第十五話「ミナミロボ」




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 避難所別館を作るにあたり……正確に言うなら例のシミュレーターを作る事になった段階で、最も大きな課題はその開発体制だった。

 シミュレーション精度向上のために可能な限りインプット情報を増やす……それこそ国家機密や個人的なプライベート情報などまで組み込むと決定した事で絶対に表に出せないモノになってしまったわけだが、そんなソフトの開発に一般の人間を使えるはずもない。

 担当こそやる気に満ちたシルバー04ことアルジェントに決まったものの、彼女だけでは開発工数を満たせるはずもない。それはもちろん残り二人のバイオロイドを体制に組み込んだとしても同じである。

 サーバー自体の運用管理・保守こそ、避難所の雇用を作る意味で人員を割り当てる事にはなったが、表向き日本国民としての立場を捨てた避難民でさえそこが限界だろう。そもそも、避難所全体を見ても開発に足り得る人員には満たなかったはずだ。

 では、圧倒的に足りない開発力をどう賄ったかといえば答えは簡単、ポイントでゴリ押しした人海戦術である。大量にアンドロイドと契約して、開発チームに組み込んだのだ。

 アンドロイドは作業内容を限定させればさせるほど効率化できるという特徴があるため、こういった作業にはうってつけだったというのも大きい。如何に精緻なシミュレーションを行うかを目的とするソフト開発のため、根本的な設計部分を除けばひらめきの類はいらない。重要なのは膨大で正確なインプット情報と過去の記録なのだから。

 というわけでアンドロイドを契約する段となり、容姿を適当にオートで決めるかサンプルから選ぶか、あるいは完全な機械型にしてしまおうか悩んでいたところに口を出してきたのがミナミさんである。

 単純作業と呼ぶにはいささか無理のある労働内容ではあるものの、基本的に高性能AIみたいな用途で使う人員にも関わらず、彼女はそんな用途のアンドロイドにもデザインは重要だと抜かしやがったのである。会おうと思えば会えるが、俺たちはまず関わる事のない相手なのに。


「確定で表に出せない奴の見た目を気にしても仕方ないだろ」

『だって、可哀想じゃないですかっ! マスカレイドさんは引き籠もりだから気にしないかもしれませんが』


 お、ニート批判か。受けて立つぞ。

 確かにずっと銀タイツ着回してるが、マスカレイドになる以前はそれなりに……いや、少数の部屋着をローテーションしてただけだな。

 なんなら一週間下着を替えなくても気にならないくらいだ。残念ながら、そんなズボラなニートには分からないと言われてしまえば何も言えない。

 つまり、ニートの完全敗北である。


「俺としては、手間を気にしないなら好きにすればって感じなんだが。やりたいなら基本設定からお前の好きにしていいぞ」

『よーし、頑張っちゃいますよーっ! デザインできたら評価をお願いします!!』

「どうせ俺かお前くらいしか見せていい相手いないし、それくらいなら構わんが」


 何故か張り切ってしまったミナミの姿を見て、俺は嫌な予感しか覚えなかった。なんかコレ、既視感があるなと。

 別にミナミに造形のセンスや絵心がないとは思わない。それはこれまでに見る機会のあった資料やそこに含まれるイラストからも窺えるし、産廃にしても気合入れてデザインしただろうツルペタ・ボディのデータから実力は窺える。しかし、どうしてもロクな事にならない気がする。

 脳裏を過るのは幼女以外に大量生産されてしまった産業廃棄物の面々や、個体と見れば良デザインでも結局似たような容姿になってしまったバイオロイドの三人。ようは、途中で面倒になってコピー品みたいにならないかという懸念があるのだ。

 まあ、どうせ表に出ない存在なら問題ないといえばないのだが、どうしてもそっちのほうが可哀想な事になるような気がしてならない。

 そして、しばらくしてデザインの第一稿が上がってきた。なんと最初から3Dデータである。


『名付けてミナミロボですっ!』

「お前、そのセンスはどうなんだ?」


 そこには、なんかロボっぽくなったミナミの姿があった。いつも着ている制服まで含めて忠実に再現した上でロボっぽい。

 ミナミの見た目がいい事は否定する気はないが、普通こういう時に自分をモデルにするものだろうか。自己顕示欲強過ぎでは?


