第5話 侍が刃を飛ばせないという文献は有りませんからね

 さて、雲上に連れられいつの間にか

 東京の中心、新宿の大規模ダンジョン

「新宿駅ダンジョン」に連れてかれていた。


 ちなみに新宿駅がダンジョンと化している訳では無い。

 このダンジョンはあくまで新宿駅前に現れた洞窟である。

 昔は新宿駅の複雑さから、冗談めかしてそう言われてたらしいが。


 そして今の俺達はその新宿駅ダンジョンの入口前にいる。

 流石日本の中心地だけあり、探索者やダンジョン管理の職員が溢れていて騒がしい。


 そんな中、特級探索者である為か、雲上はかなり人目を惹いている。

 同時に彼女の隣に立っている俺にも視線が集まっていて……どうにも落ち着けない雰囲気だ。


「はいどーも、こんくもー。

という訳で、新生・雲上愛羽×千擁四郎チャンネルの配信第一弾は手堅くダンジョン配信です! それでは主役の先輩、自己紹介どうぞ」


「…………親切探索者事務所四課で主任を務めています。千擁四郎です。何故自分がここに立っているのか分かりませんが、よろしくお願いします」


 促されるまま、とりあえず当たり障りない挨拶をしておく。


〈なら変われや〉

〈俺もお前が何故そこにいるのか分からないよ〉

〈真面目か? この侍野郎が〉

〈※この投稿はガイドライン違反により削除されました〉


 雲上が用意した機材によって、視聴者の反応が立体3Dホログラムの半透明ウィンドウに映し出されている。


 ……非難轟々と言った様子だな。

 主に俺に対して。

 おかしい、そんなに怒られるような事言ってないと思うんだが。


「なぁ、雲上。

この配信本当に続けていいのか?」

「もちろん続けますよ! 同接数とか見るに注目度は国内最高ですしね!」


「……そうか」


 正直、今日の所は帰りたい。

 俺が担当する地域の仕事は終わらせて有るが、

新しく魔物が出てくるかもしれないし……。


「さ、行きますよ!」


 だが、腕を治してくれた恩人かつ特級探索者の雲上を退けることは難しい。

 つまり、俺が今やるべき事はこのダンジョン配信を速攻で終わらせて職場に帰る事だ。


「分かった。とっとと終わらせたいんだが、どこまで行くんだ?」

「とりあえず下層到達くらいまでは」

「とりあえず……?」


 洞窟系のダンジョンは上層から始まり、中層、下層と下っていく。

 こういうダンジョンは物理法則や質量を無視しているらしく、物理的に有り得ない深さを持っている。


 そして雲上が言った下層はほとんどのダンジョンのうろ底にして最難関地域。

 到達するには最低でも2級探索者くらいの実力が必要だ。


「一応言っておくが、俺は普段、ダンジョンから溢れてきた魔物とか不人気なダンジョンの間引きばかりだぞ、充分に戦えるかは正直分からない」


 こういう普通に人気なダンジョンを普通に攻略するのは不慣れというか。


「先輩程の実力が有ればなんの問題も有りません! カメラに見せつけてやりましょう!」


 そう言って雲上はドローンカメラの方を向く。


「視聴者の皆さん! 本日の目標は下層到達ですので応援よろしくお願いしまーす!」


〈魔物を応援します〉

〈ここが特級によるおっさん介護配信会場ですか〉

〈おっさんは恥晒す前に逃げた方がええんちゃう〉

〈主任ー! 頑張って下さいっすー!〉


 おっさん……俺まだ26なんだけど。

あと今知り合いがコメントに居なかったか?


 *


 雲上と共に手続きを済ませ、俺達はダンジョンに入った。

 時折雲上が視聴者に話しかけていて、巨大な地下空洞であるこのダンジョンでは声が良く響く。


「私は後ろで支援役を担当するので、先輩は前でガンガンやっちゃってください!」

「わかったわかった……」


 雲上が俺の後ろに回る。

 はぁ……色々言いたいことはあるが、いつも通りやろう。


「視聴者の皆には悪いが普段通りにやらせてもらおう。なにか面白い話とかリアクションは期待しないでくれ」


〈黙れ〉


 ……ここで言い返したら負けだ。

 俺はコメントを視界から外してダンジョンを進む。


「グギャギャ!」


 すると直ぐに魔物が現れた、

ゴブリンにゴブリンウォリアーか。

 どのダンジョンでも出るような一般的な魔物だな。


「流石にこの程度はな」


「グギャアアア!?」


 俺は刀を抜き、最低限の力で切り倒していく。


「さっすが先輩!」

「このくらいなら誰だってできる」


〈やるやん〉

〈仮にも二次職だしこの程度は余裕〉

〈ダンジョンさんもっと殺意出して〉


 ブブブ!


 ゴブリンを倒し終わると間髪入れずに、騒がしい羽音が俺達に迫ってきた。

 見ると、キラービーという蜂系モンスターの群れが奥から押し寄せてきている。


「たしか、新宿駅前ダンジョン名物のモンスターだな」


 女王の為に集団で探索者を捕らえにかかる様子は、新宿駅を利用するサラリーマンと重ねられ、名物扱いされてるらしい。


〈おっ、良いの来たわ〉

〈近接職の侍でどうやって空飛ぶ敵を相手にするのか……ニヤニヤ〉

〈セオリー通りならハリ攻撃で急襲して来た所のカウンターだけど

 このおっさんにそんな反射神経があるのか〉


「……纏めて片付けるか。『辻風』!」


 俺がスキルを発動させると、竜巻が刀に纏わりつく。

 そのまま狙いを定めて風の斬撃を飛ばし……


 ザンッ!

「「「キシャアアアアアアアアアア!!?」」」

 ボトボトボト!


 キラービー達は全員纏めて真っ二つに切られ、空中で上下に別れながら墜落。

 よし、多少休んだお陰か、いつもより良い一撃が撃てた気がする。


「片付いたな。進もう」


〈は?〉

〈え?〉

〈ふぁっ!?〉

〈??????????〉


 *


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