第2話

「は?」

 雪乃はポカンとして聞き返した。

「キスで妊娠する?いやいや、今ドキ小学生でもそんな事思ってないでしょ。あの人実は小学三年生だったりします?」

「いや、ゴリゴリ成人。二十五歳」

「年上じゃん……」

 雪乃の反応に、千草は少し面白そうに笑った。

「でも、そうなんだよ。あの城崎って男は」

「城崎さん」

 なるほど、あのチャラホストは城崎さんっていうのか。雪乃は頷いた。

「いや、でもこの情報化社会ネット社会でその性知識のまま大人になるのは無理があるでしょ。エロ動画だってそこら中に転がってるのに」

「いや、ちゃんとセックスの事は知ってるよ。ただ、あれは一部のマニアだけがやる変態行為だと思ってる」

「変態行為!!」

 雪乃は思わず興奮したように叫んだ。

 雪乃の反応が面白いのか、千草はクスクスと笑う。

「ま、そんなわけだから病院行かなくていいのは僕はわかってる。だから大丈夫、このまま一人で帰れるよね?」

「はい」

 千草に言われて、雪乃は「それでは」と帰ろうとした。

「それじゃあ、またね、

 後ろからそんな声がして、雪乃は思わず振り返った。なぜ名前をしっているのか、と問おうかと思ったが、すでに千草の姿は無く、深夜の飲食店の光だけが煌めいていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る