第56話 大ピンチ!! 全裸になってしまった倉片さん!!

「キョウく~ん!」


 と、俺の名を叫ぶ女性の声がした。これは倉片さんではない――ん?


 振り向くとそこには大人の色気をかもし出す、とんでもねぇマイクロビキニをつける伊勢崎さんの姿があった。



 うぉい!?



 なんだその超大胆な水着!

 もはや水着と定義していいものか悩むぞ、それは。

 てか、警察の判断によってはアウトかもしれん!

 面積少なすぎるだろッ。



「伊勢崎さん、なぜ江の島にいるか知りませんが助かりました!」

「ん? その後ろにいるの倉片さんだよね?」


「そうです。倉片さん、ビキニを流されてしまって……」

「そういうことか~! じゃ、タオルを持ってきてあげるよー」



 おぉ、まさに救いの手! 神の手!

 おかげで倉片さんを救えそうだぞ。


 再び浜に戻る伊勢崎さん。しかし、そのエロ水着のせいか……ナンパされまくり。ちょ、カラダ目当ての男共がっ!!


 おかげで伊勢崎さんは足止めされ、軽くパニックに陥っていた。


 ダメじゃん!!



「ど、どうしようか……」



 俺の背後で困惑する倉片さんは、両手で胸を隠す。むむ……このまま行くしかないか。伊勢崎さんに注目が集まっている今なら、こっちは目立ちにくいはず。



「胸は腕で隠すしかない」

「ご、ごめん……下も流されちゃった」


「――は?」



 視線を落とすと海水でセルフモザイクになっているが、確かに身に着けていなかった。


 なん……だと!?



 ということは隠せても『胸』だけ。

 下半身は丸見えになってしまう。

 現在、伊勢崎さんに群がっている男共。しかし、倉片さんが浜に上がればその瞬間には、こっちへ軍勢が押し寄せてくるだろう。


 その光景が目に浮かぶようだった。

 となれば、全裸の倉片さんをさらしてしまうことになる。……それだけは絶対に断固として阻止そしせねばならんッ。



「ごめんねえ……。最近せちゃって……」

「そうなの?」

「うん、激しい運動しているせいかな~? ほら、よく……えっち……するし」



 と、倉片さんは下を向きながら恥ずかしそうに言った。



 …………あ。



 俺のせいだ~~~~~~!!



 昨日も三回も激しい運動をヤっちまったし、そりゃカロリーの消費も激しいし体重落ちるわな。ほぼ一日腰を動かしているからなぁ……。あんなポーズやこんなポーズもするから、結構体力使ってるもんなぁ。



 ――そうか、それでウエストが変わってしまったんだ。

 今日買った水着はサイズが変わる前の数値。だから、強い波によってポロリと取れてしまったんだ。納得だぜ。



「すまん。でも……それだけ愛しているんだよ」

「う、うん。わたしもキョウくんのこと……好きだから、いいよ。……好き。ちょー好き」



 言葉を緩慢かんまんに、壊さないように繊細せんさいな口調で好きを連発する倉片さんは俺に抱きついてきた。



「――――ッ!!」



 は、裸のままで……ッ!


 やばいやばいやばいやばいやばい。



 俺の『天上天下唯我独尊ツァーリボンバ』があああああああ………!!



 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!



 ――って、冷静になれよ俺。


 こんなところで爆発させている場合かッ!



「ご、ごめんね。キョウくん」

「大丈夫だ。浜へ戻ろう」

「でも」


「そこにいてくれ。倉片さんが深く潜っている間にバスタオルをとってくる」

「……なるほどね! キョウくん天才っ!」



 最初からこうすればよかったんだよな。これで万事解決だ。

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