第11話 竜と薬師の外仕事
「ここが、毒爪をもつ魔獣が出た牧場か!」
俺たちが赴いたのは、店から歩いて数十分のところにある。
羊や牛などが飼われていて、普段であれば放牧中の動物がうろついているのどかな場所だが、今は、武器を持ったモノモノしい冒険者たちがうろつく場所になっていた。
入り口に近づいていくと、牧場の警備を任されたのか。剣を持った冒険者らしき男が話しかけてきた。顔に傷跡をつけた彼はこちらを見るなり、
「よう、薬屋の先生じゃねえか。どうしたんだ……って聞くまでもねえか。毒の魔獣の話、聞きつけてきたんだろ?」
そんな感じで気さくに挨拶してきた。
「うん。それと、毒爪で引っかかれたらしい地主さんの状態も気になってね。諸々どうなっているか、教えてくれるかい?」
冒険者ギルドの面々とはだいたいが顔見知りだ。この剣士とも、未開拓地域で何度もやり取りした仲なので、単刀直入に聞いてみる。
すると、剣士は視線を、彼方にある屋敷の方に向けて、
「地主さんは、回復魔法を受けて、母屋で休んでいるよ。ちょっと魔法の効き目が薄いみたいだが命の危機はない」
そのあとで、母屋とは牧場を挟んで向かい側の林の方に目を向け、
「で、魔獣のほうは現在正体までつかんで、捜索中だな」
「何者か分かったのかい?」
聞くと剣士は、ちょっと嫌そうな顔をして、頷いた。
「ベノムウルフの改造体だったよ」
「改造体?」
リリスが聞いてくる。彼女には聞きなじみのない言葉だったらしいが、俺たちにとってはよく知るものである。
「かつての戦争で魔王が現種の生物を魔法で改造したものだね。能力の強化はもちろん、恐怖心を薄れさせたり、人間を餌としてみるようになったりとか、精神や性質から変えてしまった魔獣だよ」
それが野に放たれ、野生化し、人の害になる、というのは戦争が終わる前からも起きていた問題だ。
「そんなものがいたのね……」
「まあ、そこまで頻繁にあるものじゃないんだけどね。しかしベノムウルフかあ。爪と牙に毒を持っているけど。生体によって毒の種類は変わるなあ」
魔王と人間の戦争中でも、十数種類の毒が確認された。
複合していたり単体であったりと、見た目で判別はし辛いものだから、今回はどうだろうか、と思っていると、剣士は首を傾げて、
「気になったんだが、その女の子たちはどうしたんだ? 先生の薬屋のロゴが入った服を着ているが見たことないけど」
「紹介が遅れたね。この子たちは新しく入った店員で、ウチの看板娘たちだよ!」
そういうと、剣士は顔をほころばせ、
「おおー。そりゃあいいな。先生が一人で笑いながら調合してる店じゃなくなって、はたから見た時の怪しさも減るぞ」
そんな言葉を聞いて、リリスがこちらにじっと目を向けてくる。
「カムイ、町の人からもそういう認識されてるのね」
「毒を扱うときはテンションが上がるからねえ。ともあれ、良ければ地主さんの所に案内してもらえるかい?」
「了解だ。毒に詳しい先生に直で見てもらったほうが地主も安心できるだろうしな」
そう言って、剣士と共に地主の元へ歩みだそうとした、そのタイミングだった。
――カンカンカン!
と、甲高い鐘の音が鳴ったのは。
音が鳴ったのは林の方。その音に素早く反応したのは剣士で、
「緊急の鐘?! なんだ……!?」
そう言って林の方を見た。俺たちもつられて視線を送ると、なった理由がそこにはあり、
「ベノムウルフ。向こうから出やがったか……!」
成人男性ほどの体躯を持つ狼が二匹、林から飛び出してきたのだ。
凶暴そうな爪に、へし折ったのであろう槍の残骸をつけた状態で、だ。
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