第12話 吹雪

「雫、雫!」


はっ!

夢か…。

昔の、嫌な思い出の夢だったな…。

思い出したくもない過去だ…。

しかし、鮮明な夢だったな…。


起きると、暗くなっている自分の部屋にいた。

シーツは汗でベトベトになっていて気持ちが悪い。


雫はもう…いないんだったな…。

そして、俺は冬美に振られたんだったな。


俺はさっきの夢を思い出していた。


そしてとあることに気づいた。


昔見たあのコートの人って…!?

そして、一緒にいたあの人は…。


ふと、窓の外を見ると雪が大荒れで猛吹雪になっていた。


なんだこの天気は…。

夢じゃなかったのか…。

いやさっきの確実に夢だ。


スマホを見ると、天野からの不在着信がたくさんきていた。

俺は慌てて掛け直した。


「もしもし、天野か!」

「和人!やっと繋がったか。お前外の天気見たか!」


天野は、ものすごく慌てていた。


「見るも何も、風の音がすごい」

「ああ、急に猛吹雪なった。やばいぞ気象庁が特別警報を出してる!」


俺は、テレビをつけて確認する。

テレビをつけるとどのチャンネルも雪に関しての臨時ニュースだった。


「これ、どうなってるんだ…。天野…」

「俺でも原因はあまり分かっていない。でも俺なりに調べた情報がある。よく聞いてくれ、まず、お前が雪野ちゃんに極月駅へと会いに行った日太陽が顔を出した。そして、若干だがその日から気温が高くなっていき雪も小降りになっていった。そして、最近雪が降らなくなり平均気温が高くなったと思えば昨日から今日にかけてまた雪が小降りになり一気に吹雪だ。お前何か心あたりとかないか?」


極月駅。太陽。夕焼け。雪が小降り。余命。


「冬美!」

「何かあったか!?」

「悪い、天野。俺行かなきゃいけないところがある」

「そうか。行って来い夏宮和人!Boys be ambitious!」

「ありがとう!」


俺は、天野からの電話を切り急いで冬美に電話をかけた。


「もしもし」


携帯は繋がったが冬美の声ではなかった。


「もしもし、夏宮です!」

「この番号は夏宮くんか!雪野くんの主治医の霜月だ」


聞き覚えのある声だと思ったら霜月先生だった。


「冬美は、どこにいますか!?」

「雪野くんは、倒れて今ここに入院している。重篤だ」


冬美が倒れた…。

しかも、重篤…。


「今すぐ、行きます!」

「分かった」


俺は、急いで着替えコートを羽織った。

そして、仏壇の前に座る。

雫の写真を眺めて拝んだ。


雫、俺行ってくるよ…。


『早く行きなよ!お兄ちゃん!』


俺にはそう言われている気がした。

そして、立ち上がって出かけようとすると母に止められた。


「和人、こんな天気にどこ行くの!?」

「ちょっと用事…。行かなきゃ雫に怒られる…」

「雫?あんた何言ってるの?」


俺は、真剣な目つきで母を見つめた。


「どうなっても知らないよ。責任は自分で取りなよ」

「うん」


俺は家を出る。

外は猛吹雪だった。

一面真っ白で、前も見えづらい。

そして、強風で歩くのも困難だった。


スマホで、電車情報を見ても当たり前だが運休していた。


外は猛吹雪だった。

一面真っ白で、前も見えづらい。

そして、強風で歩くのも困難だった。


スマホで、電車情報を見ても当たり前だがどの路線も運休していた。


このままだと、病院に辿り着くことはできないそう絶望していると、

一台の空車のタクシーが通りかかった。


俺は急いで手を挙げた。

すると

タクシーは止まった。

俺は、急いで乗り込む。


「こんな天気にお客さんがいるとは思わなかったね。どちらまで?」


運転手さんは、行き先を聞いてくる。

俺は運転手さんに行き先を伝えるとタクシーは走り出した。


「まさか、急にこんな天気になるとはね」


運転手さんは、話しかけてくる。


「そ、そうですよね」


俺は適当に返事をする。

そして、また運転手さんは話しかけてくる。


「お客さんそんな険しい顔して、彼女さんでも倒れたのかい?」


的を得たような質問をしてくる。


「まあ、はい」


俺はそう答えると運転手さんは、ルームミラーで俺の顔を確認しながら喋り出した。


「お客さん知ってるかい、恋愛っていうのはねいかに我慢するか…っていうものでもあるんだよね。だから彼女さんには我慢させないようにお客さんが頑張ればいいさ」


俺は運転手さんの言葉がなぜか凄く腑に落ちた。

我慢させないようにか…。


「ほら、到着したよ。代金はまけとくよ。ほら急ぎな」

「ありがとうございます!」

「いってらっしゃい」


そう言われて俺はタクシーを降りた。

あの運転手さんすごくいい人だった…。

俺は急いで、病院に入り受付をし冬美の病室へと向かった。


そして、雪野冬美様と書いてある病室へと入った。


そこには、点滴の管が入れられて冷え切って寝ている冬美と霜月先生がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る