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「……うん?」
尾崎は自分の当選を聞いて、目を瞬きます。
「いや、……なんでだ?」
立候補はしていません。
「……さては……」
尾崎は地元で尾崎を応援してくれる人たちに、会いに行きました。
想像通りでした。
「尾崎さん、勝手なことをしてすみません。ですが、あなたは次の議会も出席すべきです。そうするべきなのです||」
なんと、尾崎応援団たちが、勝手に立候補を届けていたのです。
そして見事、当選したのです。
悪気があってやったわけではありません。
それはわかっていますが、尾崎はついこの前、「議員らは次の選挙を辞退すべき」と訴えているのです。
主要な戦前政治家たちは、尾崎の言葉なんて気にせずに立候補していました、
ですので、尾崎の渾身の訴えは、いつものごとく影響なしでした。
明治の大政治家が良いこと言っているなあ、で終わりでした。
ただ、尾崎は言った本人ですので、厳守したいのです。
「私は今回の選挙は出てはいけないのです。大変申し訳無いですが、辞退します」
きっぱりという尾崎。
さすが、「Go Ing My Way」の尾崎です。
ただ、尾崎講演会のん人たちも、病めるときも健やかなるときも尾崎を見守り、尾崎を支援してきたのです。
支援者当の本人から断られたって、すごすごと引き下がりません。
尾崎応援団の人たちは、絶対に引っ込まないぞと足を踏ん張ります。
「敗戦した日本に必要なものは、食べ物だけではありません。どんな逆風のなかでも正義を貫く、あなたのような人が必要不可欠なのです」
別の支援者も力強く説得します。
「尾崎さんは戦争責任を気にしておいでですよね。俺等は尾崎さんに責任があるとは全く思っていません。ですけど、もし万が一にも責任があると仮定したとしても、混迷極める日本を助けるため、尾崎さんは議員になるべきなんです|」
日本の未来のために、なんて言葉をかけられたら、尾崎も反論がしにくくなります。
「……ですけど……。私は……」
支援者たちは、深々と、頭を下げます。
「お願いします。日本のためにも、どうか、議員になってください」
「おねがいします||」
政治的な圧力には屈しない尾崎ですが、こういった誠心誠意の訴えには、どうにも弱いのです。
しばらく黙っていましたが、尾崎はうめきます。
「……分かりました。議員になりましょう」
支援者たちは花が咲いたように笑います。
「わあ! ありがとうございます!!」
「これで日本の未来も明るいですね!!」
喜ぶ支援者たちを見ていると、尾崎も気分が和らいできます。
「……こうなっては、私も気合を入れて、新たな日本を支えていきましょう!」
こうして、尾崎はいつものごとく手のひら返しをしたのでした。
戦前から何度も手のひらクルクルしていたので、世間も「はいはい風物詩風物詩」と軽く流したのでした。
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