第十七話「アポカリプス・カウンター」




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「マスカレイドが来たぞーっ!!」


 世界のどこかにある怪人支配下のエリアで、狼の姿をした怪人が声を張り上げていた。

 彼の名は妄言怪人ウルフ・ボーイ。妄言ばかりを繰り返し、どの怪人組織からも毛嫌いされている弱小怪人である。


「はあ、またかよ……仕方ねーな」

「あいつ、昨日働いてた別拠点でも来たんだけど」

「面倒臭いが仕方ねえだろ、避難訓練なんだからよ。あいつもだが、日雇い怪人はつらいよってな」


 少し前から始まり、今もなお怪人たちを震撼させているマスカレイドの予告出撃。コレはその対処として怪人勢力が実施しているモノの一つだ。

 エリア支配権を持つ怪人をメインターゲットとして怪人役場からサービス提供されているのだが、その実態はあまりに多い被害報告と的外れなクレーム対策としてとりあえず用意された苦肉の策であり、思いつきで提供開始された暫定対策である。

 なのにあっという間に普及し、多く存在する役場サービスの中でも上位に食い込む登録件数となっている。マスカレイドの予告出撃による被害がどれほど恐ろしいのかが良く分かる反応と言えるだろう。

 こうして面倒臭がりながらも慌てる事もなく怪人が整然と移動できているのは、すでに避難手順や経路を含めたノウハウが浸透している証拠だ。

 本来自由奔放で他人の言う事など聞かない、聞く気のない怪人たちが渋々ながらもこうして従っているのは、銀タイツの恐怖が根底に染み付いているからだ。


「マスカレイドが来たぞーっ!! 今度は本当だぞーっ!!」


 繰り返し響き渡る妄言怪人の声は避難完了するまで続き、終わる事がない。そうしないとギャラをもらえないので、ウルフ・ボーイも必死だ。

 毎日のような出張に過労が心配されるが、妄言ばかり繰り返す特性のせいで多くの怪人勢力から嫌われる彼としては、食い扶持の確保のほうが重要だった。


「なんかアレ、ウルフ・ガールもいるらしいぞ」

「へー、クソどうでもいいわ」


 ただでさえ個体間のビジュアル差が激しい怪人同士、異性がどうとか言い出す者は少ない。そういう情念から生まれた怪人か、せめて人間に近い姿ならば話は別だが、狼人間が女性だからといって喜ぶ怪人は稀だろう。

 そんな雑談混じりで行われる避難訓練には慣れが見られた。慌てず、騒がず、スムーズに実行できている事が必ずしも良い事であるとは限らない。

 慣れは怠慢を生み、危機感を薄れさせる。なまじここのところの災害被害が減少している分、それは顕著だった。

 そして、その怠慢のツケは、大抵の場合最悪な形で支払う事になるのだ。


「実は、マスカレイドは来てないぞーっ!! ぎゃははははっ!」




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 アトランティス・ネットワーク上に突如として出現した、謎のカウンターのみが設置されたサイト。

 一定間隔で減少する値だけを見れば何かの残り時間を示しているように見えるが、その数値はときおり増加し、あるいは大きく減少するため、単純な期日までのカウントダウンでないと分かる。

 これが何を意味するのか、推察はできても正答を導き出せる者はいなかった。あまりにも情報が足りない。

 インターネット上で見かける同類のサイトなら考察材料は溢れている。単純な出力結果以外にもソースの確認、通信データの解析、ソフトウェアやサーバーの直接確認、極端な方法では設置した本人に凸する事すら不可能ではない。どこまでが許されるかは環境や状況次第だが、ここまで世界中に認知されている問題ならば捜査を許可する国家や企業は多いだろう。なんなら、武力で強引に制圧する事だってできるのだから。

 今回の場合、これらの方法は一切使えない。出力結果はブラウザに表示されているもののみでソースは確認不可、どんな通信が発生しているのかは不明だし、そもそも従来通りの通信規格であるとも限らない。いや、むしろ完全な別物と考えるほうが無難だろう。

 アトランティス・ネットワークのサーバーが設置されている場所や管理者が不明な以上、直接調査する事もできない。最有力候補であるアトランティス大陸はその大部分が怪人の支配下だ。人類勢力ではまず調査の手が伸ばせない環境にソレは存在していた。


 とはいえ、これほどまでに世界を震撼させている超常現象、そのほぼ唯一といってもいい情報源で公開された情報を無視をする事はできない。

 そうして極めて限られた情報から考察が行われる事となったが、より情勢の中心に近いヒーローでさえ正解を知らないモノの正体を掴めるはずもない。

 当然の如く有識者たちの考察は迷走し、まるで自身が預言者であると誤解したような目立ちたがり屋が跋扈する事となった。

 その先に待っていたのはより極端で過激な思想の発信・拡散であり、謎サイトの考察という本質からかけ離れていく。正答のない難問に対し、世界中の人々が支持したのはありそうな予想ではなく、よりセンセーショナルな妄想だった。妄言怪人もびっくりである。

