フラグ 15 キレキレ王子様の条件
「エデン・リュート……キサマ、今なんと言った?」
あーぁ、やっぱそうなるわな。
王子さん、俺を睨んでるよ。
ん? レイのターンじゃないのかって?
やっぱ、後もーちっと俺のターンになっちまったわ。
もちろん、この回からは出てくるって。
でも、なんか展開上この方がいいらしくてさ。
いや、俺だって出っ放しは疲れてるし、すまんが後は作者に言ってくれ。
この物語を作ってる作者って嘘はつかんけど、こういう感じがあるんよ。
てか、そろそろ王子さんの方に向き直らないとマズいマズい。
結構怒ってるし。
「だから、溢れかえったモンスター共は俺が片づけるんで、レイの処刑を取り消せって言ったんですよ。聞こえましたかーーーー」
俺が敢えてメチャ無礼な態度を取ると、王子さんよりも側近達がブチ切れてきた。
特にさっきのめざまし占いの男なんて、メッチャ怖い顔して俺の事を睨んでる。
「キサマっ! さっきからカイン様に対し、なんだその態度は!」
ゔえっ、おっさんから飛沫が飛んできた。
ディスタンスディスタンス。
そんなに怒ってもいい事ないよ。
笑っていこーぜ、といいたいけどより怒りそうだな。
それに、イグニスもパーティのみんなと一緒に背中から俺を睨んでる。
(おいリュート! オマエ、なんでそんな挑発的な態度取ってんだよ)
(そうよ! 怒らせるような事してなんの得があるのよ)
(その通りだ、この……ジャンプマンが!)
最後のは思わず笑いそうになっちまったけど、ホントにコイツらウザいわ。
保身ばっか。
(おーもう、お前らうるさい。俺を追放したんだから黙ってろよ……!)
いかんいかん、俺がイラっとしてどーすんだ。
落ち着け落ち着け。
今は王子さんと交渉の最中だ。
なので俺は怒りに燃える側近とイグニス達を無視して、王子さんをより強く見据えた。
王子さんもそのつもりらしく、俺を黒い眼差しで見下ろしている。
「キサマ、本気で言ってるのか」
「もちろんすよ。俺は基本、いつでも本気なんで」
そう言い放った俺をジッと見据えると、王子さんはニヤッと笑みを浮かべた。
「クククッ……たかだかCランクの補助回復士があのモンスター共をか……ふざけるなっ!」
王子さんはメッチャキレたが、狙い通り。ここが勝負だ。
一気にいくぜ。
「ふざけてねえって! よゆーだから! アンタそれも分かんねーのか? マジか?」
「なんだと?!」
「それも分かんねーのに、よく王子なんかやってるよな」
「キサマっ!」
いいぞいいぞ、ちゃんとブチ切れてる。
王子にこんな事言う奴なんていねーもんな。
てか、俺もヒヤヒヤよ。
一歩タイミングミスったら終わりだから。
「そんな怒鳴んなら俺を処刑でもしたらいいじゃねぇか! そん代わり、レイの居場所は永久に分からなくなるけどな」
「ならば拷問にかけるまでだ!」
王子が王言い放った瞬間、俺は王子との間合いを一瞬で詰めた。
まるで瞬間移動するみたいに。
「ハロー♪ ニャハハッ」
「なっ?!」
「バイちゃ♪」
で、俺はまた一瞬で元の位置に戻ると、王子さんを見ながら二ッと笑った。
「逃げようと思えばいつでも逃げれんだよ。だから、俺はアンタにチャンスを与えに来てんだよ」
「チャンスだと?」
「そう。アンタには俺を処刑も拷問するのも不可能。けど、俺を使って民からの信頼を取り戻す事は出来るぜ」
俺は王子さんを少しの間見据えると、そのまま話を続けてゆく。
正直、ここで決めないとマズい。
よゆーぶっこいてるけど、実はもうこの強化魔法の効力切れそうなんだ。
念の為に、ここに来る前から発動させてたから。
大丈夫かな? マジで。
「俺がモンスター共を片づければ、民からのアンタの信頼は回復する。それに、こっちもレイを救えるからwinwinなんだよ。だから、この条件でレイの処刑を撤回しろ!」
「ぐっ……!」
「悪いけど、ここで決めなきゃこの話は無しだ。後三十秒で決めなきゃ俺は帰らせてもらうぜ」
さあ、どうなる?