『どういうデザインがいいかなーと悩んでいたところ、鏡に映った自分が目に入ったもので、これでいいやと』

「俺的には興味も問題もないが、どっちかといえばお前が嫌がるもんじゃねいか?」

『ある程度作ったところでそんな事も考えましたが、せっかくここまで作ったのにもったいないというのが先に立ってしまって……つい、作り込んでしまったという事情が……』

「どんな事情やねん」


 単にあとに引けなくなっただけじゃないか。そうやって最初に全力投球するから、いつも失速して墜落するんだぞ。

 そして、懸念した通りそのデザイン一つで燃え尽きてしまったミナミは使い回しを敢行。結局、初期導入組の三体は全部ミナミロボの色違いになってしまったのだ。まるっきり格ゲーの2Pカラー的なバリエーションである。

 面倒臭いならオートデザイン機能を使えと提案もしたのだが、オートだと最初のミナミロボと作風が違い過ぎると却下されてしまった。実際に比べてみたら、個々で見るならともかく、並べると違和感しかないので文句も言い難い。オートだと、これぞ世界基準と言わんばかりになんとなくバタ臭い雰囲気になってしまうのだ。手を入れれば払拭する事もできるだろうが、手を抜くための提案に労力をかけていては本末転倒だ。


『というわけで、ミナミロボ初号機、弐号機、参号機という名前にしました』


 初号機が暴走したり、参号機あたりが敵に乗っ取られないか不安になる。ついでにミナミが暴走していないかも気になる。

 こんなネーミングで零号機がないのは気になるが、まさかミナミ自身が零号機って事なんだろうか。暴走しがちなのがリアル。


「何度も言っているように別に反対する気はないんだが、お前はそれでいいのか」

『大丈夫です、超リアルだったら嫌ですけど、わざとロボっぽくしたので』

「基準が分からん」


 俺の影分身みたいなモノだろうか。ひょっとして、分身の姿を少し変えれば自分の姿を見る悪印象も消えたり?


 というわけで、まあ実害はないし、どうせ直接会う事もないだろうとGoサインを出した事でミナミロボが爆誕。

 そして、その後の展開的にそれだけで終わるはずもなく、シミュレーターの急激な規模拡大に合わせて次々と追加投入される量産型ミナミロボ。

 無駄にポイントを稼いでいる現在、正直アンドロイドを何体投入しようが問題ないのが困った話である。更にここまで能力や機能を限定させてしまうと相当に減額されるので尚更だ。残念な事に、ポイントを見るなら拡張に拡張を繰り返しまくったミラージュの改造費用や、すでに何度も強化済なバイオロイドたちの強化費用一回のほうが高いという有様だった。

 元々の想定なのか、戦闘・運動能力を強化する方向だとどうしても高くなってしまうのだが、これなら問題ないらしい。


 というわけで、アルジェントの管理するシミュレーター開発チームは、ロボっぽいミナミだらけという奇っ怪な現場になってしまった。一度写真を見せてもらったのだが、ズラリと並ぶミナミロボの群れに合成CGかと思ったくらいだ。

 しかも、彼女らは映画やアニメなどで時折見かけるロボットの描写のようなキー入力を必要としない。データのやり取りはケーブルか無線を介して行われるため、傍目にはデータ処理をしているようにはまったく見えない。彼女らの詰める部屋は二十四時間ただただ大勢のミナミ・ロボが並んで座り、身動ぎ一つしないという軽くホラーな空間になってしまったらしい。会わせる予定などないが、妹ミナミとかが見たら軽く発狂するかもしれない。


「どうしてこんな事になってしまったんだ」


 原因は当然の如くミナミであり、許可してしまった俺にも一部責任があるのだが、問題があるかといえば特にないので気にしない事にした。

 人員増強の度に量産型ミナミロボが増えたとしても、存在は名前すら最高機密。俺たちですら直接関わらない場所の出来事なのだから。


『ミナミだらけで脳にエラーが発生しそうなんですが』


 実害はあくまで担当してるアルジェント、そして時々サポートに回るバイオロイド二体だけで収まっている。




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「例のミナミロボ見てて思ったんだが」

『はい、なんでしょう? 実は私もちょっと不気味かなーとか思ってませんよ』


 そんな事は聞いていないので、わざわざ自白するんじゃない。


「メイド三人って多忙になった今も家事やってるわけだが、そういうのは何体か専用に別の機体契約したほうが良くね?」


 ウチの妹やミナミ妹が出入りする事もあるリビングにミナミの顔した奴を放り込んでいいかはともかく、役割分担してもいいだろう。

 あのバイオロイド三人は最初こそ暇していたのだが、今は多忙に多忙を極め、俺だったら即辞表を出すような業務量になっているのだ。いや、俺じゃなくても普通に辞表を出すに違いない。


『あー、実はすでに提案したんですけど、メイドのアイデンティティがーとか言われて断られました』

「あいつらはどこに向かってるんだ」


 確かに最初こそミナミからメイドの心構えが云々の話をしたし、服装は未だにメイドだが、別に家事専用ってわけでもないのに。設定的にはただ単に家事能力もあるってだけだぞ。なのに、あきらかに重要な仕事よりもメイド業を優先している感がある。