 ここまででわずかに一週間足らず。たったそれだけの時間で謎のサイトとカウンターは世界で認知されるところとなったのだ。


 誰が言い出したのか、やがてアポカリプス・カウンターなどという呼称までもが定着し、その存在は一人歩きを始めていく。

 運営から何らかの告知があったわけではなく、サイトにも一切記載がない以上はどう呼ぼうが勝手ではあるのだが、黙示などという負のイメージを連想させる言葉が付与されてしまったのは、如何に世情に不安に満ちていたかの証左なのだろう。




「十中八九、次の大規模イベントまでのカウントダウンなんだろうけどな」

『まあ、それしかないでしょうね。的外れな事を言う人も結構いますが、ある程度知見がある人は大体その認識です』


 数値は十二進数でも六十進数でもないし、時折妙な増減はあるものの、変換すればちゃんとそれっぽい数値になる。

 コレだけ見て考察するなら選択肢があるが、運営の意図、過去の経緯、そしてタイミングからしてその可能性は高いだろう。

 とはいえ、それを公言するつもりはない。当たっているとは思うが、万が一間違いだった場合は混乱を呼び、無責任な失望を生むだろうからだ。いろんなところが正解の分からない問い合わせに苦しんだとしても、それは俺の責任ではないし。

 むしろ、変な圧力に負けてどこかのヒーローが公言してしまうかもしれないのが困る。下手に言論統率などすべきではないし、できるとも思えない。


「教授の考察やシミュレーターの結果は?」

『入力情報が少な過ぎて確定とは言い難いですが、おおむねそうだろうという回答が出ています』

「そりゃそうだろうなって感じだな」

『明白ですしね』


 ヒーローネット上ではほぼそれで確定扱いだし、インターネット上でもちゃんとしたサイトは大体同じ答えである。話題だってそれを前提としてどう対応するかに移っているくらいだ。

 トンチキな事を言っているのは基本的に小さな勢力で、それが乱立している印象が強い。


『あり得るとしたらサプライズや逆張りですが、そこまでやるかどうか……』

「あの運営だとやらないとは言い切れないのがな……」


 奴らのスタンスはどちらかといえば娯楽に寄っている。それも込みでの予想ではあるが、絶対とは言い切れない。


「どの道、イベントじゃなくても大きな何かはあるって前提で動くのは変わらない」

『コレで何もないって事はないでしょうしね』

「だから、問題は何が起きるかよりも、カウンターの値が示す期間や増減の条件なんだよな」


 次のイベントを極力遅らせたい俺としては、当然そんな対応になる。

 もし、この値を変換したら三年くらいになるようなら万々歳だったんだが……。


『示されてる数値は、一番それっぽい変換で約半年ですね。前回、前々回のイベント期間と比較するなら、イベント間隔は長くなってはいますけど』

「全然足りないな」

『ですよねー』


 この際、前回のイベント自体やアトランティス大陸の出現、ついでにムーやレムリアの出現まで含めてもそこまで問題じゃないと思っている。たとえ、そこにどでかい怪人勢力が陣取っていようが、人類社会としてはともかく、ヒーローとしてはそこまで対応に違いはないのだから。

 だが、バージョン2開始で生まれた影響がでか過ぎる。アレはこれまで存在していた社会基盤すべてをぶち壊す勢いで、様々なモノを覆す。その範囲は人類社会主体とはいえ、ヒーローへの影響も甚大だ。

 人類社会が対応できないのは明白で実際大混乱、場所によっては崩壊している有様なのだ。ヒーローだってそれに引き摺られて対応に苦心している。コレで半年後に前回以上のインパクトを持つイベントが開催されれば、大半の国家が陥落しかねない。

 日本は多分大丈夫だろう。天下無敵のマスカレイドさんがいるアドバンテージは巨大だし、国力だって十分だ。混乱と衰退は避けられないだろうが、国の屋台骨が折れるまでには至らないはず……多分。

 共産国家は知見が足りなくて断言まではできないものの、アメリカをはじめとする大国のほとんどは持ちこたえるに違いない。だけど、中小国家が無数に壊滅する中で現状を維持できるはずもなく、爆発的に巨大化する負担にどこまで耐えられるのかのストレステストじみた展開が待っているだろう。

 この辺は、次回イベントを想定していないシミュレーターではテストできない部分でもあるが、容易に予想がつく。


「個人的にはこうして数値で見えるようになったのは好材料だな。人類全体で見るなら一長一短だろうが」

『精神的な負荷は大きいでしょうね』


 とはいえ、得られるメリットは人類的にも同じだ。その時期に向けて対策する事ができるし、覚悟を固める事もできるだろう。できる事はせいぜい災害対策や備蓄くらいかもしれないが、それだけでもずいぶん違うだろう。

