フラグ9 無限の魔力と連携プレー
「グガアアアアアッ!!」
ドラゴンちゃんの咆哮で、俺らの周りの空気がビリビリビリッと震える。
やっべぇ緊張感だ。
やっぱドラゴンちゃんはこうでなきゃ。
けど、その空気以上にガタガタガタッ……と震えてる奴がいる。
誰だそんな奴は?
この緊迫した空気を楽しめないなんて。
誰だーーーーー?
俺だ。
いや、しゃーないだろ! 想像してみてくれ!
目の前にヤモリがいたらどう? 余裕か。
じゃあ、イグアナは? まだいける?
マジですか?
あーでも、確かに俺の会社でイグアナ飼ってる奴おったわ。
そんなら、超巨大な蛇がいたら?
そりゃ俺も冒険者の端くれだから、モンスターと出会った事は何度もあるよ。
でも補助魔法使いだから、直接向き合った事はほとんど無いし、ドラゴンなんて初めてなんよ。
しくったら、骨まで溶けちゃう。
ホネトロは確実だな。
ん? ホネトロっていいな。ネギトロみたいで……って良くねーわ!
なんかさっきから彼震えてるけど、きっと武者震いってヤツよね。
ビビッてるとかじゃないって信じてる。
顔も真っ青だけど、アレ今流行りの美白男子だっけ?
一昔前と違って、今は肌が白い男子がモテるって言うし、多分それそれ……じゃないわよね。
あーもうっ!
でも、恐くてとーぜんよ。
それに男は基本、女の子より本当はビビりだし。
だから、私がしっかりしないと。
「リュート、私も全力でサポートするから」
「りょーかい。でも……ヤバくなったらすぐ逃げろよ」
「ハアッ? 何言ってるのよリュート」
ヤバっ。なんか俺、ビビってるのレイに見透かされてる?
いかんいかん。ここは俺がちゃんとせんと。
今から全力でやらんといかんし。
「いやだって、レイはお姫だろ」
「リュート、分かってないわね。私は……」
レイはそこまで言いかけて言葉を止めた。
ドラゴンの額の黒いクリスタルが光出したからだ。
クリスタルが漆黒の輝きを増大させていく。
「リュート、今よ!」
「やってやっか! いきまっせ! 『リミット・リリーズ』!!」
リュートが掲げた両手の平から、白い大きな光がドラゴンの黒いクリスタル目がけてバシュ! と、放たれた。
「いっけぇーーーーーーー!!」
リュートが叫んだ瞬間、レイがリュートの背中から両手で肩を掴んだ。
「リュート、 回復は任せて!」
そしてエレミアは、妖精の粉を振りかけながらレイの周りを軽快に舞う。
「レイの魔力は私が支えるから!」
そう、これは三人協力しての賭けなんだ。
エレミアがレイの魔力を回復させながら、レイが俺の体力を回復させる。
んでもって俺は……
「限界魔力受けてぶっ壊れやがれ! ドス黒いクリスタル!」
そう。レイが気付いたんだ。
あのドラゴンちゃん、炎吐く時に黒いクリスタル光らせてんだ。
まあそれは見りゃ分かんだけど、こっからが賭け。
レイが言ってたのさ。
あのドラゴンちゃん、黒いクリスタルから呪いかけられちゃってんじゃない? って。
だからそのクリスタルを、俺の限界超えた魔力を出させてブッ壊しちゃえば元に戻る。
そー言ってたんよ。
「うっらああああああっ!!」
えっ、まだ何か? 俺今忙しいんだけど。
あの黒いクリスタルから湧き出てる魔力を、俺の魔力増幅で限界超えさせるんよ!
ん? 魔力ブッパで倒せる確証あるのかって?
