第55話 消えた水着、裸の倉片さんを守れ!!

【江の島】


 海水浴場から見える大きな島。

 あのブロッコリーを圧し潰したみたいなのが『江の島』かぁ。


 あれから次の日。すぐに電車に乗って揺られること約一時間半で到着した。



「すげぇとこまで来たな」

「ここまでデートで来られるとは思わなかったよ」



 電車でそれほど掛からないしな。静かなところを求めて検索したら『江の島』が目に入った。

 近いというのもあったし、なにより俺自身が海を求めていた。

 最近静かな場所へ行ってなかったしな。


 それに、七月になった。

 ちょうど海開きとなり泳げるようにもなった。

 つまり、倉片さんの水着を拝めるというワケだ。


 ここへ来る前に購入したし、準備はバッチリだ。



「泳ぐかい?」

「うん! 今日は天気も良いし、ゆっくり遊ぼう」


 時間はまだ午前。

 少し泳いで、それからあの島を観光するのもアリだろう。


 さっそく着替えて、俺は浜辺ビーチに座り倉片さんを待つ。どんな水着なんだろうか。

 購入する時、秘密と言われて見せて貰えなかったんだよな。


 楽しみに待っていると倉片さんが現れた。



「おぉ……!」

「お待たせ!」



 セクシー系の黒ビキニ!

 かなり大人っぽいというか、色っぽい。感動的すぎて素晴らしい。



「か、可愛いよ」

「ありがと」


 照れくさそうにする倉片さん。

 普段、裸しか見ないから分からなかったが、水着は水着で素晴らしいな。なんというか、引き締まったボディがたまらんな。……いかん、ムラムラしてきた。


 視線を海に向け、俺は自制した。

 こんなところで“偉大なる不動明王アンチマテリアルライフル”はマズい。



「お、泳ごうか!」

「そうだね……」



 なんだか倉片さんは居心地悪そうだった。



「どうした?」

「いや~…視線が多くって」



 気づけば周囲にいる男たちの視線を総ざらいしていた。

 おいおい、そんな目で俺の倉片さんを見るんじゃねえ! ここは急いで海へ入っておくべきだな。


 倉片さんの腕を優しく引っ張り、俺は海の方向へ歩いていく。


 海へ入って腰に浸かるくらいの深さまで向かった。



「お~、気持ちいなぁ」

「波も穏やかで丁度いいね」



 ここからどうしたものか。水を浴びせ合うか。それともゆっくりと――『バシャァ!』――と、油断していると高波に襲われた。


 ぬおッ!


 なかなかの水圧に足がよろけた。


 倉片さんは……?



「大丈夫?」

「う、うん……あれ」


「どうした?」

「水着取れちゃった」



 よく見ると倉片さんの胸を覆っているはずの水着が消失していた。


 ぬわぁにぃ!?


 まずいまずいまずい!!


 あの男共に倉片さんの神秘をさらけ出すことになってしまう。ふざけんな! 倉片さんの全てを見ていいのは俺だけだ。


 ひとまず、俺は倉片さんを背中で守ることにした。



「俺の身で隠すんだ」

「あ、ありがと。でも、水着どこ行っちゃったんだろ……」



 さっきの高波に流されたんだろうけど、うーん……こう広い海では探しようがない。つか、このまま浜に上がったら大変なことに。


 チクショウ。


 どうすりゃいいッ!



 考えろ、俺。考えまくれ俺。



 なにか方法は――!



 む……?

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