 一方で、どうせその時期に世界規模の騒動があるならと犯罪に走る奴が出たりする可能性もある。今だって似たよう感じで暴れている奴はいるが、更に顕著になるだろう。

 まあ、そこら辺の対策は人類社会の問題として国家にお任せしたい。


「というわけで、数字の増減条件を探すのは急務だ。この際、大雑把でもいい」

『エリア支配率や怪人の撃破が影響しているのは確定なんですが、必ずしも人類やヒーローにとって好材料=カウント増とはなってないのが困るところですね』


 大体の方向性は分かっている。だけど、変な落とし穴があっても困るし、できる限り条件は絞りたい。

 切羽詰まった状況ならともかく、時間は残されているとカウンターが証明してくれているのが幸いである。検証時間は稼げるはずだ。


『現在のところ、数値が増えると思われるのは怪人の撃破、支配エリアの獲得・拡大あたり。逆に、減るのはヒーローの敗退や支配エリアの喪失・縮小などが挙げられます。微妙なのは既存の構造物の破壊や人命被害などですね』

「ヒーローの強化なんかの対象な気はするが、判別が難しいからな。セカンドフォームとか」

『世界に拡散しているヒーローパワーボトルの量なんかも多少は影響ありそうです』


 どこまで細かく見ているかは分からない。これまでの運営の行動を見る限り、そういう労力が必要になりそうなシステムは当たり前のように実現してそうだし、インプット情報を得るのも可能だ。

 単純な戦闘力だけで見るなら、日々微妙に強くなっている俺の数値は絶対に無視できないし、ミラージュの改造をすれば極端に増えそうなんだが、どうもそんな気はしない。必ずしも国力に結びつかない反社会的勢力の扱いはどうなるのかとかな。


『とりあえず、簡単に思い付く方法で実行し易そうなのは怪人の撃破ですが、世界中で戦闘が起きている以上検証には向かないでしょうね』

「数が多いとはいえ、受動的なのもちょっとな」


 倒したそばから次の敵が出てくるサバイバルモード的なシステムならいいが、ヒーローは怪人が出現してからでないと動けない。警察の対応のようなものだ。能動的に変化させられない材料は考察に使いづらい。


『となると、有力なのは怪人拠点への襲撃ですね。予告出撃の回数増やします?』

「それでもテストになるけど、むやみやたらに出撃してもな」

『エリア争奪戦自体はいつもやってるわけですしね。それに関連する事項が多過ぎて条件は絞り難いのもマイナスです』


 なんなら、地政学の重要性やそこにいる怪人の強さなんかも対象になりそうなんだよな。方向性だけならそれでも十分ではあるが。

 最近は怪人も慣れてきたのか、予告出撃の際に発生するポイントも減ってきている。最初の頃は、権益の問題なのかなんとしてでも被害を減らそうとしていたが、最近じゃ被害を前提とした対応に切り替えているところも多い。エリア支配者の違いかすべてがそうではないものの、平均しての成果は半減もいいところだ。それでもポイント収入は膨大なのだが、だからこそ比較し易いというか……。

 それと、エリアごとの防衛方針とは別に、どこの拠点もやたら避難行動が早くなっている気がする。

 この状況でインパクトのあるテストとなると……。


『どうせなら、マスカレイドさんにしかできないテストがいいんじゃないですかね』

「じゃあ、アトランティス大陸強襲してみるか。アトランティス・ネットワークの存在がムカつくし」

『あそこに設置されてるかは未知数ですが、アリですね。イベントの時は別として、強襲した事はありませんし』


 別にムーでもレムリアでもいいんだが、名前を冠しているアトランティスのほうが気分が乗る。


『この場合は予告はしませんよね?』

「そりゃそうだな。なんなら関係各所への連絡も必要ないだろう」

『現地勢力と調整が必要ありませんしね。オペレーターとしては楽です』

「問題は南スーダン同様、お前と連絡つかない事なんだが」

『以前から分かってて根本的な対応が難しい問題ですよねー』


 一人体制な以上はどうしようもないんだが、今後もしばらく引き摺りそうな問題である。


『とりあえず、できる限り事前準備はしましょう。ついでなんで、他に色々テストしてもいいですし』




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「やべえっ! マスカレイドは来てないけど、他のヒーローが襲撃してくるぞーっ!!」

