第10話 告白
「ここは、どこですか?」
冬美は、周りをキョロキョロしながら俺に尋ねる。
「ここは、プラネタリウム。一緒に青空見よう」
「はい!」
冬美は、笑顔になり上機嫌になっていた。
俺は、2人分の入場チケットを買いプラネタリウムへと入った。
「では、いってらっしゃい」
係の人に、そう言われプラネタリウムの部屋へと入る。
入ると、俺たち以外誰もいなく貸切状態だった。
俺たちは、プラネタリウム独特の角度の椅子に座る。
「なんかワクワクします!」
「そうだね」
しばらくすると一瞬あたりが真っ暗になる。
そして、天井いっぱいの雲ひとつない青空が広がった。
そしてプラネタリウムの、説明が壁のスピーカーから聞こえてくる。
「この空は3年前の突然の異常気象で見れなくなった青空です。ほら鳥なんか飛んでいます」
スピーカーから鳥のさえずりが聞こえてくる。
「雨が止み、虹が現れました」
天井いっぱいに虹が映し出された。
すごいど迫力の虹だった。
そして、今は絶対見れないので貴重だった。
「次は、夜の空の旅です」
そう聞こえてくると、あたりは真っ暗になり天井いっぱいに夜空が映し出された。
天の川まで再現をされていた。
「真ん中に見える大きな切り込みのようなものが天の川です。英語ではmilkywayと言います。そして、三つの三角形のように大きくて明るい星があります。これをそれぞれこと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブと言います。この大きな三角形のことを夏の大三角形と言います。1年に1度七夕の日天の川を超えて織姫と彦星が会うのは有名な話です」
その後も季節の星座がいっぱい出てきて、青空も見えない星も見えない現状貴重な体験となった。
俺も、感動して心が浄化された気分になった。
顔をは見えないが、多分冬美も同じ気持ちになっているだろう。
「以上で空の旅は終了です」
そのアナウンスと同時に部屋が明るくなった。
隣を確認すると、冬美のその無邪気な瞳からは涙が溢れていた。
そして、俺が冬美を見てることに気づくと小さな少し涙ぐんだ声で喋った。
「和人さん…ありがとうございます。感動しました」
「良かった。綺麗だったね」
「はい…」
「じゃ帰ろうか」
□□□
お互い無言で駅へと歩く。
水混じりの雪をお互い踏む足音だけが鳴り響く。
『君になら言ってもいいだろう…。単刀直入に言うと雪野くんの余命はもう半年もない…』
余命あと半年か…。
あと俺に何ができるのだろうか…。
そうだ、俺がそばにいないでどうするんだよ…。
もう自分の思いを伝えよう。
俺は意を決した。
そして、駅へと到着する。
「和人さん、今日はありがとうございました。私が乗る電車そろそろ来るのででは…」
「ちょっと待って冬美」
俺は冬美を引き止める。
冬美は、振り向くと首を傾げる。
「俺さ、冬美のことが好き。だから、付き合ってほしい…」
告白を聞いた冬美は驚いてフリーズしていた。
そして、険しい表情で返答する。
「和人さん、ごめんなさい。私と深く関わると不幸になっちゃいます。だから、和人さんには迷惑をかけたくないのでごめんなさい…」
涙を流しながらそう返答して、冬美は改札の中へと入っていってしまった。
俺は、その後ろ姿を見て一人立ち尽くした。
冬美が改札の奥へと遠のいていく…。
「えっ…」
時間差で、現実を知る。
そしてまた頭が真っ白になる。
もう1回改札の奥を見るともう冬美の姿はなかった。
俺、どうすればいいんだ…。
なあ雫、俺どうすればいいと思う?
俺、この後どうすればいんだ…。
返答なんか…ないよな。
帰ろう…。
帰って寝よう…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます