第17話
「おい、なに他の男と仲良くしてんだよ。テメェまだ俺の女だろうが」
高校生の後ろから、城崎が怖い顔で現れた。
「か、楓!?」
「連絡しても出ねえで。俺の家の前で逢引とはいい度胸じゃねえか」
「どうしてこれが仲良く逢引にみえるんですか!」
雪乃が必死で文句を言う。
高校生は、城崎の姿を見ると、真っ青になって逃げ出そうとした。しかしすぐに城崎のあとから走ってやって来た宮間によってあっさり捕まった。
「おっと、なんで逃げるのかな?」
宮間が優しくたずねる。高校生は青い顔で口をパクパクさせた。
「雪乃ちゃん、大丈夫?なんでこんなところに?」
千草も遅れて現れて、雪乃に近寄った。
雪乃はぺろっと舌を出した。
「いやぁ、言われた通りちゃんと話をしようと思って来たんだけど何かトラブルに遭遇しちゃって」
「そっかあ、話し合う方を選んじゃったかぁ」
千草は困ったように笑った。
一方の城崎は、宮間に捕まった高校生を観察するように眺めた。
「何焦ってんだ?あ?テメェさっき見た顔だな。ああ、さっき煙草吸ってた奴のダチか」
少し面白そうにそう言ってニヤリと笑った。
高校生がチラチラビルの階段に目をやるのを、城崎は見逃さなかった。
「はーん、さては、復讐に来やがったな?うちの事務所のドアに落書きでもしてんのか?それともネズミの死体でも置いてんのか?」
「いや、その」
高校生は目を泳がせた。
雪乃は、高校生があまりにも動揺しているので可哀想になってきた。
「楓、あの、あんまりキツくしないであげて。そのボコボコにして海に沈めるとかはやめてあげて」
「雪乃は俺の事ヤクザかなにかだと思ってんのか?」
城崎は呆れたように言う。
「んな事しねえよ。なあ、何してくれたか早速一緒に見に行くか?」
城崎は高校生の肩を掴んで一緒にビルの階段を登っていく。高校生は絶望的な顔をしていた。
階段を登っている途中で城崎は振り返り、雪乃に言った。
「ちょっとコイツらと事務所見てすぐに戻るから、それまで待ってろ。前の頭突きの件と今まで連絡取れなかった件について、キッチリ話つけようじゃねえか。逃げんじゃねえぞ」
「私も話をしなきゃと思っていました。望むところです」
雪乃は力強く応じる。
少しして、ビルの二階、城崎の事務所の方から、城崎の地獄の鬼のような低い怒鳴り声と、高校生達の断末魔が聞こえてきた。
「だ、大丈夫だと思うけど、一応やり過ぎてねえか見てくるわ」
宮間が慌てて事務所へ向かって行った。
「俺も行く」
千草も宮間の後を追った。
残された雪乃が心配そうに立っていると、ぽんと肩を叩かれた。
「雪乃ちゃん、だっけ。さ、今のうちにいくよ」
凛子がそう言って、雪乃の手を引く。
「い、行くって何処へ?」
「どこ行こうか?もうごはんは食べたよね?喫茶店でアイスでも食べる?」
「で、でも、私、楓を待たないと」
「いや、今日は駄目よ。逃げた方がいい。今の城崎はヤバイ。あのままだと気性が荒くなってて危険」
「そんな、冬眠明けのクマみたいな……」
雪乃はそのまま凛子に引っ張られながら、その場を後にするのだった。
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