「もう来てんだよっ! ドアホ!」


 今日も今日とて妄言怪人ウルフ・ボーイは出張し、声を張り上げる。

 マスカレイドの出撃予告があれば話は別だが、事前に予定されていたら、たとえヒーローの強襲を受けても現れる。だって、そうしないとギャラがもらえないから。


 今日は正にその類の現場で、リアルタイムでヒーローの襲撃を受けている真っ最中だった。

 拠点としては小規模かつ人間の居住地にも近いという明確な激戦地で、常に警戒している拠点だから仕方ないのかもしれないが、そんなところで避難訓練を推進するのはどういう意図なのか。

 案外エリア支配者が何も考えてないだけかもしれないが、そこで働く下っ端怪人や戦闘員はいい迷惑と感じているだろう。

 妄言怪人ウルフ・ボーイにしても出撃前の時点で状況は分かっていたのだが、それでも関係なく出撃するプロフェッショナルな心構えといえるだろう。


「俺はただのバイトだから、スタコラサッサと退散するぞー!」

「ふざけんなっ! 手伝っていきやがれ!!」


 そんな事を言われてもウルフ・ボーイはこの拠点に雇われたわけじゃないし、手伝ったところで戦力になるほど強くない。むしろ、ヒーローの獲得ポイントを増やしてしまうのがせいぜいだろう。だから、ここは涙を呑んで退却するのだ。

 多分、もうこの現場に来る事はないだろうが、良くある事でもある。


「ギャーーーーッッ!!」


 背後で怪人の断末魔が聞こえても決して振り返らない。何故なら、怖いからだ。




「最近、ちょっとマンネリ気味で危機感がなくなってるって苦情があってね。何かいいアイデアはあるかね?」

「銀タイツでも着てみます?」

「いいかもね。なんか、銀色の物体を見るだけでPTSDが発症する怪人もいるみたいだし」


 雇い主である役場での面談でも、さっさと逃げ出した事が問題になったりしない。拠点が壊滅して顧客が減るのは問題といえば問題だが、それは日常茶飯事なのだから。というか、規約にもちゃんと含まれている。

 議題に挙がるのはどちらかといえばサービス内容について。確かに最初の内は良かったのだが、最近では避難行動に一切危機感が感じられない事はウルフ・ボーイも懸念していた。

 単純に避難訓練としての効果が薄れるし、妄言怪人としても面白くない。できれば自分の言動で慌てふためき、できれば騙されてほしいのだ。

 業務としてやっているからある程度は妥協しているものの、生来の性分は捨てきれない。それが怪人というモノだから。


「で、できれば、そういう小物は支給してほしいかなーと」

「あー、かけ合ってはみるけど、実績ないと厳しいかもね。とりあえずは持ち出しでなんとかならない?」

「俺が金もポイントもないのは知っているじゃないですか」

「と言われてもね。ほら、銀色に見えればいいわけだから、アルミホイルを巻いていくとか」

「マジかよ……」


 基本、アルバイトと変わらないウルフ・ボーイの立場は弱い。とはいえ、この仕事を失うわけにもいかないから、可能な限りは持ち出しも覚悟しなけばいけない。

 なんなら、経費として予算が確保できたら少しくらいちょろまかせないだろうか。あの担当職員だったら少し横流しすれば協力してくれるかもなどと考えつつ、怪人スーパーでアルミホイルを買うウルフ・ボーイ。

 なお、即席の銀装束はウケた。お笑いの方向で。




「ゥオーーーーーーーーンッ!! あのタイツの照り返しはマスカレイドだぁーっ!!」

「警報の物真似上手過ぎんだろお前っ!!」


 色々と試行錯誤を繰り返す中、なんとなく実施してみた警報の真似事の反応はなかなか反応が良かった。だらけていた現場が慌てる様は自尊心を満たし、評価も上がりといい事尽くめである。

 しかし、コレも何度か繰り返していく内に飽き……慣れる事は明白。できればもう少しレパートリーがほしいところだ。

 なんか当初の目的が消えかけている気がするものの、良く考えればウルフ・ボーイ的には避難の練度が向上しても特にメリットがないので、気にしない事にした。


「口での物真似だけじゃなく、実際に演出加えられないですかね? エリアポイント使えばできるはずですけど」

「契約次第だね。割増料金になるのは避けられないが、需要があるならやってみるのもいいかもしれない」


 エリアカタログでは、ポイントを支払えばあっという間に施設を出現させる事も可能だ。なので、当然ヒーローの襲撃を擬似的に演出する事もでき、拠点設置や防衛費用に比べたら微々たるポイントで実現可能なはずだ。

