第3話 スキルは女神が考えたらしい

 決意を新たにし、少し打ち解けた俺とルイーナ。ここからが魔王を倒す旅の本当の始まりと言う訳だ。


「ところでソルトさん。私と合流するまでにレベルアップしたみたいですね!新しく手に入れたスキルはもう確認しましたか?まだなら一度見てみましょうよ」


 ルイーナはわくわくとした様子で聞いてきた。自分で考えた職業って言ってたからそこは気になるよな。さっきまで合流を優先して確認は後回しにしていたから、俺もどんなスキルを取得したのか見るのが楽しみだ。


「そうだな、今確認しておこうか!」


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 ソルト ♂ 種族:ヒューマン

 職業:スキンヘッダー Lv15

 『スキンヘッド中スキル効果100億倍』


 HP 160/160


 所持スキル

 □パッシブスキル

 ・【清潔感】:状態異常耐性が上がる。

 ・【ダイヤヘッド】:ダメージを頭に受けた時、そのダメージをカットする。

  ※追加効果:相手が敵モンスターである時、ダメージを反射する。

 ・【オールフォーヘッド】:自分へのダメージは全て頭で受けた事になる。


 □アクティブスキル

 ・【ウォッシュルーム召喚】:身だしなみを整える道具が揃った空間を呼び出す。

 New!

 ・【ヘッドバット】:強化された頭突きによる攻撃を行う。

 New!

 ・【サングラス生成】:サングラスを生成する。

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 ステータス画面を開くと、まだ確認していなかったスキルに『New!』の文字が表示されている。新しいスキルは2つ。どちらもアクティブスキルだ。まずは【ヘッドバット】。おお、初めてのまともな攻撃スキルだ!


「やった!ついに攻撃スキルが手に入った!」


「おめでとうございます!ソルトさん!」


 画面はルイーナにも見えているようで、俺の隣でそれを覗き込んで喜んでいる。……微妙に距離が近い!打ち解けたとは言っても、美人が隣にいるのは照れるんだよな。

 そんな気持ちを隠しつつ、俺は再び画面に意識を向ける。2つ目のスキルは【サングラス生成】だ。


「もう1つはサングラス生成?ルイーナ、これは何か特殊なサングラスなのか?」


「いえ、ただのサングラスです。ソルトさんに絶対似合うと思って追加しました」


「あ、そう」


 そういやこう言う女神だよね君は。うん、冷静になれた。ただのグラサンを勇者のスキルにしようってやつはきっと他にいないよ。


「よ、良かったらこの場でサングラスを掛けてみませんか!?……ふへへ、じゅるり」


 よだれと一緒に欲望も出てるなこれ。何とか理由を付けてやんわり断らないと、多分俺が色々と危ない。


「ここは暗いし、それを掛けるなら外に出てからの方が良いんじゃないか?」


「それもそうですね。残念ですが、ここのダンジョンから脱出するまではお預けです……」


 問題を先延ばししただけな気もするが、一応回避に成功したようだ。がっかりしているルイーナには悪いが、今の君にサングラスを掛けた姿は見せちゃいけない気がするんだ。許してくれ。


「で、では!まだウォッシュルーム召喚は試されてませんよね?どうです?身だしなみを整えるためにも、ここで一発どうでしょう?」


 どうした女神。一発ってなんだ?ウォッシュルームってのは洗面台の事だから変な事はしないからな?おい鼻息荒いしちょっと目が怖いぞ?


「じゃ、じゃあ試してみようか。そろそろ頭も剃っておかないといけないし」


 このスキルは試してみたかったのは確かだし、スキンヘッドを維持するためには毎日の頭のメンテナンスが不可欠だ。決してスキンヘッドマニアの圧に負けた訳ではない。この際変なのは無視して召喚してみ──


「やったぁぁー!!推しが頭を剃△■※〇◆~!!!」


 何言ってるか全然分かんねえ!もう聞こえないふりするわ!


「行くぞ。【ウォッシュルーム召喚】!」


 これ以上女神の声邪悪な声に耳を傾ける事無く、俺はそのスキル名を唱える。すると目の前に、俺の世界で良く目にしたタイプの片開きの扉が1つ出現した。


「ん?ウォッシュルームを召喚したはずなのに扉だけ?」


 裏を覗いてもやはり扉だけしかない。部屋のようなものが召喚されると思っていたので拍子抜けである。


「それは扉を開けた向こう側が特殊な空間に通じています。まずはその中に入ってみましょう」


「それで扉だけなのか。うおっ眩し!」


 扉を開いてみると、ドア枠の中は光で満たされていた。


「この先がウォッシュルームか。よし、入ってみよう」


 そのままルイーナの説明に従って、俺は光の中へと進む。転生前の俺なら「え、そんな事ある?」とか言ってビビッて入るのを躊躇していただろう。でも今なら大抵の事は驚いたりはしない。さて、どんな部屋が俺達を待っているのか楽しみ──


「ウォッシュルームへようこそマスター。当機はあなたの頭を剃る為に創造された電動シェーバーです。以後よろしくお願い致します。」


「え、そんな事ある?」


 光の先に広がった部屋には、喋る電動シェーバーが宙に浮いていた。

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