第24話

 ※※※※


「うわぁ……今日は、荒れてるね」

 度を超えたヤンチャ坊主達、つまりヤンキーの喧嘩の仲裁という名目で、全員をのしてしまった城崎を目の前に、途中からやって来た千草が呆れたように言った。

「ああ?別に荒れてなんかねえよ」

「荒れてる荒れてる。また昨日ね、雪乃ちゃんに頭突き食らったんだってさ」

 間宮が面白そうに伝えてくるのを、城崎は黙ってギロリと睨んだ。


 そしてイライラしたように、地面に転がっているヤンキーを軽く蹴り上げた。

「おい、テメェら早く立って帰れよ。店の前で喧嘩して、ゴメイワクだろうが」

「うるせえな」

 ヤンキーの一人がイライラしながらヨロヨロと立ち上がった。

「クソ、何でいつも何でこんな童貞野郎に……」

「はあ?誰が童貞野郎だよ」

「オメェだよ」

 ヤンキーが城崎を睨む。城崎は、はぁ、と大きなため息をついてみせた。

「おいおい、負け惜しみなら、もう少しリアルな事言えよ」

「負け惜しみじゃねえし、リアルだし」

「わかったわかった。いいからさっさと帰れよ。また顔蹴られてか?」

「あのなぁっ」

「やめとけって。本当に負け惜しみだ」

 ヤンキーのリーダー格の奴が、声を上げた。

「童貞とか関係ねえ。こんだけやられてグズグズ言ってるこっちがカッコ悪い。帰る」

 そう言って、リーダーは立ち上がった。

 文句を言っていたヤンキーや、その他の奴らも、慌てて後を追って行ってしまった。


「ヤンキーの男気のせいで、また城崎が真実を知る機会を逃してしまった」

 千草がボソリと言うと、それが聞こえていたらしい宮間が苦笑いをした。

「何なんだろうな。不思議と機会を逃すんだよな。童貞の神が付いてんだよ」

「おい、何がコソコソ話してんだよ」

 城崎が不機嫌そうに声をかけた。

「なんか暴れ足りねえ。どっかで飲んで行く。千草も付き合えよ」

「そんな返り血ついた服でお店入ったら通報されるよ」

 千草に言われて、城崎は舌打ちをする。

「じゃぁコンビニでいい」


 そう言って城崎があるき出した時だった。


「城崎さん!!」

 少し離れたところから、中学生が顔を出し、城崎に駆け寄った。

「おう一也。喧嘩教えてくれてサンキューな」

 城崎は、中学生、一也の頭を撫でた。

「ううん。お店の前で何人か喧嘩始めちゃってヤバいなぁって思って。城崎さんなら何とかしてくれそうと思って」

 城崎に頭を撫でられながら、一也は嬉しそうに言った。

 千草が、一也の前にしゃがみこんで優しく言った。

「大事になる前でよかったね。一也が教えてくれたからだね。でも、街の喧嘩は、本当は城崎じゃなくて交番の警察に言うのが一番なんだよ」

「だって、警察怖いもん。夜に出歩くなって怒らるし」

 一也は不貞腐れた。

「まあそうか。確かに中学生が出歩く時間じゃないね」

「一也、テメェも早く帰れ。そろそろマジで補導されるぞ」

 城崎の言葉に、一也は頷いた。


「俺、送っていってやろうか」

 宮間がそう言うと、一也はあからさまに不満そうな顔になった。

「城崎さんは送ってくれないの」

「俺はこれから、コンビニで酒買って飲むという重大任務がある」

 城崎はふんぞり返った。

 一也は小さくため息をついた。

「じゃあ一人で帰る。宮間はいらない」

「おいっ」

「じゃーねー」

 一也は明るく駆けて行ってしまった。


「いいのかな?中学生一人で帰らせて」

 千草が心配そうに聞くと、城崎は素っ気なく言った。

「まあ、夜に出歩くんなら少しは自己責任持てって話してあるからな」

「一也は、城崎が大好きだからな。城崎以外に送らせねえんだよ」

 宮間も笑いながら言った。



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