 そんな提案をしてみたら、何名かのエリア支配者はお試しで導入を決定、その反応と効果を見てサービス登録数も増える好循環が生まれる。

 労働者からの評価だけ見て本質的な部分を忘れているような気がするものの、現場に出ない支配者は興味がないのかもしれない。


「いいね、顧客からもなかなか評判いいよ」

「アハハ、その分下っ端怪人どもから嫌われてますけどね」

「それは今更だろ、君」

「アハハ、そろそろライン越えるぞクソ役人」


 こうして、怪人たちの避難訓練は混迷を極めていく。

 エリアカタログのバージョンアップによって施設防衛の設備が充実したり、怪人企業から防災対策グッズが販売開始したり、マスカレイド強襲用の保険ができたりと怪人勢力内で対策が練られていく内に、ウルフ・ボーイの妄言警告サービスの登録者も頭打ちになってきた。

 様々なアイデアを供出して試行錯誤を繰り返し、変装をしたりボイスチェンジャーを導入するなどの涙ぐましい努力しても、登録者数は頭打ち。

 むしろ、避難訓練そのものではなく、次はどんなネタを繰り出してくるのかが期待されるようになってしまった結果、よりネタに走る事になってしまう。

 もはやウルフ・ボーイの妄言はただの一発ギャグ。そう認識され、サービス登録はむしろ現場のガス抜き、福利厚生の一環のような扱いで継続される事になってしまった。

 初期に想定していた業態から大幅に変わってしまう事など良くある事ではあるが、それが避難訓練な事は悲劇だったといえるだろう。




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『調子はどうですか?』

「ボチボチだな。思ったよりもキツイ」

『普通はキツイで済む話じゃないと思うんですが』


 とある日の太平洋。俺は見渡す限り何もない海の上で、マスカレイド・ミラージュに跨っていた。

 傍目にはただ滞空し、腕組みしているだけで、周囲では何も起きていないが、これはマスカレイドの実験なのである。


「今のところ、十キロくらいが境だな。そこを越えたあたりから急速に精度が怪しくなっていく」

『確かに……あ、消えました。自律行動前提でも、そこまでは伸びないんですね』

「元々の用途を想定するなら十分なんだが、監視目的には使えないな」


 今やっているのは影分身のテストだ。どの程度離れたら分身が維持できなくなるのか、パフォーマンスに変化があるのかの性能試験である。

 結果としては大体十キロまではなんとか操作可能。戦闘動作まで考慮すると論外な制御しかできないものの、動かせない事もない。それ以上だと繋がっていた細い糸が千切れるようにコントロールを失ってしまう。

 なんでこんな事をしているのかといえば、俺が日本を留守にしている時、あるいは怪人が同時に出現した場合の対策である。予定している強襲に向けた準備の側面もあるが、どちらかといえばそちらが本題だ。

 同様の懸念は以前から……それこそ爆弾怪人の頃から抱いてはいたのだが、いざという時には現地から現地への急行、最悪でもメイドたちが時間稼ぎとして出撃するという対策を用意していた。これらの対策が実際に使われた事は未だないのだが、検討だけはすべきだろうと。怪人が出ずとも、その息がかかった存在への対処も含まれていて、そちらでは活躍しているから無意味でもないし。

 そして、その対策でカバーし切れない問題が明確に浮き彫りになったのは南スーダンの強襲である。どんな状況だろうが、最低限連絡がつけば大抵はどうにかなるのがマスカレイドのスペックだが、その連絡手段がなければどうしようもないと。

 イベント時こそ特例なのかオペレーターと連絡がとれていたが、怪人の支配エリアにいる時に外部との連絡はできない。通常の電波なども対策されているのか、電話なども使えない。そんな時、空き巣のように日本を強襲された場合、致命的な被害が出る可能性がある。

 だから、予告出撃の際も微妙に時間をずらしたり、可能な限り強襲時間を短縮して誤魔化すという苦肉の手段を使っていたのだ。


 今回のコレは根本的な問題解決手段の模索。ようするに、自分の分身を支配エリア外において連絡手段にできないかというテストである。もし解決するなら、俺の活動も大きく幅が広がる。

 上空に置いて観測手のように使える事は引廻しの際に確認済。あの時は最長でも一キロ程度しか離れていなかったが、あとは距離が稼げればなんとかなるだろうと。

 ……結果としてはちょっと微妙な感じだが。


「これじゃ緊急連絡手段としては使えないな。頑張ればもっと伸ばせそうな気はするんだが」


 といっても、十キロから一キロ伸ばしたところで足りない。アトランティス大陸の中心部で連絡手段として使うなら、十倍でも足りないだろう。

 なら上空ならどうだって話になりそうだが、通信妨害の障壁がどこまで伸びているのかが分からない。

 ドーム状になっているなら妨害圏外まで届きそうな気もするが、多分垂直なんだよな、あれ。


『完全に安全確保するつもりなら、マスカレイド安全基準法の条件を満たすしかありませんね』


 実際には通常の怪人出現によらない……たとえば、エリア外から侵入してくる方法などもあるので完全ではないが、現実的にはそれが無難だろう。


「でも、あいつら最低限しか出現してこねーし」

『天秤にかけるなら、そのほうがいいんですけどねー』


 時々は条件を満たす事もあるが、基本的には怪人の出現数自体が少なく、達成しようがない。

 まあ、コレまでそんな空き巣狙いみたいな事はなかったから考え過ぎといえば否定はできないが、石橋は可能な限り補強したいのが俺なのである。叩けないなら叩けないなりにどうにかするしかないが、叩けるのに叩かない理由にはならない。当然、引き籠もりらしく労力にもよるが。


『もう一回テストします?』

「感覚としては多分同じになりそうなんだが……一応、やっておくか」


 というわけで再度分身を生み出してテストしてみるものの、結果はやはり同じだった。

 追加で複数の分身でもテストを行ってみるが、コレでも結局似たようなもの。ただし、人数が増えるたびに有効距離は縮まるものの、思ったよりその距離は変わらないという好結果になった。環境や疲労もあるので具体的な数値は出し難いが、一体増やしても十キロが九キロに縮んだりはしない。

 どちらかというと距離のほうがネックらしい。


「ついでにこっちのテストもしちゃダメかな?」


 ミラージュに積み込んだ球状の物体に目をやる。こちらもテストが必要なのだが、影響を考えるとこんなところでは使えないと結論を出していた。

 しかし、じっとしているとどうしても視界に入るので気になってしまう。


『衛星画像とかに残ったりしたら面倒だからやめるって、自分で言ったじゃないですか』

「見渡す限りの水平線だと、別に大丈夫じゃねーかなって気がして」

『威力次第だと津波になりかねないんで。説明するのも面倒ですし、実地テストでいいと思いますよ』

「まあ、それで問題あるわけでもないしな」


 画像が残ったりしても、ミナミならなんとか誤魔化せるんじゃないかなんて思ったりもしたが、そんな危ない真似をする必要がないのも事実だった。

 というか、影響を考慮する以前にその影響がいまいち良く分かっていないのがコレなのだ。

 本来はコレこそ石橋を叩くべき代物なのだが、あまりそんな気がしないのはその出自故だろうか。


『マスカレイドさんのパワーを投入した爆弾なんて、超一級の取扱注意アイテムだと思いますけど』

「カタログにある汎用アイテムの改造版のはずなんだが」

『マスカレイドさん用って時点で危険じゃないですかね。だって、わざわざMって付いてるんですよ』

「解せぬ」


 この< ヒーロー・ボムM >は最初期に配布されたヒーローカタログでも購入可能な< ヒーロー・ボム >を改造したものらしい。

 なんでそんなモノを持っているのかといえば、以前引廻しに使った網を改造してくれた業者からの試供品だ。

 こんなん作ってみたんで、良かったらどうぞ。できれば継続購入して下さいって話である。以前から商品提案だけは色々受けていたのだが、一切反応がないのに焦って試作品を投入する事にしたのだろう。

 肝心のアイテム性能といえば、ヒーローパワーを封入する事によって一定の攻撃力を発揮する< ヒーロー・ボム >の上限を振り切ってみましたっていう、内容だけ見ればシンプルなモノだ。誰が使っても同じ威力、消費パワーなノーマル品に比べてかなり変換効率が落ちているという致命的な欠陥はあるものの、俺なら使えるんじゃないかって話である。

 なお、他のヒーローが使ったらあまりに効率が悪かったので産廃扱いされているらしい。

 まあ、ほとんど無尽蔵なヒーローパワーを持つマスカレイドに使わせたら危険という判断は良く分かるのだが、俺もパワーの制御は結構安定してきているので無茶なパワーを投入するつもりはない。

 予定している強襲作戦なら、どうせ怪人の拠点だし、核爆弾級の威力が出ても問題ないだろうとは思うが。


『しかし、その分身本当にどうなってるんですか? 視界も共有してるんですよね?』

「してるな。視覚が二重三重に見えるから、慣れないとキツイが」

『慣れの問題なんですかね?』


 そんな事を言われてもできるのだから仕方ない。

 結構特異な感覚なので対応が難しいのは同意するが、多重視覚への対応だけなら俺以外でもできるヤツは普通にいるだろう。多分、ヒーローじゃなく一般人でも。

 たとえとして適当かどうかは分からないが、複眼のようなものかもしれない。


「便利ではあるが、いまいち使い道がないんだよな。いっそ、分身だけ出撃させるとかできねーかな」


 ネタや恐怖演出として使ってはいるものの、戦力的には別に分身する必要はないのがマスカレイドさんなのだ。


『どうなんでしょうね? 試しに、分身で出撃ボタン押してみます?』


 というわけで後日ミナミの言うテストを支援出撃で実施したところ、分身で押下しても本体ごと転移させられる結果となった。ガッデム。


「同時に複数箇所を強襲された場合、分身を向かわせるにしても現地からって事になるわけか」

『なんか穴がありそうですけどね。マスカレイドさんみたいな分身の使い方は想定外でしょうし』

「そういうのって対策されそうだから、使うとしても一回だな」


 嘘をつくのは肝心な時に一回だけというのが効果的なのである。年がら年中嘘をついていては、狼少年の如く大変な事になって終わるだろう。

 日常的に使えるなら楽でいいけど、そんな事を許してくれる気がしないし。




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「えっ、今日もアトランティスなんですか? 違う拠点の予定だったはずじゃ……」