『今じゃスケジュール提案すら向こうから出してくる有様ですし、本人たち的にはまだ余力はあると言われてしまっては』

「労基的に見たら?」

『ド真っ黒ですね。バイオロイドに人間の労働基準を当てはめても仕方ないですけど。ちなみに、メイド業以外なら削ってもいいそうです』

「それは、これまで割り振ったポイント的に無理があるな」

『ですよねー』


 家事能力だけなら新規で契約しても大した事ないからってところからきている話なのだ。

 奴らに付与した戦闘能力他もろもろを使わないのは正直もったいない。もちろん、バイオロイドをいくら強化したところで怪人に勝てるほどの戦力にはならないが、護衛やらなんやらでそれが活かされる場面は多かったりするのだ。というよりも因果関係的には、そういう業務が増えたから強化したというべきか。


『刷り込みなんですかねー? 特別に上書きでもしない限り、自我の薄い初期段階に受けた命令が優先されているとか』

「マジかよ」


 理解し難いが、悩んだところで答えは出ないだろう。仕方ないので、これがバイオロイドの特性って事なんだろうなと一応納得する事にした。


『他のところのロイドを見ると、あんなに一つの事に執着する様子はないんですけどね』

「人がせっかくスルーしようとしてたのに蒸し返すんじゃありません」

『いや、今更ですけど変ですよ、あの三人。あきらかに基本仕様を逸脱してるようにしか見えないし』

「前から思っていたのを無視していたのに……」


 そうなのだ。どう見てもあの三人はおかしい。いや、あいつらだけ見てるなら、育て方によってはバイオロイドもちゃんと個性的になるんだなー程度の感想になるのだろうが、比較対象があるとそれが異様に際立っているのである。

 だって、他のロイド……いや、バイオロイドに限定しても、普通はあんな一つの事に執着したりしないし、アイデンティティがどうとか言い出さないし、格ゲーで熾烈な罰ゲーム合戦始めたりしないし、有能メイドアピールもしないし、鮫やらゾンビが出現する事を望んだりはしないのである。

 他のエリアで運用されている個体の観察ブログや、レポートというフィルターがかかった事を差し引いても、あきらかなほどに差があるのだ。

 一方で、なんかつぎ込んだポイント以上に優秀になっているような気がするから一長一短ではあるものの、何故そうなっているのか分からないのは怖い。


「案外、日本で活動しているからああなったって線もなくはないよな」

『確かに、緊急出撃が増えて一般へ認知されてから騒がれて……というか、持ち上げられてますから。マスカレイドさんとはまた違った感じで』


 そう。ぶっちゃけた話、日本の一般層における知名度は、今やあいつらのほうが高い。

 別に積極的に売り出しているわけじゃないし、どこかで紹介したわけでもないのだが、噂が噂を呼び、ネットで情報が拡散した結果そんな事になってしまっている。自衛隊と戦闘訓練してたあたりでは本当の意味で知る人ぞ知る存在だったのに。


 発端は、入国審査などに使われている怪人センサーだ。

 怪人そのものはもちろん、怪人の影響受けた者や物……ようは怪人の残滓が確認された場合にこの装置で検知されるのだが、正体を看破された者の中には暴れる者もいて、その鎮圧のために出撃する事になったのだ。

 怪人パワーで強化されているとしても、人間暴徒相手にヒーローは過剰戦力。俺が出撃したくないという事もあるが、ヒーローが人間相手に力を振るうのも問題だという事で、ちょうど良かったのが彼女たちなのだ。実は、日本以外でも似たような用途でロイドが投入されている例もあって、それに倣っただけともいえる。

 そんなわけで、暴徒相手の緊急戦力としてバイオロイドたちが出撃する機会が最近増えているのである。


 そしてそれを目撃した人が情報を拡散し、その容姿もあって人気が出てしまっているわけだが、そこは日本のネットといわんばかりにフリーダムな活動が大規模に見られているのだ。そして、俺たちもあえてその動きへの対処はしていない。

 カオスな様相を見せるネットの情報は、当然彼女たちも目にしているわけで、そこから影響を受けたという線もなくはないのではなかろうか。

 そういう展開になったのは最近なので、人格形成に影響してるかはかなり怪しいわけだが、絶対ないとは言い切れないのである。


『ちなみに、私はマスカレイドさん担当だから、そういう事もあるかなーってスルーする事にしました』

「ほとんどノータッチなのに俺のせいなのかよ……いやまあ、俺が一番謎だらけで説明つかない事ばっかりなのは良く分かってるんだが」


 それを言ったら真っ先に意味不明な存在はお前じゃねーかと口にしようしたのだが、良く考えなくてもミナミが常識で説明つかない存在なのは今更だった。こんな主人公かラスボス、あるいは暗躍する黒幕みたいなサイバーテロリストが常識で測れるはずがないのだから。

 この不可解な現象の中心は一体なんなのか。状況や推移を見る限り多分マスカレイドさんなんだろうが、ミナミのせいでいまいち自信が持てない。だって、今現在のミナミの人格や能力にマスカレイドの影響が一切ないなんて言うつもりはないが、元々ヤバい奴だったのは間違いないからである。

 穴熊英雄はヒーローにならなければ人畜無害な引き籠もりだが、南美波はヒーローのオペレーターになっていなくとも凶悪無比なサイバーテロリストなのだ。


 ともかく、そんな開発秘話や大量のミナミロボ、そしてバイオロイド三体に関するアレコレがあって例のシミュレーターは稼働を始めたわけだ。

 こうしている今もアルジェント指揮の元、大量のミナミロボが人間には処理不可能な量のデータ入力、そしてソフトの改良を行い続けている。

 同時に、ミナミ由来のハッキング能力を駆使・活用した情報収集もまた彼女たちの役目だ。化け物のような情報処理能力を持つアンドロイド群ですらミナミの代替はできないわけだが、それを活用する事は可能らしく、世界のネットワークは無自覚のままに丸裸にされているのである。超怖い。


 ただ、これだけ膨大なデータ量とポイント由来でブーストされた処理能力を駆使しても、シミュレーターはまだまだ未完成だ。


『というよりも完成自体不可能でしょう。元々、データだけで社会を再現し、予知するのは無理あると理解した上で開発を始めたわけですし』

「そうはそうな」


 そもそも、これを始めた目的は限定的にでも社会をシミュレーションして今後の参考にしたいと考えての事で、完全なシミュレーションなど求めていない。予想以上に結果が出たので規模も膨れ上がってしまったが、元々はもっとコンパクトなシステムを想定していたのだ。

 初期のシミュレーション結果を見てなんか違うなと思って改良、ゲーム内での挙動に違和感を覚えて改良と、そんな事を繰り返していればおかしな規模になるのは想像できそうなものだが、誰も止める人間がいなかったせいで、リソースの許す限り膨張してしまったわけだ。

 この場合止めるべき責任者は俺なのだが、引き籠もりにそんな判断ができるはずもないのである。


 ここまで膨れ上がったシステムは俺としても想定外だが、失敗だったとはまったく思っていない。むしろ、もっと規模を拡大させるべきとさえ思っている。

 半ば偶然の産物とはいえこのシミュレーター、ひいては再現するシステム基盤は間違いなく有用だ。確実に今後の展開予想や対策検討、分析の役に立つ。

 というわけで今日も今日とて、ヒーローを操ってゲームを繰り返している。

 もちろん、ただ遊んでいるわけではなく、世界平和のためを思っての事だから。




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 局所的かつ限定的とはいえ、マスカレイドさんがいない世界をシミュレーションした結果分かった事がいくつかある。

 ゲームをプレイして出たシミュレーション結果で分かったと言ってしまうのもかなりアレだが、そこは置いておくとしてだ。


「人類、意外としぶといよな」

『そうですね。なんというか、なんだかんだで結構生き残ります』


 試行回数、プレイ回数を重ねて精度が上がってきた事で見えてきたのだが、国土が怪人に蹂躙されようが政府が崩壊しようが、そこに生きていた人はなんだかんだで生き残ったり、再起したりするのである。もちろん全体で見れば一部でしかないが、誤差というほど少なくはない人数だ。

 これはインプットデータの増加によってシミュレーション精度が向上した結果確認できた現象で、リアルでも起こり得る可能性が高いといえる。

 以前のバージョンで俺が感じていたヒーローあっさり死に過ぎ現象は、ヒーローだけでなく人間にも当てはまるようだ。


『逆に、怪人があっさり死ぬのはマスカレイドさん的に見てどう思います?』

「なんとなくだが、合ってると思う」


 一方で、どれだけシミュレーション精度が上がっても、怪人や戦闘員はあっさり死ぬ。元からあまり変化が見られない。

 これはおそらく正確なシミュレーションで、奴らはあまり生に執着しないのが本質なのだろう。これまでマスカレイドが対峙してきた怪人どもの反応がノーマルなモノとは到底思えないが、肌で感じている奴らの性質はそういうものだと感じるのだ。

 それは死が名誉とかそういう考えではなく、生よりも優先するモノがあるといった類で、自身の発生起源に直結したモノなのだろうと。


『怪人たちは別に死ぬ事自体は怖くないと。やっぱり、マスカレイドさんの放つ根源的な恐怖に対しての反応なんですかね』

「どこぞのコズミックホラー的な扱いはアレだが、実際そうなのかもしれないな」


 本当の事をいうなら薄々感じてはいたのだ。俺はできるかぎり怪人に恐怖を刻みつけるよう行動しているが、単純に行った所業のみだけで見た場合、そこまで怖がられるものだろうかと。

 そりゃ尿で殺されたりするのは嫌だろうし、ひどい死に方をした怪人を見て同じような目に遭いたくないというのはそうなんだろうが、それにしてもだ。奴らの怯えようは、これまでの所業にプラスアルファがないと不可解なのである。

 その答えはマスカレイド自身に由来する。シミュレーションの結果はそれを補強するようにも見えた。


「まあ、だからといって別に何が変わるわけでもないんだが」


 マスカレイドの発する存在感や威圧感がそのプラスアルファというのは大いに有り得るだろう。

 しかし、多分それだけではない。奴らが最も恐れるモノは、きっと存在の否定なんじゃないだろうかと俺は考えている。マスカレイドの超パワーで適当に殺されるというのは、その部分に大きく関わるが故に恐怖するのだと。


『マスカレイドさん的にはいつも通り恐怖を振り撒くだけですよね、分かります。なんだかんだでウチの基本姿勢みたいなもんですし』

「その評価に思うところがないでもないが、事実は事実だしな」


 でも、事実陳列は相手を逆撫でするから用法用量には気をつけたほうがいいぞ。


『このままマスカレイドさんが強くなり続けたら、いずれ視界に入れるだけで発狂する怪人が出てくるかもしれません』

「それならそれで楽かもしれんが、ますます表には出られなくなるな」


 実生活を送る中で困るような気がしないでもないが、引き籠もり的にはあまり影響がないとも思う。

 それに、この威圧感的なモノってある程度コントロールできる気がするし。今はかなり大雑把にしかできないが、将来的にはかなり細かく調整できると思う。自在に制御できたら、怒らせたら怖いぞって演出に便利だ。

 当面の目標としては、普通の人間と会話して無条件で警戒されないくらいかな。立場的、関係的なモノからくる緊張などは別として。


「ヒーローも人間も怪人もシミュレーション精度が上がっている。って事は、最新バージョンで見られる世界の動きもかなり精度が高くなってきたって事だよな」

『そっちは元々精度が高かった気はしますが、そうですね』

「これを見てると、ヒーローや怪人がどうこうよりも、共同体が元々抱えている問題のほうが大きい気がするんだが。シミュレーション中に国が瓦解する原因って大体そんな感じだぞ」

『それも元々明白で、単に目を逸らしていただけというか……』

「ここまでシミュレーション精度が上がると、誤魔化しようがないんだよな」


 精度が低いからたまたま問題が発生しただけで、リアルならもう少しマシかもしれないという言い訳が通用しない。現実に夢見るタチではない俺でさえ、もう少しまともであって欲しかったと思うくらいに。

 そのくらい、シミュレーション上の既存国家は容易に崩壊するのである。ポーランドみたいに史実通り謎のしぶとさを見せる国はそのままだったりするが、そんな国はそう多くない。


「リアルでもある程度口を出す影響力は確保したわけだが、この手の話は根本的に個人でどうにかできる問題じゃないんだよな」

『ゲームの中の住人も解決しようとはしてて、その上であの結果ですからね。というか、今のところ発言力があるのって日本だけですし』

「日本も問題だらけではあるんだが、この問題で口出ししたいのは、どちらかというと他の国だしな」

『そこら辺もデメリットを飲み込むなら可能は可能なんですが』

「マスカレイドさんか、間接的に日本の影響力がでかくなり過ぎるのはちょっと……」


 俺のポリシー的にも、多分世界情勢的にもアウトだ。それならばまだ現状維持のほうがマシなくらいである。その結果、滅ぶ国があったとしてもだ。

 今だって、日本の影響力が上がり過ぎてる感が強いのだから。

 大体、その先に待っているのは独裁宗教国家もどきだし。


 国家は思った以上に簡単に崩壊するし、怪人に支配権を奪われたりする。そこから連鎖して周囲の国家も崩壊し、世界中へと余波が波及して大混乱。国家規模の故郷を失った難民を穏便にどうこうする手段などなく、体裁を整えるために四苦八苦した結果共倒れする事が多い。

 その上、どれだけ追い詰められても平気で内輪もめを始めて崩壊は加速する。はっきり言って、怪人に直接滅ぼされるよりもこれらの連鎖反応で内側から崩壊するケースのほうが多いくらいだ。

 つまり、国家を含む既存の共同体はそこまで強靭ではない。シミュレーション精度の問題ではなく、本質的に脆弱性を抱えている。どこの国がというレベルではなく、ほとんどの国がだ。これがある程度世界秩序が崩壊してからはまた違うのだが。

 総じて言うなら、大半の人間が現状を理解し、国や人間の対応がドライになると途端にしぶとくなる傾向がある。ただし、それは既存国家や文化、風習の存続を意味しているわけではない。少なくとも、人権のような概念は大きく衰退する事が前提で、人命は遥かに軽くなる。


『なんか、私がやるといっつも独裁っぽい国家ばっかりになっちゃうんですよね。本人が国家元首になるか、影から操るパターン』

「俺も似たようなもんだけどな。意識的に避けようとしてもそうなる傾向が強い」


 シビアなゲーム故に、どうしても効率的なプレイに偏る方向にあるのは否めない。いくらヒーロー視点で展開されるゲームだとしても、影響する規模がそこまで拡大すれば神の視点で物事を見がちなのだ。

