第16話
※※※※
千草に日中言われた事を考えて、考えて、色々考えた雪乃は、考える事が面倒になった。
「よし、会いに行こう」
とりあえず、会って話をしよう。
そしてから考えよう。
思い立ったが吉日、雪乃はすぐに城崎の事務所に向かった。
しかし営業時間が終わっていた事務所には誰もおらず、自宅の方も留守のようだった。
連絡すれば良いのだろうが、最近散々連絡を無視していたので、わざわざ呼び出すのも気後れする。
「ま、今日じゃなくてもいっか」
雪乃はそう思ってその場を立ち去った。
フラフラと歩いていた時だった。
ボソボソと話し合う高校生くらいの三人組とすれ違った。何やら中身の見えない大きなゴミ袋を持っていて目立っている。
「……なあやめとけって。相手はあの城崎さんだぞ」
「バレたら今度は殺されるって」
「うるせえな。さっちんボッコボコにされたんだぞ。黙って引き下がるかよ」
「でも、ボッコボコにされたから、結局警察に怒られたのは城崎さんの方で、俺等逃げれたじゃん。学校にもバレなくて済んだし」
「そういう問題じゃねえだろ。プライドの問題だ」
――なんか不穏……。
雪乃は振り返り、こっそりと彼らの後をつけて行った。
高校生たちは、城崎のビルの前にやってきた。
「ここだろ?あの城崎ってやつの職場。偉そうな」
「なあ、マジでやめた方がいいって」
「うるせえな。さすがにビルの入口は人目につくな。事務所ある二階行く」
「おい、まじかよ」
高校生達はビルの階段を登っていく。
これ以上追いかけたら見つかった時ごまかせないな、と一瞬雪乃は迷ったが、引き返すのも癪で、尾行を続行することにした。
高校生たちは、城崎の事務所の前に来ると、ゴミ袋の中から何かを取り出した。
そしてそのうちの一人が、思いっきり事務所のドアに投げつけたのだ。
真赤な液体がドアに広がった。
雪乃は、「ヒッ」と声を殺して悲鳴を上げた。
「やば、それ何?」
「野菜ジュースの空きパック?中身結構残ってんじゃん、色エグっ。あ、このミルクプリンの容器も結構中身あるぜ」
「ミルク系は放置したら臭えやつじゃん」
初めは抵抗していた二人の高校生も、一人がやりだすと面白くなったのか次々とゴミ袋からゴミを取り出してドアに投げつけていく。
ヤバいこれは。雪乃はスマホを取り出して証拠動画を取ろうとした。
ピロン、という起動音が、思った以上に響いて、高校生達が一斉にこちらを見た。
「おい、あの女、見てるぞ」
「動画取られたんじゃね?ネットにアップされたら終わりじゃん。てか城崎にバレたら殺されるんじゃ」
「消させろ!」
「やっばっ!!」
慌てて雪乃は逃げ出した。
ビルから出たところであっさりと雪乃は捕まった。
相手は一人だ。どうやらドアのところで他の二人は待っているらしい。片づけて逃げる準備でもしているのだろう。
「さっき動画撮ったよな?」
「撮ってないです!撮ろうとしただけです!」
「スマホよこせよ」
「嫌です嫌です」
「撮ってないなら見せられるだろ」
「見せられないです見せられないです」
「いいからっ」
高校生は、強引な手段を取ろうにも、周りの目を気にしてかあまり強く出られないらしい。
小声で、口調こそ乱暴だが必死に頼み込むようにしていた。
「なあ頼む。バレたらヤバイ」
「じ、じゃあ今からお掃除しましょう。急いで。そしたら多分大丈夫。私も動画消します」
「やっぱり撮ってんじゃねえか!」
高校生は雪乃のスマホを取り上げようと手を伸ばした。その時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます