第61話 淫乱メイドの倉片さん

 いつものメイド喫茶で飯を済ませた。

 その後はラブホへ向かう。

 今日は、倉片さんとはじめて入った思い出深いラブホへ。

 あそこならコスプレの衣装もあるからな。


「もうすぐだ」

「あ~、はじめて行ったところね」


 察する倉片さんは、頬を赤くしていた。思えば“立ちんぼ”から始まったんだよな。

 あの奇跡の出会いによって今がある。

 大変なこともたくさんあったけど――。


「あの頃は数万円を倉片さんに渡していたっけな」

「それが今じゃ、数千万円から億の売り上げだもんね~」


 当時の俺はスキマバイトもしていたし、多数の仕事も掛け持ちしていた。

 そして、織田のボロアパートを拠点にもしていた。アイツとも色々あったが、事件後の今となっては思い出したくないかな。


「まあ、伊勢崎さんとの出会いも大きいな」

「もともとはコンビニの店長だったんだっけ?」


「そうなんだよね」


 スキマバイトでたまたまコンビニを選択した俺。その時の店長が伊勢崎さんだった。しかもキャバ嬢でもあった。

 だが、織田と結託してエロ動画を投稿・配信するという会社を立ち上げた。とんでもない人だよ、あの人は。



「なんだか伊勢崎さんって謎が多いよね」

「そうでもないさ」



 最近は伊勢崎さんが静岡出身であり、俺と同じように短期・スキマバイトをしまくっていた苦労人であることが判明。

 一時はパチンコや競艇などギャンブルで借金を背負い――キャバ嬢の道に。

 いつしか借金はゼロに。

 今年になって上京してコンビニの店長をしていたらしい。



「――へえ、知らなかった」

「まあ、借金は作らない方がいいな」

「……うん、そうだね」



 倉片さんも会社を作って失敗している過去がある。だから今、苦虫を噛み潰したような表情をしているんだろう。

 蒸し返すつもりはなかったんだが、教訓としてな。


 人間、失敗して学ぶものさ。


「という俺も“リボ払い”でやらかしたことあるし」

「あー! それよく聞くよね。危ないんだっけ」


 あんなモン作ったヤツをブン殴ってやりたいね、俺は。

 リボ払いは便利に見えて、実は悪魔的な仕組みなのだ。

 金利が高いし、知らぬうちに手数料が増えて永遠に支払いが終わらない。まさに俺はその無限ループにハマり、返済が続いてしまっていたのだ。


 気づいたときには、とんでもない額になっている場合がある。


 かといって返さなきゃ一括請求されるし、いわゆるブラックになっちまう。下手すりゃ裁判沙汰にも。結局、債権回収会社へ移って嫌でも(交渉して分割払いでもいいので)返さなきゃいけないんだが……。


「だから倉片さん、リボ払いだけは絶対にダメだ。クレカは一括払いだぞ」

「う、うん。わたし、普段はQR決済のPoyPoyしか使わないから……」

「それならいいか」



 そんな話をしながらも、ラブホに到着。

 懐かしい場所だ。


 受付を済ませ、通路を歩く。



「なんだか懐かしいね」

「ああ、変な感じだ。……おぉ、しかも偶然にも同じ部屋だ」

「なんだかラッキー(?)だね」


 扉を開け、部屋の中へ。

 以前と変わらない広い空間が俺たちを出迎えてくれた。

 やっぱり、ベッドはダブルサイズ。

 天井も高くて開放的。



「やっぱり、ここだよな~」

「妙に落ち着くね」


 けれど、倉片さんは恥ずかしそうにモジモジしていた。

 スカートの前で忙しなく指を動かすところを見ると、緊張しているようだ。


 ――ていうか、アレ。


 よく見ると倉片さんのあしのところ、なんか汗のようなそうでもないようなモノを垂らしているような。うん、多分これは50%の確率で汗だな。これをシュレディンガーの汗と命名しよう。



「倉片さん……?」

「……え。きゃ! こ、これは……そのぅ」



 まさか、そんなに期待してたのか!?

 マジかよ。嬉しいじゃないか!


 俺はそのまま倉片さんをベッドに押し倒した。



「もう我慢できない」

「え、ちょ……お風呂入ってから……汚いから」

「倉片さんに汚いところなんてないさ」

「で、でも。さっきお手洗いいったから…………」


 顔を真っ赤にする倉片さん。超可愛い。

 大丈夫。俺はどんな倉片さんも受け入れる。ていうか、汚れている方が興奮する……!

 俺は、倉片さんのスカートの中に手を伸ばしていく。



 ◆



 最初は恋人として愛しまくった。

 後半は仕事に切り替え、メイドのコスプレをしてもらい――長時間撮影。


 やはり最初に来たラブホということもあり、かなりはかどってしまった。


 ベッドの上で大の字になって倒れている倉片さんは、ずっと息を乱していた。



「淫乱メイドだね、倉片さん」

「……も、もう無理です。ご主人様ぁ……」


 そうだな、もう五時間はヤりっぱなしだ。そろそろ休憩するか。


「解かった。少しだけ休もう」

「は……はい」


 と、見せかけて俺はまた倉片さんを愛し続けた。

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