第3話 駅のホーム~バレてた~
電車から降りても、俯いたまま周囲を確認することはできずに、何事もなかったように努めて、改札口を目指す。
「ふぅ……ヤバかったぁ……気持ち良かったけど……」
独り言を零してしまった。
お尻を叩かれて、気持ち良さそうに喘ぐ動画とかあるよね。
あれの何がいいんだろうって思っていたけど、理解できた気がした。
凄くいいかも。
でも、そんなのしてくれる人なんて頭に浮かんでこないんだよ。
そもそもだけど、あたしが、あんな事をされて気持ち良くなる事を知られたくないしさ。
そこで、ピンときた。
そう言えば、うちのバイト先ってポイントが貯まると、個室で指名した人と1時間二人きりになって、ちょっとした何かができちゃうシステムが、あるんだった。
まだバイトを始めてそんなに日も経ってないし、馴染のお客さんとかいないから、指名されて、個室で何かした事もされた事も無いんだけどね。
だから個室での詳しい事は分かんないけど、『スカートたくし上げたまま給仕』とか、『ご主人様の膝の上に跨いで座って給仕』とか、『お尻ぺんぺん』とか、メニューの中から1つ選択できるシステムだったはずで。
これだよ、これ。
あたしはメイドって事だし、相手はご主人様って事だし、お尻ぺんぺんされて本当に感じてても、演技なんだって思ってくれるよね。
誰か、あたしを指名してくんないかなぁ。
でもって、『お尻ぺんぺん』サービスを選んでくれたらね。
とりあえずは、予習。
スマホでそーゆー動画を見てみよう。
早速、スマホで検索して、適当に見ていったら、ヤバイよね。
頭の中で妄想が。
これからバイトって時に、こんな動画ばかり見てるのも、どうかと思うけどさ。
夢中になっちゃう。
妄想炸裂って感じだけど、相手の顔が上手くイメージできないのが残念。
あたしが感じるようなルックスってどんなのだろう?
ああっ、こんな風に言葉攻めされるのもいいなぁ。
って事は、声音も大事だよね。
言い回しとかも大事だし。
お客さんの中にそんな人がいたら、いいなぁ。
どうせなら、本当に気持ち良くなりたいしさ。
うわっ。あたし妄想で顔が熱くなってるし。
仕方ないよね。
だからこその、妄想でしょ?
迂闊だけど、私はノーパンのまま制服姿でバイト先に向かっている事を忘れてしまっていた。
それくらい妄想に耽っていたからね。
だから、痴漢が背後に居て、あたしの独り言を聞かれた事も、エロ動画を見ている事も、後ろからスカートの中を盗撮されている事も、気付けなったんだ――。
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