第13話 真相

俺は急いで寝ている冬美に駆け寄って話しかけた。


「冬美、冬美!しっかり!」


だけど、返事はなく綺麗な顔で眠っていた。


「夏宮くん…」


その様子を見て、哀れんだ目で霜月先生はつぶやいた。


「霜月先生、俺霜月先生に言っておかなくてはならないことがあります」


そう言うと霜月先生は真剣な表情でこっちを向いた。


「冬美の心と地球の天候はおそらくリンクしてます。信じてもらえないかもしれなですけど…」


俺がそう言うと霜月先生は驚いた様子で喋り出す。


「君もそう思っていたのか…。私も薄々そうではないかと思っていた。間違いない、雪野くんの心とこの地球の天候はリンクしている。最初雪野くんの検査の数値が良くなっていたことに私は驚いたよ。でも数値の良い理由は分からなかった。でもこの間君たちが病院から帰った後ピンときたよ。雪野くんは、君と出会ったことによって心の氷がどんどん溶けていったんだ。つまり君が雪野くんの心を溶かしてたんだよ。そして、検査データから雪野くんのストレス値と天気を照合した結果ピッタリと合致した。だから、雪野くんが君と出会った日から天気が良くなっていったんだ」

「やっぱり、そうだったんですね…」


霜月先生は、真剣な表情で頷いた。

そして、急に尋ねられる。


「でもなぜ、急に雪野くん倒れてしまって地球を吹雪にしてしまうほど心を閉ざしたのだろうか?何か心当たりはないかな?」

「俺、病院の帰りに冬美に告白したんです。そして、私といると不幸になるって断られました」

「なるほど、おそらく雪野くんは夏宮くんへの好きという感情を無理やり押し殺してしまったんだろう…。余命が短いことを理由に…」


俺は冬美に駆け寄って語りかけた。

「ごめん、冬美。俺がちゃんとしっかりしてれば…」


ガララ。


そんな、お通夜みたいなムードの病室のドアが開いた。


「ここは、雪野冬美の病室で合ってますか?」


入ってきたのは中年のおばさんだった。


「ああ、雪野さんの親戚の…」


霜月先生は、反応する。

正体は、冬美の親戚の人だった。


「私にも連絡が入り急遽飛んで参りました」


霜月先生が、病気のことなど俺に今まで話したような内容を説明していた。


□□□


「申し訳ございません。今現状雪野さんを救うことができなく…」


霜月先生は、謝っていた。


「冬美…」


冬美の親戚のおばさんは、冬美を見て涙を流していた。

そして、落ち着くとおばさんは語り出した。


「先生、全力を尽くしてくださりありがとうございます。それを言うと私も説明しなくてはいけないことがあります」


俺と、霜月先生は黙っておばさんの話を聞いた。


「冬美の母は雪女でした」


雪女って…!

天野が言ってたやつか…。


「雪女と言っても、世間が想像する妖怪ではなく普通の人間なのですが、生まれつき天候を操れる一族の生き残りでした。私もあまり詳しくは分かりませんが、他にも夢を操る能力など色々あるらしいです」


夢ってまさか…。

俺が最近見てた変な夢も、中学生の時に見たあの悲しく長い変な夢もまさか全て…。

俺は、信じられないような話だがを聞き入ってしまう。


「冬美の父は冬美は生まれつき体温が極端に低かったので雪女とのハーフで能力を受け継いでるんだなと思ったらしいです。そして冬美の父と母は冬美を普通の子として育てていたらしいです。母親もいるし能力は制御されており普通の子として育っていったらしいです。しかし3年前のある日、母親は電車の人身事故で亡くなってしまいました」


やっぱり、あの時の人は冬美の母親だったのか…。

俺は、すごい責任を感じた…。

そして、俺と冬美は同じ場所で同じ出来事で同じ傷を負っていたのか…。


「その日その現場に居合わせ母を失ってしまった、冬美はそれ以来心を閉ざしてしまいました。すなわち心が凍ってしまいました。それと同時に能力も暴走を始め、このような天候になってしまいました。

もちろん、冬美は普通に人間として育ったので能力のことなど分からないし使いこなせるはずもありませんでした。そして私たちも教えてませんでした。もっと心を閉ざすと思って。ましてや、自分の心と地球の気候がリンクしているなんて微塵も思ってないでしょう。私も今知ったぐらいですから…。冬美の父は、妻を失ったショックと雪女の能力の解明のため私に冬美を預け家を出ていってしまいました。私が冬美を預けられる時に冬美の父からこの話を聞きました。これが私の知る全てです」


冬美の親戚のおばさんは喋り終わりまた寝ている冬美を見ていた。

俺は話を聞き終わり、なんとも言えない感情になった。

そして、霜月先生は口を開く。


「つまり病気ではなく、雪女の能力だったと…。そして今、特効薬が愛情だと知っても雪野さんが目覚めないことには…。これはタラレバですが心を溶かし切ればこんなことにはならなかったのですか…」


霜月先生のその言葉を聞き俺は、ただ冬美を見ることしかできない無力感を味わった。


「そうだ、夏宮くん。冬美の部屋に和人さんへっていう袋があったから渡しておくね」


冬美の親戚のおばさんからは、何か入ってそうな綺麗な袋をもらった。


「では、入院のことについて詳しい話を…」

「はい」


霜月先生と、冬美のおばさんは何やら大事な話があるみたいだった。


「じゃあ、私たちは席を外すよ。君も遅くならないうちに帰るんだよ」


俺と冬美は2人きりになった。

そして寝ている冬美の手を握った。

手はとても冷たかった。

そして、俺は冬美に語りかける。


「冬美、2人きりになったよ…」


その綺麗な寝顔からは当然返事はなかった。

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