ないない、そんなもん。
だから賭けなんだって。
額にあんなクリスタルしてる奴なんて見た事ねーし、見るからにヤバそうだもん。
あの黒いクリスタル。
けどさ、ただ逃げてたっていつかはやられそうだし、戦う時は戦うしかねーのさ。
何より今は……
「くぅぅぅぅっ……ぜってー負けねぇからな! いくらドラゴンちゃんが強くたってな……無限の魔力ってもんをなめんな!!」
「くっ……頑張ってリュート!」
私だって必死なんだから。
こんなの悪役令嬢の役割じゃないのは百も承知よ。
悪役令嬢は破滅フラグをへし折るのが王道なの。
だから、これからやってくわよ。
じゃなきゃ気がすまないし。
けど、今はこのドラゴンを倒さないと破滅フラグどころか死亡フラグがビンビンなの。
えっ? 最初からそれをやればいい?
もうっ、文句なら作者に言ってよ!
この作者はね、他の作者と同じようなお話じゃ満足出来ないって言うの。
Web小説は王道があるんだからその通り書けばいいのに、そう書かないのよ。
しかも、ダブル主人公とか言い出したんだもん。
だから、私だって大変なのよ。
けど覚えといて。
私だって生きてるの。
もちろん、翔というかリュートもエレミアだってそうだし、私には意地があるんだから。
悪役令嬢としての負けられないプライドが。
だから、こんな所で終わるわけにはいかないの!
リュートとレイがそれぞれ気持ちを滾らす中、エレミアは必死でレイの魔力を回復させている。
「レイは私が支えるから!」
「オッケーー! ありがとうエレミア! ぐぬぬぬぬっ……!」
俺が何とか魔力を放ててるのもレイとエレミアの協力のお陰だ。
ただ、早ぇとこ決めないとマジでヤバい。
「うおおおりゃ、んなろ……さっさと、ブッ壊れやがれ……!!」
俺が力を振り絞ってると、ドラゴンちゃんの黒いクリスタルから、マジで尋常じゃない黒い光が溢れ出てきた。
狙い通り? バカ言うなよ。
こんなもん、競り負けたら一瞬で終わるぜ。
魔力は無限だけど、放つ俺の体力は限界あっから。
───まーだ限界超えねぇってのか。マジで、なんつーークリスタルだよ。って、ちょい待ち。まさか……
俺は魔力を放ちながら一瞬ゾクッとした。
───もしかして、ドラゴンちゃんのクリスタルも、魔力無限とかねーよな……! だとしたらシャレんならん!
俺がそんな不安を感じてる中、レイが遂にガクッと片膝をついた。
「くっ……!」
「レイっ!」
「大丈夫よリュート、まだ全然大丈夫だから……!」
って言ったケド、正直もう全然大丈夫じゃないわ。
だって、実はもうエレミアの魔力も底を尽いたんだもん。
だから、私の魔力だけでリュートの体力回復させてるの。
言ってみたらアレね。
全力でマラソンして、もう走れないぐらい疲れてるあの感じ。
でも……
───負けない……リュートだって戦ってるんだから!
私はリュートに、より回復魔法を注ぎ込んでゆく。
リュートも大変のはよく分かるから。
これだけ回復魔法使わなきゃ、もたないんだもん。
───無限の魔力の反動って、それだけ体にキツイのね。
でもだからこそ、リュートも負けられないハズ。
「ハアアアアアアアアッ! リュート、ここからだからね!」
けれど、その思いとは裏腹にレイの魔力は完全に底を尽きた。
残るはリュートのみ。
「レイ……エレミア、ここまでありがとさん♪」
俺は余裕かましながらそう告げたけど、正直もう体力限界だわ。
こんなに魔力放った事なんてねーもん。
全身痛すぎて、筋肉ブチブチンって引きちぎられそうな感じだ。
痛ってーーーーーーーーーーよ、ちくしょう!
けど、負けるわけいくか!
可愛い子ちゃん二人が、後ろにいんだぞ!
「んなろうーーが! たまにはよ……限界超えろや俺! オオオオオオッ!!」
そう叫んだ時、俺の手の平だけじゃなく、全身から光が溢れ出ててきた。
───何だこりゃ! つ、遂に俺の体ぶっ壊れんのか?
けど、そうじゃなかった。
本当の異変があったのはレイの方。
そう。むしろ、この光の原因は私よ。
だって、心の中に急に声が響いてきたんだもん。
『聖女の力『ホーリィ・アーク』を開放します』
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