第13話

※※※※


「あれ?城崎今日機嫌悪くない?」


昔ながらの大衆居酒屋。


少し遅れてやってきた 凛子リンコは、席に着くなりそうたずねた。


「ああ、さっきその辺で煙草吸ってるガキいたから締め上げたら、やりすぎて警察に怒られてきたとこだからな」

席にいたのは城崎と、城崎の友人の 宮間ミヤマだ。

宮間は、ブスッとしている城崎の代わりに凛子に説明してやった。


「はあー、相変わらずだね、城崎は」

「うるせー」

城崎は不機嫌そうに言った。


「まあ、その前から機嫌は悪いんだけどな。何か、最近出来た新しい彼女に、部屋でいい雰囲気になった途端に逃げられたらしいぜ」

宮間はニヤニヤと説明した。

「それも頭突きされて!」

「宮間なんでそんなに楽しそうなの?」

凛子が呆れたように言うと、宮間は城崎の背中をバンバン叩きながら言った。

「イケメンが振られる話ほど、酒のつまみになるもんはねえだろ」

「うるせえなテメエはよぉ!」

とうとう城崎は宮間にゲンコツを食らわせた。宮間は大げさに痛がる。


「ま、よくわかんないけど多分それ城崎が悪いでしょ」

凛子はあっさりと言いながら、店員にビールを頼んだ。

「お、さすが元カノ。わかりますか?」

「元カノ?やめてよ。3分で別れたのをカウントしないで」

「そりゃそうだ」

城崎も鼻で笑う。


「なんで3分で別れたんだっけ?」

宮間がたずねるので、凛子はため息をついて説明した。

「単に確認不足。当時城崎は三股してたからね。三股するようなだらしない人なら無理だからやっぱ付き合うとか無しで。ってなっただけ」

「なんだその男。最低なやつだな」

宮間は城崎を見ながらニヤニヤと言った。

「まあ、どうせ今もその頭突き彼女の他にも何人も彼女いるんだろ?そいつらに慰めてもらえばいいじゃん」

そう言って肩を掴んでくる宮間を、城崎はギロリと睨んで言った。


「全員、昨日までに別れた」


「は?」

「何で?城崎から?」

宮間と凛子は目を丸くした。


「アイツが切れって言ったからな」

飄々と言う城崎に、凛子は驚いた。

「え?あんた、その子が全員切れって言ったから切ったの?今までそんな事無かったじゃない」

「今まで言われた事ねえからな」

「え?言われたら切ったの?一人に絞れたの?」

「何でそんなびっくりしてんだよ。俺の事何だと思ってんだ?」

城崎は呆れたように言った。

「アイツにはムカついたからな。ぜっっってえ次は最後までヤる。その為にまずはアイツの願い通り他の女は全員すぐに切った」

城崎はイライラと言った。

「ヤるって、あんた……」

「でもアイツ、あれから全然連絡つかねえ」

「嫌われたんだろ」

宮間は遠慮なく言って、また城崎からゲンコツを食らう。

「仕方ねえから今日千草に頼んだ。アイツと同じ大学生らしいし」

「え?千草?アイツの知り合いなの?」

思わず凛子は苦い顔をした。

「凛子って千草苦手だよな」

「なんか、インテリ臭くて嫌。チャラい格好してるけど、なんかアイツ胡散臭くて」

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