「例の予告がされたらしくてね。まあ、現場が中国だから本当かどうかは怪しいんだが、どの道避難するというか最低限を残して退避する予定らしい」

「ああ、避難どころか本番って事ですか」


 それならば仕方ない。ネタ度が増した現在は忘れられかけているが、元々予告出撃の被害を極力減らすためのサービスだ。

 何度か遭遇したヒーローが強襲中の基地は突発的な事故のようなモノだったが、予告出撃は予め分かっているのだから、わざわざ出ていく必要もない。

 もっとも、それがマスカレイドを利用した偽物という可能性は結構高いのだが、区別などできないし、それはそれで訓練になるのだ。


「だから、代わりにアトランティスでって話。都合が悪いならキャンセルでもいいけど……」

「いえ、やらせて頂きます!」


 役場職員はキャンセルでいいと言ってはいるが、この業務は日当だ。休んだらその分ウルフ・ボーイの生活が苦しくなる。後追いで参入して来たのに自分よりも稼いでいるウルフ・ガールに負けたくもない。

 いや、それも問題だが、この場合は不要扱いされて契約が打ち切りになる事が懸念される。ただでさえ飽きられてきている今、隙間を空けるとそこから穴が広がりかねないのだ。

 そろそろ次の収入も確保すべき段階にきている気もするが、今のところアテはまったくないのだから。


「アトランティスって事は、できる限り派手にですね」

「ああ。テストケースとしての宣伝目的もあるから、新しいネタとか使うのがいいかも」

「分かりました! 頑張って妄言吐いてきますっ!!」


 そうして、しばらく温めておいたとっておきのネタを引っさげ、妄言怪人ウルフ・ボーイは出撃する。せいぜい大騒ぎして避難訓練のクオリティーを上げてやろうと。


 そう気合を入れて出撃したウルフ・ボーイだったが、彼が戻ってくる事はなかった。



「よーし、今日も頑張っちゃ……痛っ!? なんだこれ……珠?」




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「よーし、じゃあ< ヒーロー・ボムM >のテストから始めるぞー」


 アトランティス上空。飛行型怪人も寄り付かないような上空でミラージュに跨り、眼下のアトランティス大陸を見据える。

 ミナミの返事はない。いつかの南スーダンやいつもの予告出撃同様、通信手段が使えないからだ。一応、かなり上空から侵入して試してはみたものの、やはり障壁は垂直に発生しているらしい。

 すでに侵入は検知されているのか遠くからサイレンのような音は聞こえるが、迎撃の気配はない。むしろ、怪人の気配は遠ざかっている。

 まあ、テストにはちょうどいいから構わないといえば構わないんだが、お前ら的にはそれでいいのかって感じではある。防衛戦力として配置されてるんじゃないのか。


「しっかし、やっぱり拠点再建してやがったな」


 以前のイベントでバベルの塔が建っていた地点には要塞のような巨大建築物があった。以前と違って縦には長くないので、海や大陸外周部からでは目視できなそうだが、おそらく下方向、地下に向けて伸びているんじゃないかって感じの構造に見える。それだけでなくいろんな場所に建造物が見当たるので、手当たり次第に破壊したいと思います。

 とはいえ、まずは予定通り< ヒーロー・ボムM >のテストからだ。

 こちらに俺のヒーローパワーを充填したモノが用意してありますので、今日はこちらを使います。食材は充填パワーの異なるモノを段階的に用意しました。


「それじゃまず一投目。シューッ!」


 単に落とすだけだと風に流されて飛んでいってしまうかもしれないので、適当に下方向に向けて投げる。

 ノーマルの< ヒーロー・ボム >がせいぜいTNT換算一キロ程度で、怪人相手には心許ない威力しかないので、今回は多少多めに充填してある。遠隔起爆だと不安が残る事から時限式にしたので、そろそろ爆発するだろうか。

 予想では、あの構造物に穴が空かないまでも結構な範囲を巻き込む爆風は発生するはず。こうして上空から投下しているのは、その対策の意味もある。

 それと、あの構想物の強度試験もしておきたいから、必要ならこの場で予備のヤツに充填して使うって手も……。

 そんな事を考えていたら爆発した。


「うーん、ちょっと微妙だな……」


 眼下にある巨大構造物近くで爆発は起きたものの、その規模は思ったほどではなかった。視界が不明瞭なので正確なところは判断難いが、建物への被害もほとんどないように見える。