 もちろんプレイヤーが国家レベルまで干渉できるくらい影響力を得た場合のプレイに限るわけだが、共同体としての統制が利き易い体制が攻略に有効で、そうならないと力負けしてしまうのだ。頑張れば頑張るほど独裁的になってしまう。

 マクロな視点でばかり物事を判断するヒーローはさぞかし人間性の薄い存在に見られている事だろう。……というか、下手に凶悪な精度でシミュレーションしているから、実際にそう見られていると確認できてしまう。

 まあ、実際民主主義はどうしても腰が重くなるシステムだから、激動の時代には向いていないというのが良く分かる話だ。

 とはいえ、俺としてはそんな体制になるのは望んでないし、大多数の人類やヒーローもそうだろう。現在進行形で近い事をやってるヒーローもいるが、どちらかというと必要に迫られて仕方なくやっているだけに見えるし。


「ゲーム故の特性だし、そりゃ権力者が暴走しない前提なら独裁のほうがフットワークいいに決まっているんだよな」

『リアルでやるとしても、そのほうが効率はいいでしょうしね』


 ただまあ、ゲーム中でもいきなりそんな体制に移行できるわけでもないし、リアルでやるとなったら実現にも継続にもハードルが多いのは間違いない。

 たとえばマスカレイドさんが国家元首や教祖になったりしたくないように、感情的な問題も多い。

 ゲームならではの割り切りはそのままリアルで通用しない。その点はリアルでないといえる。


「アルジェントに言って、人間プレイのモードも追加してもらうか」

『うわ、しんどそう……でも、元々の目的から考えるとアリかもしれませんね』


 というわけで、その要望を出してみたのだが、現在のように間接的に関わるシミュレーションならともかく、直接的な、特に国家元首として国を動かすようなプレイはかなり無理があるらしいとの回答が返ってきた。

 このシミュレーションは、あくまでヒーローという特殊な存在が外部から干渉する事を前提としているから成立するらしい。

 もし、その機能を組み込みたいなら根本的な部分から作り直す必要があるとの事。


「良く考えてみれば、ヒーロー活動が基本のシステムで、どう政治を動かすんだって話だよな」

『確かに、干渉するにしても限定的ですし、政治そのものに口出したりはしませんしね』


 シミュレーションゲームとして考えるならかなり自由に行動できる本作ではあるが、基本的に行動を指定するのみでプレイヤーが操ったりはしないし、そんな機能もない。政治その他に干渉できているのは、あくまでヒーロー活動の結果、影響を受けているだけなのだ。

 いくらリアルで精緻にシミュレーションしてるとはいえ、干渉できる範囲が限定されているからこそできているという話なのである。

 というか、そもそも論として政治のイロハも知らないのに国政を動かせるはずもないのだから、直接的なシミュレーションが実現されたとしても上手くいくわけがない。シミュレーション精度の問題もあるが、プレイヤーのインプット量が現実的でなくなるだろう。ゲームとして誤魔化す事も不可能だ。


 あれほど国の中枢に関わっているように見えるキャップですら、政治的干渉は極々限定的なのだ。差し迫った事情がない限り、ヒーローのような力を持っただけの一般人が人間社会の政治に口出しするのはむしろ悪手だろう。

 ヒーローが国家元首になったり、新興国を立ち上げたりと、差し迫った状況になったら負けって事だな。




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「国が対策すべき問題に直接口を挟むべきでないのが分かったのはいいとして、それでも口を出さないといけない問題はあるんだよな」

『切り分けと絞り込みができただけでもマシと考えるべきでは?』

「それはそうなんだがな」


 明確になって浮き彫りになってきた問題というのがこれまた厄介で、俺たちの干渉が特に必要になると思われるのは主に国防に関して。

 ヒーロー対怪人がどうとかそういう話ではなく、コレは従来の意味合いの国防に近い。社会の基盤となる部分がかき回された事によって、変質した事による対処が必要なのだとはっきりしてしまったのだ。

 怪人や戦闘員が出たらヒーローが対処する。人間の犯罪者や敵性勢力に対しては警察や軍隊、あるいは日本なら自衛隊が対処する、それはいい。当然の住み分けだ。

 しかし、今後それらの範囲から逸脱した存在が現れてくる事が明白で、シミュレーションゲーム上では非常に悩まさせられる問題の上位に君臨し続けている。いや、今だってそこまで表沙汰になっていないだけでリアルでも発生してはいる。


「超常の力を得た、あるいは背景に持つ人間に対しての対策はどうしても必要になる。これは既存の国防システムじゃ対応し切れない」


 バージョン2になった当初に警戒していたのは、怪人の手先となった人間が生まれる事だった。

 継続的に怪人やその支配圏が存在している事によって、恐喝、買収などの手段や怪人由来の能力で、怪人が人間を動かす危険性が生まれるのは少し考えれば分かる事だ。その後、実際にそういう事件は発生したし、中には被害が発生しているケースもある。

