第2部
第7話 竜たち、薬屋の店員になる
二体の竜と、共同生活二日目の朝。
薬屋にて、リリスとスノウが作ってくれた朝食を食べ終えて、開店準備をしている頃合い。
「あらー! ジルニアさんから聞いて飛んで来たけど、こんなにかわいい子たちがウチに住んでくれてるのね!!」
飛び込むようにモカがやってきて、リリスとスノウを見るなり、満面の笑顔になっていた。
「このお家で不自由してない。大丈夫?」
「は、はい。カムイ様にもよくして頂いておりますし」
「問題ないわ。カムイ、ちゃんと撫でてくれるし……」
「あらあらあら! 本当にいい子達ねえ。カムイ君ともちゃんと一緒に生活できているみたいだし」
モカは笑顔で言った後、トーンダウンして、
「……今回は怖い目に合わせてゴメンねえ」
この召喚士の町を大切に思っているからこそ、モカは召喚獣たちのフォローについては大事にしている。
……そもそもが、俺みたいなのを拾ってくれるくらい優しい人ではあるけれど。
捨てられた子たちに、こんな感じで溺愛するのは、これまでもあった事だし。しかもウチの店に来たのだから飛び切りだろう。
「あの、お気になさらないでください。もう済んだことですし。カムイ様と会えたのは個人的には良いことだったので」
「私も。腹立たしいのはあったけど、少なくとも今は、いっぱい話せる人が周りにいて、楽しいから」
二人の言葉に、モカは感動しているようで、
「なんて優しい子! それだけに、許せないわ。こんな子たちをひどい目に合わせるなんて」
「ちなみに下手人の人相とかはギルドに投書しましたけど、どうなりました?」
「一応、召喚士ギルドで、そのような人相の人が現れたのは見られてないのよね」
モカはふう、と吐息する。
「他のギルドや商人たちから情報を集めた感じ、どうもこの町から出ちゃってるっぽいのは分かったんだけど。まあ、その辺りはチェックし続けるわ。……召喚獣を大切にしない奴は、許せないもの」
笑っているようで笑ってない顔でモカは言う。この人は物腰は柔らかだが、怒るととても怖いのは俺も良く知っている。
そして、その怒りが、召喚獣に対する扱いが少しでも良くなる方向へ使われるのなら、良いことではあるのだろう。
「っと、嫌な話はもういいわ。一気に華やかになったのを喜ばなきゃ! 店員じゃないけどもね」
「モカさん。それなんだけど。彼女たち、ここでちょっと手伝いたいそうなんだ」
いうと、モカは驚きの後に笑顔になり、
「あらあらあら! そうなの!?」
「はい。何もしないというのは居心地が悪くてですね」
「私も。出来ることがあるなら、やりたいわ」
「――なら、良いものがあるわ!」
そういって店の奥に飛び込んだモカは、何やら大量の箱を抱えて持ってきた。
その箱の中にはいっていたのは、
「薬屋の制服よ! 作ってみたのはいいんだけど、私だけの時は結局調剤用の白衣を着たりするし、カムイ君に着せるわけにもいかないから。ずっとしまってあったのよ」
かわいらしいフリルのついた服だ。
それが複数色分ある。
「気に入ったら好きなのを着てね!」
「は、はい。……わ、かわいい」
「手触りも良いわね。……私、この色にしようかしら」
モカの熱意に押されてはいるようだが、二人とも乗り気ではあるようだ。
直ぐに、それぞれに違う色の制服に着替えている。
確かに制服を着ると、一気に店員感が強くなるなあ、と思っていると、
――ドスーン!
と大きな音が聞こえた。さらには、
「先生! 先生! いるか!? ちょっと来てくれ!」
店の外からそんな声が聞こえてきた。
――――――――
【お読み頂いた御礼とお願い】
本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。
前回までが第1部『元暗殺者と竜との出会い』編。
今回より第2部が始まります!
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