第26話

「何なんだよアイツはよっ!」

 地面を蹴り上げながら、城崎は大きな声舌打ちをする。

 宮間がポンポンとなだめるように言った。

「よく分かんねえけど、仲直りできてよかったじゃん?」

「下心丸出しなのが、バレてたんじゃないの?」

「そう言ってやるなよ」

 千草が辛辣な事を言うのを、宮間は咎めた。

「今まで何人も女がいて、こんなおあずけ食らうの初めてなんだ。まあ、相当溜まってんだよ。優しくしてやれよ。俺から説教しといてやるからさ」

「いや……。うん、まあ……」

 千草は何とも言えずに頷いた。


 宮間は城崎と肩を組むようにして慰めるように言った。

「機嫌直せ。今日は俺が付き合ってやるからよ。何なら、俺がチューしてやろうか?」

「やめろ冗談じゃねえ」

 城崎は心底嫌そうに、しかし少し笑いながら答えた。

「テメェはタイプじゃねえから無理だ」

「そうか残念だ。なら千草は?」

「はっ?」

 急にふられて千草は変な声が出た。

 しかし冗談だと思っているので、笑って返す。

「俺もタイプじゃないでしょ?」

「あー……ギリイケる」

 真剣な顔で城崎が言うので、千草はギョッとした。

「やだなぁ。冗談きついって」

「千草も俺の部屋来るよな?一緒に飲もうぜ。なぁに、何もしねえからよ」

 城崎が肩を組んでくるので、千草は慌てた。

「絶対何かする男の常套句やめてくれない?」

「千草、観念しなよ」

 宮間も笑う。

「やだからね!絶対にやだからね!したら浮気だよ。雪乃ちゃんにチクるからね!!」

「だから、何もしねえって」

 必死で言う千草を、すでに機嫌が治った城崎は、鼻歌を歌いながら引きずっていくのだった。



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