 加えて言うなら、表に出ないだけで潜伏しているケースは遥かに多いだろう。これらの対策は当然行う必要があるし、日本でもカタログ商品を渡したり、バイオロイドたちを投入して対応しているのだが……。


『シミュレーションでも結構悩まさせる問題なんですよね、怪人以外の敵性勢力。しかも初動が遅れるほど厄介になるという』

「力を得たテロリスト共から単に勘違いした奴まで、脅威としては玉石混交でも、通常戦力では対応し切れないんだよな」


 ようは、俺たちが長谷川さんたちに渡した汎用ヒーロースーツ、その延長線上に存在するモノが敵性勢力と化す。その可能性を常に孕んでいる。

 怪人の息がかかっていなくとも以前からテロリストは存在していたのだから、そういう奴らが出てくる事も当然といえば当然だったのだ。

 気付いて問題視しても、日本の外が主な舞台だったから後回しにしていたのはある。実際、ある意味テロの本場というべきアメリカでは、キャップがかなり悩んでいたのを知っているし。


 これまでヒーロー同士の争い、諍いは、実のところほとんど発生していなかった。あまり友好的でない国の担当同士でも、ヒーローの個人間ではそこまで険悪ではなく、せいぜいが中国各地で見られる縄張り争い的なモノか、南スーダンの一件のように見てみぬ振りが限度だったのだ。

 それどころでなかったというのが大きいだろうが、ヒーローの資質としてそういう奴が選ばれているっぽいというのも要因の一つだろう。

 だから、ヒーロー同士の抗争、そして悪用される事例はほとんどないに等しい状態だったのだ。俺にはあんまりないが、ヒーローとしての使命感ってやつが抑止力になっていた例だってあるかもしれない。

 しかし、そういったフィルターが存在しない大多数……エリア支配権を得た者が、そんな常識的な行動で済ませるという保証はどこにもない。

 ほとんどは問題はない。大抵の支配権持ちは元々権力者であり、迂闊に動く事はその基盤を失う事と理解して慎重になる。あるいは保身や既存の基盤の補強に費やす者が多い。これはマフィアなどの反社会組織でも同じだ。

 しかし、すべてがそうであるはずもなく、短絡的に行動する者、何かしらの危険思想に準じる者は少なからず存在するのだ。


 たとえばの話をしよう。遺産の相続などで使い道のない山などの広大な土地の権利を得た。これが既存の価値観で考えれば塩漬けするしかない利用価値なしの資産でも、今の状況で見るとその価値が大きく変わってくる。支配率の仕組みは土地権利者など、既存の社会システムで保証されている分も考慮されるので、エリアカタログとポイントを得る可能性は高いためだ。今の世にはこんな事例が無数に存在する。

 この支配権を得た者が既存社会の内に恨みを持つ者であったなら。そして、購入できる商品の中に決して既存の法律では裁けない復讐の手段があるとするならどうするだろうか。……というか、普通にある。それも結構安価な商品からそれは可能なのだ。


 暴力、詐欺、冤罪、妄想、洗脳、単に嫌いだから、報復に対する報復、あるいは社会が良くなると思って行使するケースだってあるだろう。容易に絞り切れないくらい、そんな例は世に溢れている。

 理由がない場合だって普通に有り得る。なんとなく力を振るいたい者、短絡的に他者を悪と決めつける者、変な思想に被れた者、手段がないから行動しないだけという者だっているはずだ。エリアカタログは、そういった者の心のタガを容易に破壊し得るのである。

 力を振るう理由を決めるのは自分。範囲を決めるのは自分で、その内容も自分が基準。そんなあやふやなモノに従って行使される力は、さぞかし社会的混乱と暴走を呼ぶ事だろう。

 そして、そういった者が当たり前のように出てくる中で、より容易に実現できるヒーローが絶対にそれをしないとは言い切れないのだ。

 既存社会が長年かけて作り出してきた人権意識など容易に吹き飛び、人々の倫理観は崩壊するだろう。

 少なくともシミュレーション上では無数に見られる事例で、規模や程度はともかく、国外を見渡せばリアルでも散見されている問題だ。


 つまり、超常の力によってテロをはじめとした反社会的行為が行われる可能性は、怪人に限った話ではない。これに対し、既存の権力基盤を前提にしている政府だけで対応・抑制するのははっきりいって無理があるだろう。

 そりゃ国家規模になれば支配エリアだって大きく、使用できるポイントもその分確保できる。何故か国家中枢とされる組織にその権利がない国もあったりするが、それは置いておくとしてだ。そのポイントを使って対策をすべし、というのは当然の結論であり理想論だ。

 しかし、実際のところ使用方法については未だ検討の域を出ず、今後も容易に方針が決まるとは思えない。そして、多少ポイントが潤沢だろうがこの手の対策に必要なポイントとしてはまったく足りないはずだ。

