第21話

 なんやかんやで楽しく食事をしてしまい、ハッと雪乃は思いだしたように言った。


「そうだ、こんな和気あいあいとする予定じゃなかった!さっきの、ごちゃごちゃ煩かったとか、どういうことなんですか!」

 キッと雪乃は城崎を睨む。

 城崎は、のんびりと烏龍茶を飲みながら答えた。

「そのままの意味だ。完全にいい雰囲気になってんのに、直前になってなんやかんや言いやがって」

「だって、そりゃ、なんかだって」

 雪乃はあの時の事を思いだして赤くなった。

「だって、そりゃ緊張するし……」

「雪乃が緊張してんのはわかってた。だから、黙って任せてもらえりゃ良かったんだ」

 城崎も不機嫌そうに言う。

「……もしかしてですけど。気遣いのつもりでした?」

 雪乃は恐る恐るたずねた。

「私が緊張してるから、こっちに任せてリラックスしてねーって事だった……?」

「そりゃそうだろ。なんで皆文句を言ってんだか」

 城崎は不機嫌な顔をする。

「いやいや、もう完全に自分勝手な男の発言ですよそれ。え?いつもそんな感じ?今までよく女のコから怒られませんでしたね!」

「怒られてねえが」

「クソー、イケメンに皆何も言えなくなってたな。気持ちは分からなくもないけど」

 ブツブツと言う雪乃の横に、城崎は自然に移動してきた。


「ま、そんな訳だから」

 そう言って、城崎は雪乃に身体を寄せた。

「な、何してるんですか?」

「もう食い終わっただろ?」

「はい。美味しかったです」

「そりゃ良かった」

 そう言って、城崎は雪乃の顎を片手で持ち上げた。

 雪乃は慌てて顔を逸らそうと動かしたが、思ったより力が強くて動かせなかった。

「テメェ何逃げようとしてんだよ」

「いや、むしろ何しようとしてるんですか」

「いいだろ。今日は」

「普通中華食べた後にキスしようとします!?」

「ニンニクは入れなかったぞ」

「そういう事じゃないですって!」

 雪乃はグイグイと城崎の胸を押して拒絶をアピールする。


「あと何が文句あんだよ!」

「まだ謝ってもらってないもん!」

「あれは謝らねえっっっただろ。俺は悪いこと言ったつもりはねえ」

「でも私は傷つきました!言い方っていうのがあると思います!」

「はあっ!?」

 城崎は雪乃をソファに押し倒しながら言った。

「あのなぁ。思ってるより俺はテメェが気に入ってんだよ。妙にはっきりとした物言いで気が強い女かと思いきや、すぐ何してもすぐ照れやがって……。ヤッたらどんなツラになるのか、見たくて見たくて我慢できねえんだよ」

「な、なにそれ……」

 雪乃は思わず真っ赤になって黙ってしまった。

 そこまで言われると、雪乃だってちょっとキュンとしてしまう。あんなチャラ男が、自分とキスしたくて我慢できない、なんて、ちょっと嬉しくてムズムズする。


 ――まあ、キスくらいだしな。そこまで頑固になるのも大人気ないかな。


 そう思って、雪乃は少し力を抜いた。

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