さっそくメニューを呼び出し、ダンジョンクリエイトを試す。

実に操作し易い。開発者に小遣いをあげたくなるほどだ。

　ポチっと選んだ瞬間、コアの奴が激しく明滅し始める。ゴゴゴゴゴゴと地鳴りと共に地面が震度２くらいで揺れる。

「お……おっ……おぉ？大丈夫かコレ、崩れたりしねーよな？」

　少し怖くなり、周囲をキョロキョロと見回していると、程なくして揺れが止まった。

ホッと一息ついた直後に、四方の壁が凄い勢いで近づいてくる。

どんどん部屋が狭くなり――――

「ひっ！ひぃー！」

　42年間出した事の無い変な叫び声が出た。潰れちゃうかと思ったよ。

壁は部屋が半分程の広さになった途端に停止してくれた。

　大きく息を吐き、ドキドキと鳴り響く心臓の平常を心から願う。

ずいぶんと狭くなった。

四畳半くらいになった部屋をしょんぼりしながら眺めていると、ファンファーレと共にダン！と済マークのハンコが押された音が響く。

　クリアおめでとう！初期段階のダンジョンコアの掌握できる広さが７．０㎡程度となっております。コアの奴にポイントを恵んでやり、どんどん成長させていきましょう！

　ダンジョンマスターって奴は、ナチュラルに周りを見下しているのが敵認定されている原因の一つなのではないだろうか……

　プレゼントマークをタップする。

　運営よりプレゼントが送られてきました。

・チュートリアル　その２クリアボーナス・・・５ｐ

　取り出しますか？

　　はい　いいえ

　５ｐって絶対ショボいよなぁ……

部屋が狭くなり、圧迫感もあるのでコアの奴にポイントを恵んでやりたいのだが、チュートリアル進行中はクエスト関連の操作しかできない様だ。さっさとクリアしたい。

　その３

魔物を召喚しよう！・・・報酬　５ｐ

ダンジョンコアに触れ、希望する魔物を選びましょう。「サモン！〇〇！」と叫ぶとノコノコとやってきます。

注：〇〇の部分は手下にする魔物の名前です。

　おばあちゃんの知恵袋　-其之弐-

両腕欠損などでコアに触れることができない山田は、目の前にある画面のメニュー項目から色々できるんよ。画面の操作は念じるだけで可能な事にに気付いてなかったじゃろ？アホが。

　お？知恵袋まで一緒に表示されて……あれ？またコレ？