 エリアカタログで購入可能な物品、施設、サービスは、ヒーローカタログのモノと比べて極めて限定的かつ高額だ。それは個人として見るならともかく、一つの共同体全体を賄えるほどのものではないのである。

 考えれば考えるほど、バージョン2は人類社会にとって劇薬だ。


『とりあえず、既存の案として策定途中だったバイオロイドの緊急派遣サービスは要件範囲を拡大しましょう。それで抑止力を含めて多少は時間が稼げるはず。シミュレーターのほうはアンドロイドの大量増員もありましたので、負担増という程度で済むかと』

「多少はな。だから、そっちに専念したほうがいいだろって話なんだがメイド業優先なんだよな……」

『バイオロイド……に限る必要はありませんが、専門のロイドを追加します?』

「それも一長一短なんだよな」


 別に増やすだけならいくらでもとはいわないが普通に増やせる。それだけのポイントは稼いでいるし、ロイドである時点である程度の能力は保証され、契約者の命令にも忠実だから、組織としても十分機能するだろう。


「あんまり規模を拡大し過ぎると既存の国防組織との間に亀裂が走る。協力できている内はいいんだが、今でも正直怪しいと思う」


 今のところ、自分たちで対応できるはずのない案件に対して、救援してくれるメイドさんたちはありがたいと思ってくれているらしい。

 ただし、基本的に国防は人間社会の国防組織の領分であり、そこを逸脱し過ぎるのはまずい。今のところ不満が上がっていないのは単に過渡期であり混乱期であるからで、これが少し安定すればそういう問題が露出してくる事だろう。

 警察や自衛隊が役立たずと評価されるのはまずいし、そう思われるだけでもまずい。それならむしろメイドたちやヒーローが役立たずと思われたほうが社会的にはマシとさえ思える。


『では、次に挙がってくる対策候補は当然、ヒーロー装備の供与、あるいは貸与って事になるわけですが』

「そうなんだよなぁ……」


 ようは警察なり自衛隊が対応できるくらい強化されればいい。今の国家の収入の中から研究・実験以外の用途でヒーロー装備を普及させる事は不可能に等しいが、俺が肩代わりする事はできなくもないのだ。

 もちろん無制限にバラ撒けるわけではないし、するつもりもないが、根本的にレートの異なるカタログを使っているヒーローなら、そして全体で見ても上澄みの上澄みであるマスカレイドさんなら、かなりの規模で支援する事は可能だろう。

 しかし、安易にそれをするのは悪手だ。どれだけ厳選され、選抜された対策チームを作って、その中でだけ装備を配布するとなっても、そのすべてが適切に利用してくれると思うほど俺の頭は花畑じゃない。今後の事を考えるなら当然規模を拡大するだろうし、人員が増えれば問題が起きる可能性は高まる。

 どれだけ社会的に危険と周知しても、横流しをする奴は出てくる。貸与された本人が大丈夫でも、悪意のある人間に盗まれる可能性だってある。脅迫されて折れる奴だってある。

 肉親・家族のような弱点に成り得る関係性を一切持たないか、それを即座に切り捨てられる者。確固たる国防意識を持ち、私心を持たず、変な解釈で逸脱した使用をしない。そんなサイボーグのような奴がたくさんいればなんとかなりそうだが、いるはずもないし、実際いたら正直怖い。むしろ貸与を躊躇する事案である。

 だからといって、俺が使い道について過度に口出すのも悪影響。業務の縄張り問題もあるし、無理を通せば変に発言力が上がってしまう。

 そうやって行き着く先は独裁体制なのだ。シミュレーションの中でも何回似たような事になった事か。


 問題と懸念が堂々巡りを繰り返し、すべて放り出したくなってしまいそうだ。案外、これまでで一番のピンチかもしれない。


『現実的な案としては、これらの懸念を共有し、対策を考えられるチームの結成が必要ですね。政府主体の』

「また近藤さん案件か。有能極まる人だからなんとかなってるが、そろそろ死ぬぞ」

『それこそ、ポイント由来の商品でブーストするしかありませんね』


 人権とかすべて放り投げているな。本人的に少しでも嫌だとか思ってないのだろうか。よっぽど強烈な使命感でもなければきついだろうに……。

 それとも、案外強烈な権力で改革できている状況を楽しんでいたり? 暴走は懸念されるが、一応抑止力はあるわけだし、そっちのほうがマシかな。






 こうして、新年度を迎えた四月一日、一般向けヒーロー活動広報機関、通称< 銀嶺機関 >の発足と併せ、その内部にて対超常危機対策チームが結成される事となった。

 一部関係者が重複する事もあり、クリスのデビュー戦となる発足記者会見でも触れる事になるはずだ。


 ……なんで銀嶺なのかは良く分からんが、多分マスカレイドの銀に合わせて誰かが決めたんだろう。



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