彩り。いつか寂しさ癒えるその日まで
時雨霜月
第1話
ここは町外れの小さな小さな丘。どうやら僕はお母さん達と、はぐれてしまったらしい。いや……決して僕が皆を見失ったわけではないよ!
皆が勝手に居なくなったんだ。ずっと待っているけど、迎えに来ない。
だから、しょうがない。僕の方から、皆を探す旅に出る事にしたのだ。
それでは出発!と心に決め、一歩を踏み出そうとしたら『何してるんだ!?』と友達に止められた。僕を止めた焦り顔のこの友達は、僕が、皆と、はぐれてしまった時に出会った。
──あの日、僕は目が覚めると知らない家に居た。
あの時の僕は、そりゃもう焦って、すぐに家を飛び出した。焦りから心臓も早くなるし、目の前も涙でぼやけて来たとき……友達が話しかけてくれたのだ。
友達は何も聞かず『大丈夫だよ』と言いながら、僕の背中をさすってくれた。そして、落ち着きを取り戻した僕が、事情を話すと、友達はこう言った。
『君はね、昨日、ここに引っ越しして来たんだ』
『引っ越し……? でも、僕、そんなの聞いてないよ。それにここに来た事も覚えてないし』
『そりゃそうさ。だって、君、昨日はぐっすり寝てたからね』
だから、覚えていなくて当たり前だ──と友達は笑う。よくよく話を聞くと、友達も隣に引っ越して来たばかりだと言った。
そして、僕の家族は遠くへ、大切な物を買いに行ってると教えてくれた。そこは、すごく遠くて戻ってくるまでには、かなり時間がかかるらしい。
友達は、その日から僕が寂しくないように、と一緒に待ってくれるようになった。それが今日まで続いている。
「何度も言っただろう? 戻ってくるまでには、すごく時間がかかるって」
「だとしてもかかり過ぎじゃない? 本当に戻ってくるの?」
「そりゃ勿論! 戻って来るさ!
君を一人にするわけないだろう?」
「うん……分かった。皆が来るなら僕も我慢する」
『よし。良い子だ』そう言って友達は、僕の頭を撫でてくれる。
ほんの少しだけ変な感じはするけれど、友達が言うなら間違いないのだろう。そう思えてしまうぐらい説得力があるのだ。僕の友達は。
「ほら、今日も空が綺麗だぞ」と、友達が言うので、僕もしょうがなく一緒に見上げる。不貞腐れつつも、いつも思う。
ここから見える空は本当に綺麗で、さっきまでの寂しさも、この青空へと飛んで行く。早くお母さん達にも見せたいな……。
──ここは町外れの、小さな、小さな丘。
そこには、色とりどりの花に囲まれた、2つの墓石があると言う。
町民の話によると、不慮の事故に巻き込まれてしまった小さな命が、悲しんだり、寂しくならないようにと、数百年経った、今でも、この丘を彩り続けているらしい。
今日も丘には、軽やかに弾むような風が吹き、青空が広がっている。
彩り。いつか寂しさ癒えるその日まで 時雨霜月 @shigure_goma
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