第2話 コントラスト
「和人さん、助けて…和人さん!」
誰かが俺に助けを求めてる…声?
■■■
「和人、和人!朝だよ!」
「はい…」
母親の怒鳴るような声が部屋の外から聞こえる。
あれ、また夢か。
また俺、変な夢みてたな。
内容は、あれ…覚えてないや。
「何、ぼーっとしてんの早く支度しないと遅刻するよ」
母が、俺の部屋のドアを開け一言。
俺は、パジャマから制服に着替えて学校に登校する支度をする。
「今日の天気は、1日中雪でしょう」
もう、分かりきった天気を毎日放送する天気予報。
そして、トーストを齧りいつものコートを羽織り家を出発した。
「まもなく、電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください」
電車内では、吊り革を掴みながら立ち好きなアーティストのアルバムをイヤホンで聴く。
電車内は、スーツや制服の黒色で覆われているそして、車窓から見える、真っ白な雪原。
いつもと同じこのコントラストで昭和のテレビのようなモノクロの光景。
俺は、この光景にうんざりだった。
「まもなく、極月、極月です。お出口は左側です」
地獄のアナウンスがなる。
学校の最寄駅に到着する。
俺は、これから1日が始まると思うだけで気が重かった。
電車のドアが開く。
車内から出るとそこは極寒だった。
今朝は、この極月駅に牡丹雪が降り注ぐ。
昨日の夜も、こんなに雪降ってたな。
そういえば、昨日この駅で…。
『正直、飛び降りようとした瞬間すごく怖くてやっぱり死にたくないっていう気持ちになりました』
昨日の記憶が一気にフラッシュバックした。
そこには、昨日と同じものすごく厚ぼったいコートを着てマフラーを巻き、手袋をしてニット帽を被っている人の弱々しい後ろ姿があった。
■■■
「まもなく、電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください」
電車内では、座りながら好きな小説家の小説を読む。
電車内は、スーツや制服の黒色で覆われているそして、車窓から見える、真っ白な雪原。
いつもと同じこのコントラストでオセロのようなモノクロの光景。
私は、このいつもの光景に嫌気がさしていた。
「まもなく、極月、極月です。お出口は右側です」
電車内のアナウンスがなる。
私は、読んでた小説に栞を挟み本をバッグへと入れ立ち上がる。
電車のドアが開いた。
車内から出ると外はものすごく寒かった。
昨日の夜と同じ駅のホームへと足を踏み入れる。
私は昨日この駅で…。
『危ないじゃないか!』
昨日の記憶が一気にフラッシュバックした。
振り返ると、そこには昨日と同じ背が高くコートを着て寒そうにポッケに手を入れている頼もしい人の姿があった。
■■■
その瞬間降る雪は静止し時が止まったように感じた。
俺&私はこの日からモノクロな風景に鮮やかな色が着色された。
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