無常

 そのまま拠点に向かってくれたら良かったのだけど(そもそも、そういう拠点があるのかどうかも疑わしい)大鬼たちは少し開けた場所を見つけ、女を転がした。


 それに飛びついた小鬼だったけど、明確な序列社会を形成しているらしく、中鬼が小鬼たちを投げ飛ばした。


 そして大鬼が女に覆いかぶさる。その一物は引くほど大きく、人間が耐えられるようなものではないように思える。


 出来る限りの抵抗と大声をあげ、どうにか抜け出そうとする女だったけど、中鬼が頬を思い切り打ち据え、恐怖で大人しくなった。それから先のことは、彼女の為にも墓場まで持って行ってやらねばならないだろう。


 そこに女としての尊厳はなく、あるのは精子を溜めるだけの存在意義である。相手への配慮などは一切なく、自分が気持ちよくなるためだけにそれは行われる。私は更に待ち続け奴らを尾行したのだけど、拠点に戻る様子はなく、ただ適当にうろつきながら、女に精子を注ぐだけの一日を過ごしていた。


 日が暮れる頃に、私は大鬼たちを始末した。意識を失っているものの、かろうじて生きている女の方は、少し思案したあとに炎で跡形もなく燃やした。これが私にとってのはじめての人殺しになった。


 彼女は既に真っ当に生きられる状態ではなかった。


 それは私の自己満足でしかなかったけど、そもそも彼女を見捨てた身だ。最後まで私は傲慢に振舞ったのだ。死んだ男たちの中に恋人はいたのだろうか。死体が転がっている場所に戻ったけど、既に死体がなかった。通った人間が持ち帰ってくれたのかもしれない。

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