 アレでは、よほど至近距離でもないと怪人すら倒せないだろう。たまたま手にとっていたとかなら話は別だろうが、そんな間抜けがいるとも思えないし。

 テストだからコレでもダメってわけじゃないが、なんとなくモヤる。

 どうしようか。このまま予定通り段階的にテストを続けるか、もう少しパワーを多めに充填して使ってみるか。あんまり時間をかけるのもちょっと面白くない。それは怪人たちに時間的な猶予を与え、避難を許すという事に他ならないからだ。

 ミナミにも相談できないし、ここは俺の判断で即断即決。予備のボムにちょっと多めのパワーを充填する事にした。

 ちょっと多め……どれくらいにしよう。あの爆発規模から考えると、十倍くらいはほしいか? そういえば、そもそもノーマルから変換効率落ちてるんだよな。なら少し多めに……多過ぎたかもしれないが、別にいいだろ。


「大雑把だがヨシッ! ちょいやーっ!!」


 今度は思いっきり下に向けて投球してみた。ミラージュの上に立ち上がっての投球である。ボムの落下速度でソニックブームさえ発生するほどだ。

 ボムは遥か下方の地上に吸い込まるように落下していき……。



 次の瞬間、空間から音が消えた。


「は?」


 ミラージュの謎バリアで遮っているから自分の声は聞こえるが、真下からとんでもない爆風が迫って来ていた。


「うぉあっ! ……って、ゲェッ!?」


 想定外の爆風に思わず距離をとろうとミラージュを動かしてしまった事が仇になり、用意していた< ヒーロー・ボムM >がコロコロと眼下に転がり落ちていく。

 決してわざとではない。もう一度言うが決してわざとではない。球状なのが悪い。入れ物が菓子箱の再利用だとかは些細な問題なのだ。

 落下してしまった< ヒーロー・ボムM >を回収する事は可能だろう。なんか異様な規模の爆風は発生しているものの、やってやれない事はない。

 しかし、俺がとった手は即座の退避である。遥か彼方まで移動する事を選択した。何故なら、ちょっと怖かったからだ。

 だって、仕様を詳しく知っているわけじゃないが、誘爆しそうだし。


「…………」


 というか、やっぱり誘爆した模様。おそらく、無駄に何十段階にも用意したボムのすべてが爆発した。

 かなり距離の離れた場所からでも分かる巨大な爆発。ミナミは海で使う事を懸念していたが、正に使っていたら大騒動になっただろう規模の爆発がアトランティス中心部の構造物付近に発生した。

 誰も予想すらしなかったであろう大惨事である。

 ボムのテスト以外にも、大陸各地で暴れたり、映像資料を確保したりと色々やるつもりだったのだが、それどころではない。


 今回の惨事が引き起こすであろうシミュレーションのため、脳をフル回転させる。もちろん保身のためだ。

 どれだけ身体能力やヒーローパワーが桁違いでも、精度で例のシミュレーターを上回る事などできない。そんな事は分かり切っている。

 ならば、俺がすべき事は限定された状況分析。より単純で、精度の高い結果予想をした上で、発生するであろう問題の対応を検討するのだ!

 ここから俺が被りそうな問題、俺の関係者、日本、人類社会にとってマイナスになるであろう問題を順に……。


「……ま、いっか」


 少し考えたところで、特に問題はなさそうだと思考を打ち切る事にした。惨劇ではあるが、思い至る問題は怪人のモノばかりだ。

 しばらく問い合わせが慌ただしくなるくらいで、基本的にヒーロー・人類にとってはプラスだろう。

 俺にとっての最大の問題はその問い合わせで慌ただしくなるって事だが……今と大して変わらないな。ヨシッ!


「帰ろ」


 俺は帰還するためにすぐさまエリアを離れる事にした。予定は全ブッチだ。元々、ミナミと俺の間だけで予定した秘密作戦なのだから問題ない。




 その日、アトランティス大陸は未曾有の大災害に襲われた。

 中心部に建造中だった巨大要塞はその周囲の地形ごと巨大クレーター化……いや、真球状に消失し、想像を絶する怪人の命が失われたのだっ!!

 怪人勢力は必死でこの惨劇の原因を特定すべく調査を開始。怪人ネットの情報にマスカレイドの侵入ログがあったため、それが原因だろうという事になった。それはマスカレイドがこれほどの大火力を展開する能力を得た、あるいは元々持っていたという目を逸らしたい事実だったが、他に原因が思いつかないので仕方ない。


 なお、アポカリプス・カウンターは大幅に増加した。



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