第2話 自称ヒロインがなんかおかしい
いやいやいやヒロインって女神本人!?それなら失礼に当たるといけないし、一応女神だと仮定して接しよう。
「あの、女神様?なんでここにいらっしゃるんですか?」
「え?な、何を言っているんですか?私は女神様から派遣された道案内役でして」
物凄く焦り出したぞこの女神。とりあえずもう一つ指摘して攻めてみよう。
「ステータスの職業、女神ってなってますけど」
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ルイーナ ♀ 種族:神
職業:女神Lv1
HP 1/99999
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「あ、やっべ。……バレてしまっては仕方がありませんね。私は女神ルイーナ。今後勇者様のサポートをさせて頂きます」
今やっべ。って言いました?なんなのこいつ。てかなんで瀕死なの?モンスターに襲われたのか?でも追われている感じは無かったし、もしかしてさっき俺とぶつかって?
「すみません。女神様はかなりダメージを受けているみたいなんですが、俺とぶつかったせいでしょうか?」
「あれ?なんで私はこんなにダメージを……まさかダイヤヘッドの反射?でもあの追加効果は敵モンスターにしか発動しないはず」
え、女神ってモンスター扱いなの?と言う事は俺はもう少しで女神を消し飛ばすところだったのか?
「女神様。俺が悪いんですが、今モンスターに襲われたら大変です。ご自分で回復とかって出来たりしますか?」
瀕死の女神が今攻撃を受けたらまずい。だが俺はアイテムも何も持っていないから、女神自身が回復スキルなどを使える事に期待するしかないだろう。
「あっ、そうですね!ちょっと待ってて下さい。【ヒール】!」
女神がスキルを唱えると、その金色の髪が光り始める。そしてしばらくすると全身が淡い光に包まれた。その何とも幻想的な光景を眺めていると、ステータスのHPが回復していくのが見て取れた。
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ルイーナ HP 1→120/99999
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「ふうっ。今の私ではこのくらいしか回復出来ませんが、これで安心でしょう」
女神の最大HP多すぎるから微妙な回復量に見えるが大丈夫らしい。ともかくこれで落ち着いて話が出来そうだ。
「良かった。俺のせいで女神様に何かあったらどうしようかと」
「いえいえ、ぶつかって憧れてたシチュをやろうとした私も悪いので」
「え?」
「なんでもありません!なぜ私がこの世界からモンスターとして認識されているのかは分かりませんが、解決方法はあります。勇者様とパーティーを組ませてもらえれば味方扱いにはなりますので、もし良ければ私と組んで頂けますか?」
上目遣いで俺に尋ねてくる女神。なんか気になる事も言っていた気がするが、パーティーか!かなり冒険っぽいその言葉に、俺は胸を高鳴らせた。もちろん断る理由は無い。
「もちろんです!」
「わああ!ありがとうございます!ふふふっ、やったぁ!」
女神はとても喜んでいるようだ。……でもなんか喜び過ぎじゃないか?
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ガイドテキスト
『ルイーナとパーティーを組みました』
□パーティーメンバー
・ソルト Lv15 ・ルイーナ Lv1
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「不束者ですがよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします。女神様」
お互いの同意によって俺と女神のパーティーが成立し、その事がガイドテキストで表示された。言動や様子がおかしい時もあるが、こんな綺麗な女性と一緒に旅が出来るなんて中々ラッキーなのではないだろうか。そう思うとこれからの旅への期待感が湧いて来る。
「ところで勇者様。せっかくパーティーを組めましたし、私の事はルイーナと呼んで下さい。私が女神だと言う事を人々に明かすわけにはいきませんし、様も敬語も今後は不要です」
女神が少し顔を赤く染めながら、こちらへの要求を口にする。うん、ルイーナの希望とあれば仕方ない!そうさせて貰おう。
「分かったよルイーナ。あとそれなら俺の事も様付けしなくて良いよ。なんて言うかその勇者様って言うのはむず痒いんだよね」
「分かりました……ソルトさん!」
あ、なんか余計にむず痒くなった気がする。
「そ、そう言えばルイーナに聞きたいんだけど、スキンヘッダーって何かな?あとスキル効果100億倍ってこれで合ってるの?」
俺はこの気分を誤魔化したくて、気になっていた事を唐突に質問する事にした。
「スキンヘッダーですか?私が考えた最強の職業ですけど、もしかしてスキル効果100兆倍の方が良かったでしょうか?」
こいつ正気か?
