第34話
一緒に寝ている城崎の若干酒臭い寝息を感じながら、雪乃はベットの上で眠れずにいた。
さっき城崎が好きだといってくれた時、どうして「私も」と即答できなかったのだろうか、と雪乃はゴロゴロしながら考えていた。
自分だって、城崎が他の人と付き合うのは嫌だと思うくらいには嫉妬心はあるし、見つめられたらドキドキするし、キュンとする。
それでもどこか、自ら「好き」と言い切れないのはどうしてなのか。
――なんで
ふと、高校生の頃の恋人の事を思い出してしまった。
――翔くんとだって、全然グダグダで、会ったその日にノリでお付き合いして……冥土の土産にキスしてやるぜ!みたいな……。そんな感じだったのに。
――それでも、翔くんの事は大好きだった。自信を持って言えるくらいに。今と何が違うんだろう。
そう思い、そして慌てて首をふる。
「前の彼氏と比べるなんて、失礼千万だ」
ちゃんと好きだし。雪乃はそう呟いて、そっと隣に眠る城崎の髪を撫でた。
ピクリ、と城崎の体がうごいた。
起こしてしまったのかと、慌てて髪を撫でる手を引っ込めた。
城崎は、うーん、と寝ぼけたように呻く。目は閉じたまま、思いっきり手を伸ばして、雪乃を捕まえて引き寄せた。
雪乃はドキドキしながらされるがままにくっついた。
「私、抱きまくらにされてるのかな」
そう小さく笑いながら呟いた時だった。
城崎がムクリと雪乃の上に乗っかってきた。そして……
「な、なんかっ!こっ!これっ!?」
城崎は雪乃を抱きしめたまま、下半身をこちらに密着させてきた。完全に男性の固いソレの感覚がある。
そして、そのまま雪乃の服の中に手を入れてきて、何かを探すように体中を弄り始めたのだ。
「ど、どうした!?どうした!?」
雪乃は慌てて城崎を引き剥がそうとしたが、全く剥がせない。寝ぼけているのか目をつぶったままなのに、力は強い。
それどころか、城崎の手はとうとう雪乃の乳房に触れ、完全に揉み始めた。
さらに下半身も擦りつけてくるように動き出してきた。
「こ、これ完全に、せっくすしようとしてない!?ちょっと!楓起きて!」
雪乃はポコポコと城崎を叩くが、全く起きてくれない。
それどころか、鎖骨の当たりを舐めだし、乳房の先の突起物まで弄りだしてきた。
「やっ……ちょっと……あっ」
妙に色っぽい声が出てしまい、雪乃は少し自分でも恥ずかしくなって慌てて口を抑えた。
『城崎はね、知識はない。でもね、本能は在るのよ』
凛子が以前言っていたことを思いだした。本能って、こういうことか!
このまましてしまうのだろうか、と不安に思いながらも、何となくこのあとどうなるかの興味が勝ってしまい、雪乃はされるがままになっていた。
しかし城崎は、しばらくすると満足したのか手を離し、体も離してごろりと寝返りをうって背中を向けてしまった。
「え、う、嘘でしょ……」
なんだか中途半端に火照らされてしまった体で、雪乃は愕然としてしまった。なんだかちょっと期待してしまった自分が恥ずかしい。
「くそー、私だけ辱めを受けただなんて悔しい」
そう呟いた雪乃は、ちょっとだけ大胆になっていた。
布団をめくり、城崎のズボンを見つめた。
そして、つい、ほんの出来ごころで、つい、つい、城崎のズボンとパンツを思いっきり下げた。
別に何をしてやろうと思ったわけではない。ほんとうについ、変なノリで下げてしまった。
「……え?」
雪乃は目の前に現れた、男性のソレを見つめて驚いた。
「避妊具、ついてる」
なぜ?いつの間に?
雪乃は懸命に時系列を逆再生してみる。
「部屋に帰ってきたとき、そういえば一瞬違う部屋に消えたな……。その時……?そっか、キスで妊娠すると思ってるからキスする前に避妊……?えっ?キスする前に避妊具つけてるの?」
雪乃はそう結論づけて想像してみた。
なんだか、あんな冷静さを欠いていたように見せかけて、ちゃんとキス前に避妊して偉いな、と思った。その一方で、律儀にキス前に毎回避妊具つけているのかと思うと、妙に愛らしくなってしまい、ふふ、と笑った。
頬杖をついて城崎の男性のソレを見つめながら、「なーんか、可愛いなぁ」と呟いた時だった。
「雪乃……何してんだ……」
いつの間にか起きていた、ドン引きした顔の城崎と目が合ってしまった。
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