第4話
「養護教諭養成課程、つまり保健室の先生になるんでしょ?」
「あのですね、保健室の先生は、そういう思春期のおなやみ相談受け付けるかもしれませんが、『センセイが、イイコト教えてあ・げ・る』的な事はAVの中だけですからね!」
「そこまでは求めてないけど」
千草は苦笑いする。
「まあ、そうだよね。昨日たまたま君に会って、何となく声かけてみただけだから。無理なら大丈夫だから、忘れて」
そう言って、千草が立ち上がろうとするのを、雪乃は止めた。
「ちょっと待ってください。無理なんて言ってないですけど」
「え?」
「やりますよ」
「え?」
千草はポカンとした。
雪乃は少し照れくさそうにモジモジしながら言った。
「え、だって、城崎楓さん、でしたっけ。超イケメンだったし。まあ頼まれたならやぶさかではないっていうか。今イケメン彼氏募集中だったし」
「ま、まあ引き受けてくれるなら嬉しいけど。正直こんな即答快諾してくれるとは思わなかったよ」
千草は笑いながら言った。
「じゃあ今度城崎に君のこと紹介しに行くよ。彼、来る者拒まずタイプだからどんな娘でも彼女になれるよ」
「どんな娘でもってなかなか失礼」
雪乃の訴えを無視して、千草は話を続ける。
「ところで、デリケートな質問してもいいかな?答えたくなかったら答えなくていいけど。
雪乃ちゃん、経験人数は、どれくらい?」
申し訳無さそうな顔をしながら聞いてくる千草に、雪乃は胸を張って答えた。
「0です」
「…………オッケ。今の話は無かったことにしよう。今日の事は忘れてね。じゃあ」
「ちょっと、ちょっと待ってくださいよぉ」
雪乃は、立ち去ろうとする千草に縋り付いた。
「何でっ?何でっ私じゃだめなの?」
「ちょっと、傍から見たら修羅場カップルみたいに見えるからやめてよ」
千草はあわてて雪乃を席に座らせた。
「いや、そりゃそうでしょ。未経験者にコーチ頼むわけにもいかないし。それ以上に、大事な初体験を、こんな事に使わせるわけにはいかないよ」
「へーきへーき。別に大事に取っておいたわけでも無いですし。あとちゃんと私も勉強していくので任せてください」
カラカラと笑う雪乃に、千草は頭を抱えた。
「あのねえ……」
呆れ顔の千草に、雪乃はニヤリと笑って言った。
「いいですか、そんな変な依頼受ける人なんて、多分いません。それどころか、センシティブな話過ぎて、提案した千草さんがセクハラしたと言う人だっているかもしれませんよ。
千草さん今4年ですよね?セクハラの噂が立ったら、就職とかに影響するかもしれませんよ」
「……あれ?もしかして俺、脅されてる?」
千草は呆れ顔で、しかし面白そうに笑った。
「とんでもない子に声かけちゃったなぁ。うーん、じゃ無理しない程度に……やってみようか」
「ヤッタァ」
雪乃はガッツポーズをした。
「そんなに彼氏ほしかったの?」
「えへへ」
照れくさそうに笑う雪乃と、呆れ顔の千草は、連絡先を交換してその日は別れた。
「ふふ。面白そうな事になったなぁ」
雪乃は上機嫌で午後の授業の準備を始めるのだった。
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