第5話 カツト・ヘリタ

「はい,2,400円ですね」

カットとカラー、シャンプーの値段をヘリタは支払った

黒髪を残しつつ黄色に染めた


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理髪店の空間が好きだった

落ち着いた内装に重厚感のある設備

油圧式で上下動、背もたれの傾動する美しき椅子は

どことなくガンダムを思い起こさせた

街中の小さな理髪店では珍しくオートシャンプーの心地良さを味わった

頭部の洗髪によって心身ともに清められた気分になった


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「マスターありがとう」

「ありがとうございます、ヘリタさん」

「また一段と男前になりましたね」

「これ以上は困っちゃうなあ」


このやりとりを10年以上繰り返している

マスターに手を上げて店を出ようとしたところで、若い女性が入ってきた

長く通うこの理髪店で初めて目の当たりにした光景だった

数人の女性が常客なのは知っていたが、20代だろうか、若く美しい女性でマスターも隅に置けないと思った

去り際に耳に残したマスターと女性のやり取りは、親し気だった


黄色に染めてアップデートした頭髪を早くあの人に見せたい

(今から行ってもいい?)

メッセージを送信しながら隣駅の芦原橋方面へ歩いていく

吹き抜ける風を頭部だけが受けているような、刺激の集中とも言えそうな爽快感を頭皮で感じた


返信は来なくてもあの人の家に向かった

雑念ないスッキリした頭が思い浮かべるのは彼女だけだ

似合うと言ってもらえたら嬉しい


頭皮の薄い僕の恋人はレースクイーン

足が徒歩のアクセルを踏んで回転数が上昇する

早く見せたい僕の、精一杯の洒落っ毛を


#HAMIRU

#カツト

#ヘリタ

#わ

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