第4話 内政・諜報 同年5月4日
5人の家臣と1人の
まず、小舟を多く作らせている。この時代の武蔵は、現代以上に河幅が広く、水運を利用しやすい。
小舟で軍勢を動かせば、経済的であり楽に移動できて都合が良いのだ。もうすでに荒川を通って蕨城周辺まですぐさま軍勢を派遣出来る。
舟を作るための木材は6日前から領地の西側、鶴ヶ島や日高辺りから運ばせている。西武蔵は山内上杉氏や古来からの豪族がひしめき合う魔境だが、扇谷上杉派の国衆や土豪も少なくない。兵力はともかくこういった木材などの戦略物資の供給源として悪くないため、扇谷上杉家の裏の生命線だ。
それに丁度今日から河越城から蕨城まで、小舟を使って木材など建材を運んでいる。もちろん、関戸城を落とした後に速やかに深大寺城を改修する為の建材だ。秀吉の一夜城とまではいわずとも4日…いや、3日で築城してみせよう。
蕨の先の志村城は北条方なので、そこから先は北条を攻めないと進めないのが残念だ。
それに地図も作っている。三角測量で、丁寧に領内の地理関係を把握したい。出来れば関東全域の地図を
河越城の外では、河越と難波田の間にある有山砦とその南にある観音寺砦を改修し始めている。ただの防衛強化の改修ではなく、連絡網強化の為の改修だ。高い櫓をいくつか作り、昼は手旗信号、夜は松明の配置で練習をさせている。通信手を河越で育成し、マニュアルを紙に書いて渡して置けば実用化は案外難しくなさそうなので、将来的には領内の諸城に普及させよう。これは悪天候でさえなければ5kmでも10kmでも一瞬で情報伝達出来る。この速度を超えるのは電話が発明されるまでないだろうな。
河越城に戻って、上杉相模守義勝だが…彼にもてなしの饗応をしたら一瞬で酔っ払い、挙句暴れ出した。どうにか取り押さえて縄で縛り付けて寝かせた。
何故酒に弱いのに申し出なかったのか…。もう勘弁してくれ。二度と奴に酒は出さん。
翌日も
昨日になってから、元気を取り戻したようなので軍学を教えることにした。流石に足利家の人間だけはある、最低限の知識はあった…が、それだけだ。
駆け引きや謀略が苦手であろうことが伝わってくる。少なくとも智将になれる器ではない。とはいえ、一隊を率いることが出来るようになってもらえれば戦力増であり、今の扇谷上杉家にはありがたい。
城下の区画整理を考えつつ、新しい産業として醤油を考えている。というのもこの時代、紀伊(現代の和歌山あたり)でたまり醤油があるくらいであり、醤油が無いのだ。味付けといえば、塩か味噌か梅干し。どれも美味しい辺り嬉しい話だが、やはり現代日本人には醤油は馴染み深い。
というわけで…
とまあ、河越近辺は私が当主となってから、早速新たな体制に変化しているわけだ。それに、これから行うことはいづれ関東に覇を唱える為に重要になってくる…。
そう、千葉氏の家老である原氏の重臣
史実通りならば千葉氏は国府台合戦で北条幻庵の手引きで小弓公方方を騙し、北条方に寝返る。これを逆手に取り、国府台合戦後に勢力を減らした根木内城と築いて間もない小金城をネコババする準備を行うのだ。
現代と違い、利根川は東京湾に流れている。江戸時代に房総をまたぎ太平洋に流れるよう東遷されたのだ──がしかし、今はまだ坂東太郎、つまり関東平野の暴れん坊とされるほど水害をもたらすが、その巨大な流量は関東情勢を左右するほど多くの力を秘めている。
利根川水運は上流の関宿城をもつ古河公方が握っている。その古河公方と北条は現段階では小弓公方の排除で方針が一致している。簡単に言えば北条と小弓公方の戦は利根川水運の奪い合いである。
そんな利根川を越えて領地とするのは少々工夫がいる。その工夫がスパイというわけだ。
手法は難しくない。みっちりスパイとしての手解きをした複数人の親スパイを送り込み、虐げられているはみ出し者や未亡人、他所から逃げてきた民などコミュニティから外れた者、領主に恨みを持つ者らを米や貨幣を与えつつ感化させ、子スパイとして使う。普段は下層階級の働き手として怪しまれず、必要な時には親スパイの指令1つで情報や簡単な破壊工作が可能となる。これこそが現代の記憶から考え出すこの時代でやりやすい
尤も…この方法は他の関東諸将の領地なら通用するが、北条家にはまるで通用しないだろう。彼らは中世屈指の善政を敷き、民たちへの扇動が通じにくい。それに風魔小太郎でお馴染み風魔氏もいる。実力は未知数だが舐めてかかることは出来ないだろう。北条相手には諜報活動より防諜活動が必要かもしれない。なんか手旗信号の暗号化とかやっとこうかな…。
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