第26話 知ってるくせに

「スカートを気にするなんて珍しいね。パンツ視られても気にしてない感じなのに……あっ、学校だけだった?」


 普段のあたしなら、キモイとか引っ叩いているかもだけど、今は無理。

 言葉責めされてるって分かってて、それが心地よくて、もっと苛めてって思ってるから。


 ノーパンだって知ってて、わざわざ『パンツ』って言ってくるところとか、もうダメ。

 ――ゾクゾクってしちゃって……。


 それでいて、『学校だけだった』って、逃げ道も作ってくれていて。

 場所やシチュエーションに合わせた言葉使いに、分かってるなぁって思うから、やっぱりあたし専用だと思う。


 二人きりとは違う感じで、ちゃんと使い分けてくる羞恥を煽ってくる言葉攻めに、キュンキュン疼いちゃう。


「……んっ……へんたいっ……ち、痴女みたいに……はぁっ、ふぅっ……い、言わないでよ」


 あたし、上手く言えてる?

 上手く学校みたいに言えてる?

 ちゃんと、素っ気なくてバカにして呆れてるように言えた?

 俯いたままチラと見ると、江洲がバツが悪そうに頷いたのが見えた。


「ご、ごめん……」


 情けなさそうな声音と口調で言ってくるけど、私に耳打ちしてきた言葉は――


「枝務さんは、痴女じゃなくて、マゾだもんね」


 ――っ!?


「こんな場所だからマゾって言ったんだけど……」


 やぁぁぁんっ、もうっ。

 意地悪、意地悪。

 好き、好き。


 意地悪な声音でそんな言葉を耳打ちしてこないで。

 鼓膜から脳に何かおかしなモノが分泌して流れていくみたい。

 ピクンって肩が跳ねる。

 言葉に身体が反応しちゃう。


 「あぁぁぁぁんっ……いぢわるぅ……」


 肩に埋めた唇から、甘ったるい声で言っちゃう。

 きっと、目をうるうるってさせて、顔を真っ赤にして、羞恥にまみれた顔になってるって分かってるから、顔をあげれない。


 もし、江洲が意地悪そうな笑みを浮べてて、それを見ちゃったら、あたしは止まらなくなる。

 ――抑えきれなくなる。


「スカート……抑えなくていいの?」


「んぅっ……江洲が……抑えてて……」


 ダメだぁ……全然、抑えきれてない。

 自分からお尻触ってって言ってるし。

 なんなら、江洲のタイミングでスカートをめくって苛めてっておねだりじゃん。

 江洲の顔が近くあってよかった。


「あぁっ……だめぇ…ばかっ……んぅぅっん、こ、こんなところで……言わないでよぅ……」


 スカートを抑えていた手で江洲の背中に回して、顔を肩に埋めて。

 あたしは、甘い声を出して甘えるような声で一応は抗議できた。

 抗議になってないけど。


 江洲には「もっと」っておねだりしているようしか、見えてないだろうし、実際にそうだし。

 そもそもマゾだって否定してないし。


 突然、あたしみたいな可愛い女の子にこんな場所で抱き付かれて、驚いたような表情を作る江洲。

 この男はホントに……もうっ……。


 いちいち刺さるんだよ。

 スカートの中の脚の付け根が、すぐにトロトロになっちゃうんだよ。

 腰が勝手にうねっちゃうんだよっー。

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