やる事はやった。
王子さんの事を怒らせて冷静な判断力を奪い、処刑も拷問も出来ねぇのを分からせた。
決断までを三十秒にしたのも意味がある。
長考させる時間や部下達に命令を出させる暇を与えないようにする為だ。
えっ? 中々考えたじゃんって?
いや~~まあ、それほどでも……って、言いたい所だけど、ここから先はレイの発案。
俺がここまで話した時、レイには甘いって言われたんだ。
てか、こうすると三十秒って長いな。
あっ、でももうすぐだ。
王子さんは俺をギロッと睨んだ。
「……よかろう。だが十日だ! 十日の間にモンスター共と殲滅出来なければ、レイを差し出してもらう!」
あっは~~~~
やっぱレイの言った通りだわ。
この王子さん、クソみたいにプライドが高い。
だからどんな不利な状況でも、必ず条件を付けてくるってレイは言ってんだけど正にその通り。
こちとら心構えは万端よ。
「かしこまりました。さすが王子様。逆に言えば、それまではレイに一切手を出さないって約束でいいんですよね」
「……当然だ」
やった!
あ~~~疲れた。
最初からこの約束を取りつけたかったんだ。
だから敢えて最初は大きい要求を突きつけたって訳。
最初からこの要求してたら、王子は自分のプライドが許せず断ってた可能性が高いからさ。
ただ、口約束だけじゃ少し心配だから見せつけとかなきゃな。
「レイ! もういいぜ!」
俺がそう言った瞬間、王子も側近ちゃん達もあまりの驚愕に目をメッチャ開いた。
「バ、バカなっ!」
「ヒイッ! なんですかアレは?!」
まあ、仕方ねぇよな。
窓の外にいるんだから。
メッチャでっかいドラゴンと、それに乗ってフフンと自信ありげな顔でこっちを見下ろしてるレイがさ。
レイ、てな訳でこーたいだ。
やっとね。
リュートお疲れ様。
って、こういう会話の時は聞こえてないんだったわね。
まあいいわ。
リュートとは後でちゃんとお話するし、今はカイン王子達にビシッと言ったかなきゃね。
私は王の間の窓をサッと開けると、龍の姿になったディオの背中からスッと下りて見つめたわ。
カインと彼の腕にしがみついてるアリーシャの事を。
「フフッ♪ カイン、アリーシャ久しぶりね」
「レイ……!」
「レイ様……!」
二人とも私の事を目を丸くして見つめている。
それはそうよね。
ドラゴンに乗って現れた悪役令嬢なんて見た事ないでしょうし。
目を丸くしている二人を不敵な笑みで見つめたまま、私はゆっくり近づいた。
決して目は逸らさないわ。
真実を見極めるチャンスだから。
「十日あれば充分だわ」
その言葉にカインもアリーシャも怯えている。
もう、ほぼほぼ確定ね。
何がどうなってるのか、大体は分かったわ。
もちろん、私がそう思った事を二人も感じてるでしょうね。
イヤってぐらいヒシヒシと。
えっ? なんでそんなの全部分かるのかって?
忘れたの? 私は元社畜よ。
しかも裏方。
裏方ってね、実はもの凄く気を遣うのよ。
そりゃあ自分の仕事をこなしてるだけの人もいるけど、本当にちゃんと仕事しようと思うと違うの。
社員やクライアントの要望はもちろんの事、相手がどんな性格なのかまで考えなきゃ務まらないわ。
それこそ、パッと相手を見た瞬間にある程度の察せるぐらいじゃないとね。
特に今回は私の処刑回避がかかってる。
だから、リュートやエレミアと作戦を練ったのはもちろんだけど私自身も考えたわ。
カインとアリーシャが、本当は何を考えて私を婚約破棄して断罪まで持ち込んだのかをね。
ただ、確証を得るのはこれから。
「カイン、アリーシャ、覚悟なさい……」
私はリュートの側に立つと、カインとアリーシャを見据えたまま片手をバッと振り向けた。
「この十日間で必ず逆転させてみせるわ! 全ての破滅フラグは余裕で飛び越えていくから! 悪役令嬢……クロスフォード・レイの名にかけて!」
遂にカインとアリーシャに対して宣戦布告を告げたレイ。
果たしてこの十日間で全ての破滅フラグを飛び越え、真実を明らかにする事は出来るのか?
また、リュートも大変だ。
もちろん、ドラゴンの姿になったディオを連れて行くのだが波乱は必至。
次の話はもちろん……
えっ? 次は俺からだろ?
はあっ? 私に決まってるじゃない!
いや、俺だって。
私よ!
え~~~
なによ。文句あるの?
う~~~
とりあえず、次回っ!
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