第42話 ラブホ事件

 ある意味、はじめて『立ちんぼ』以外で、まともにラブホへ行くかもしれない。

 真っ当な動機で、しかも恋人となった倉片さんと。

 なんの違和感もない、自然な流れではある。


 夜道を歩いてスマホのナビを頼りに、ラブホへ向かう。


 目的地に到着。そこはマトモなラブホであった。そういえば、以前はSMだったからなぁ……。特殊すぎたな。


 しかも、今回は仕事抜き。


 愛し合う為に来てしまった。



「なんだか久しぶりな気分だよ」

「わたしもそう思った。仕事って意識しちゃうと作業感あったよね~」

「ああ、カメラをどうしても意識しなきゃだからね」


「でも今日はカメラ抜きだからね!」



 その通り。荷物も財布とスマホだけだ。

 余計なものは一切ない。



 受付を済ませ、指定の部屋へ向かった。



 通路を歩いていると奥から、二人組の……男!?



 え…………?



 ラブホに男二人とか、それって……!



「……倉片さん」

「う、うん。あの奥から来る二人組、男同士だよね」



 その二人組はしかも、こっちを見ていた。

 な、なんなんだ?


 接近してくると、片方が俺の前に立った。……え?



「てめ~がキョウか!」


「な、なんです?」


「外国人の女がお前をボコったら金くれるってーからよぉ!」



 外国人の女!?

 ま、まさか織田が闇バイトに雇ったのか、コイツ等!


 まさか、こんなオマケをつけてくるとは……あの女!



「それは金髪のボーイッシュな女か?」

「そうだ。百万くれるっつーからよ。てことだ、ボコる」



 いきなり拳を振り上げる男。やばいってーの。


 俺は直ぐに背を向け、倉片さんの手を掴んだ。逃げるが勝ちだ!


 つか、二人を相手にできるかっ。



 しかし、走って追い付かれた。



 くそう……!



『プシュー……!!』



 だが、その時だった。男二人がいきなり倒れてのた打ち回っていた。




「「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」」




 倉片さんが『催涙スプレー』をぶっかけてくれていた! よかった! ナイス!




「助かったよ、倉片さん!」

「よかったー! お守りに買ってもらった催涙スプレーが役に立ったよ」



 今の内にラブホを脱出。別のホテルへ向かうことにした。


 くそう、まさかラブホに刺客がいるとは思わないじゃないか!

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