第11話

「何か考え事か?」

「やっ」

 咎めるように城崎は雪乃の首筋を噛む。


 そのうち、城崎の唇は雪乃の顔の上に落ちてきた。唇の端を軽くついばむようにキスしたあと、そっと低い声で囁いた。


「もう、入れてもいいな?」


「い、入れ!?」


 ――何を!?な、何を!?……あ、舌か!


 焦ったが、そりゃそうか。このタイミングで性器を入れる話ではないだろう。大体、彼にとってのセックスはキスなのだから。


 ということは?


「あ、あ、あの、避妊はっ?」

 雪乃は焦ったように言った。

 キスで避妊って何言ってんだろう、と雪乃は思ったが、雪乃もかなりパニックになっていた。


 雪乃の言葉に、城崎は少し眉を潜めた。

「心配すんな。大丈夫だ」

「大丈夫って……」

 大丈夫って、避妊って何?キスの避妊って何?

 雪乃は聞きたかったが、その途端にまた耳を齧られて、「ふえっ」と変な声しか出なかった。


「大丈夫だから。雪乃まさか初めてか?そんは固くなんなよ」

 城崎はそっと雪乃の唇に指を当てて、軽く唇を開かせた。


 ――慣れてる……慣れてる!やっぱりチャラ男だ!


 あれ?そう言えば……。


「そ、そういえば、もう他の彼女、全員切ったの?」

「ああ?」

 城崎は怪訝そうな顔をした。

「全く、まだだが」

「は?」

「ちょっと時間かかるっっったじゃねえか。ちょっとの間くらい我慢しろよ」

「え、えぇ……」

「つーか、もう喋んじゃねえよ。白けるだろ」

 舌打ちをして城崎は再度雪乃に顔を近づけた。


「雪乃、テメエは黙って突っ込まれてればいいんだよ」


 その言葉を聞いた瞬間、雪乃の中でプチンと何かが切れた。


 そして気づくと、雪乃は力いっぱい城崎に〈頭突き〉をしていた。

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