第7話

 ※※※※


 次の日、雪乃が授業の合間にスマホを覗くと、知らない番号から電話がかかってきていた。


「おう雪乃。昨日は悪かったな」

 声でわかった。城崎だ。

「連絡先も交換しねえで別れちまったからな。千草から番号聞いたんだ」

「そうなんですね。昨日は大丈夫でしたか?」

「ああ、問題ねえ。話を聞きゃぁどっち側にも問題があったみてえだったがな。二度と問題起こさせねえように脅してやったから大丈夫だ」

 電話の向こうで城崎は楽しそうな声をだしていた。

「ところで、雪乃は今日の夜は暇か」

「今日?暇ですよ」

「なら、呑みにでも行こうぜ。知り合いの店で、いい焼酎入れてる店あるんだけどよ。雪乃焼酎いけるか?」

「何でもイケます!」

 お酒の大好きな雪乃ははしゃぐように答えた。

 電話口の城崎は嬉しそうに笑った。

「なら、6時に事務所閉めるから、それくらいに事務所来いよ。」

「はぁい」


 城崎と約束をして、ご機嫌で電話を切る雪乃に、友人の桃香が近づいてきた。

「何?雪乃なんかご機嫌じゃない?」

「えへへー。今日の夜、イケメンとデートで美味しい焼酎飲みに行きまーす」

「何?イケメン?聞き捨てならないんだけど」

 桃香が雪乃に迫る。

「どんな人?」

「えっと、夜の街のカリスマ的な」

「……ダセえ」

 正直者の桃香は思わず漏らした。

「ダサすぎる……え?厨二病?キッズなの?今どき夜の街のカリスマ?」

「大人だよ。25歳」

「25歳で夜の街でやんちゃしてんの?ちょっと笑える」

「喧嘩っ早い。非行少年たちのリーダー的な存在」

「いやいや……。え?暴走族とかじゃないよね?」

「なんか。税理士とか行政書士とか言ってたよ」

「やだカッコイイ……!!」

「急に手のひら返すじゃん……」

 ころっと評価を変えた桃香に、雪乃は呆れたように言った。桃香はぺろっと舌を出した。

「だって、やっぱちゃんとした仕事してる人なら、喧嘩っ早いとかは逆にギャップでカッコイイじゃん」

「チョロいなぁ」

 雪乃は苦笑いする。

「ところでさ、話を聞く限りだと、ずいぶんクセが強い人みたいだけど雪乃大丈夫なの?弄ばれたりしない?」

 心配そうにたずねる桃香は、雪乃に何かを持たせた。

「何これ」

「避妊具」

「いらないよぉ」

 雪乃は慌てて桃香に避妊具を返そうとした。

「だめ!」

 桃香は険しい顔で無理やり避妊具を雪乃のポケットに押し込む。

「絶対に、大丈夫なのにぃ」


 ――だって、恐らくキス以上を知らない人なんだから。


 雪乃の気持ちを知らない桃香は、雪乃が避妊具を受け取ったのを確認して、「じゃっ、私は授業あるから」と行ってしまった。

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