「いや大丈夫!100億倍で良い感じだから!」
「そうですか!お気に召してもらえたなら嬉しいです!ソルトさんにはこんな職業が相応しいんじゃないかって、常日頃あなたの生活をのぞき見……見守りながら妄想をしていたんです」
「ルイーナが俺を見守ってたなんて、一体どうしてなんだ?」
転生前の俺は何の変哲もないただの一般人だ。しかも世界を管理する女神が、わざわざ見守る対象としては不釣り合いな気がする。
「世界を管理する女神は孤独なんです。管理すると言っても、私が直接干渉する事は基本的には許されていません。それにこの世界の住人は何故か皆毛根が強靭過ぎて、私が大好きなスキンヘッドと言う概念すら無いのです。ですが別の世界を暇つぶしに覗いている時に、私はソルトさんの存在を知りました」
つまりここの人達はみんなフサフサで、スキンヘッドがいないから俺を見ていたと?この世界は俺の敵か?……いや落ち着け、それよりも気になる事がある。
「俺の世界なら他にもスキンヘッドはいたと思うけど、どうして俺だったの?」
あっちの世界ならスキンヘッドの人は俺以外にもいたはずだ。なぜそこまで俺の事を?
「何を言ってるんですか!ソルトさんのスキンヘッドは私の理想なんです!私にはあなたしかいません!女神として世界を管理する傍らで、推しの生活をずっと垂れ流しで映し出す事で私は毎日を乗り越えて来たんです!ああ、あの頭を剃るお姿を思い返すだけで脳が回復していきます……!」
「何言ってるのはこっちのセリフだけど?話に付いて行けないんだけど?」
これは俺を見守ってたって言うより……そもそもずっと?24時間って事だよな。え、剃ってる姿って俺毎日風呂場で頭を剃ってたんだけどまじか?だいぶ恥ずかしいぞ!?
「最近の手慣れて来た様子も良いのですが、スキンヘッドにしたての頃の試行錯誤している様子も中々味わい深くて時々見返してしまいますね。剃り終わった後に頭を触って確認する姿も──」
止まんねえなこの
「それからあなたはマッチングアプリに登録しましたね?別の世界ならこっそりお邪魔出来るのでこれは推しに会えるチャンスと思い、私もあの世界のアプリに登録してあの日あなたと会う約束をしたのです。……それがこんな事になってしまうなんて。ごめんなさい、私が会おうとしたからソルトさんはあそこで……」
ルイーナの声のトーンが徐々に落ちていく。俺が命を落とした原因が自分にあると思っているようだ。だが俺があの場にいたからこそ、子供を助けられたのだ。仮にも女神であるルイーナにそれ以上の事は言わせてはいけないだろう。
「いや、良いんだよ。それに子供の命は助かったんだろ?」
「はい!ソルトさんは立派でした……!」
涙ぐみながらも笑顔を見せるルイーナ。かなりおかしな事を言う女神だけど、こうして俺がした事を見ていてくれたと言うのは悪い気はしない。
「でもルイーナ。だからって俺をオリジナル職業で転生させて、勇者に仕立て上げるのは流石にまずかったんじゃないか?」
いくらなんでも女神の好みってだけで、自分の世界にチートみたいな能力で転生させるのはやり過ぎなんじゃないだろうか。
「そこは大丈夫です。だって私が
無敵かな?
「ですが少し事情がありまして、これ以上の強い干渉は今の私には出来なくなりました。なのでこの魔王を倒す旅は、今ある力で進んでいかなくてはなりません。それでも私と一緒に、この世界を救って頂けますか?」
少し不安げに俺に確認をするルイーナ。少し前まで暴走して喋っていたと言うのに、その綺麗な顔でそんな風に聞いて来るのはずるい。
「もちろん!一緒に救おう!それにもう転生しちゃってるんだからやるしかないだろ?」
正直安請け合いだとは思う。それでも俺は引き受ける。例え俺の頭の形に惹かれたと言う理由でも、ここまで必要としてくれているのだからそれに応えたい。
「ありがとうございます!!改めましてよろしくお願いしますね!ソルトさん!」
「うん、よろしくルイーナ!」
そう言って笑顔を見せるルイーナ。俺はこの世界の事はまだ良く知らないけれど、彼女のためなら頑張ってみよう。そう思える素敵な笑顔だった。
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