第38話 ロリ巨乳系インフルエンサー

 護身用の武器は購入完了した。

 これで俺だけでなく、倉片さんも自衛できるだろう。


 職場兼寮へ帰宅し、次の日に備えた。




 ――さて、織田を探さねばならない。


 しかし、アテもなければ情報もなにもない。これでは発見どころか髪の毛一本だって見つけられない。

 知り合いの刑事などいないし、警察が情報提供してくれるとは思えん。


 だが、まてよ。


 俺と織田には“共通点”がある。



 大学、それにボロアパート。



 そうだな、久しぶりに大学へ通ってみるのもありだろうか。知り合いに聞けば織田の情報を知っているヤツも何人かいるかもしれない。

 まずは大学だ。



 電車に乗り、大学へ向かう。

 三駅乗り継ぎ駅を降りて徒歩で向かう。大学が見えてきた。久しぶりだなぁ……。


 ずいぶんとサボってしまった。二週間――いや、三週間は来ていない。もはや、単位が足りないかもしれない。だけど、もうどうでもいい。

 早くも就職してしまったようなものだし、倉片さんと伊勢崎さんがいれば稼げるさ。


 中へ入っていく。見知ったような顔とすれ違っていく。でも、目的の人物ではない。

 これでも俺は文科系サークルに入っていた。そこで織田と出会い、意気投合いきとうごうした。それが約半年前だ。


 大学内を歩いて目的の部屋へ向かう。

 写真・動画サークルだ。


 もとから映像関係をこころざしていたので、そこで最低限のことは学んでいた。織田にも少しだけ教えてもらったことがった。

 でもアレは違う。

 すべてはウソ偽りだった。あの純真じゅんしん無垢むくな表情の下には悪魔が隠れひそんでいたのだ。


 外国人でフランクな性格だったから見抜けるはずがねえ。


 サークルに到着して中へ。

 この時間なら誰かいるはずだ。


 扉を開けると、部屋の中に――。



「ん~? あ、キョウくん!」



 ひとりポツンと机に向かう小向こむかいさんがいた。小柄な女性ながらも、最近流行はやりの『テックトック』を拠点に活動しているインフルエンサーだ。


 ライブ配信でNo.1の実績を持ち、常に維持いじしているトンデモ有名人だ。



 ――そりゃ、そうだよな。



 こんな中学生のように背が小さくて巨乳なんだから。合法ロリだとかロリ巨乳だとか言われたい放題だ。

 で、この銀河系もびっくりのうるわしい容姿。

 守りたくなるようなオーラを発しているものだから、自然と男が寄ってくるパッシブスキル持ち。



「お疲れ様、小向さん」

「久しぶりだねー! ていうか、サボりすぎじゃない!?」


「ごめん。俺、ちょっと就職しまして」



 そう報告すると小向さんは目を丸くしていた。

 そうだな、大学一年生で早すぎるよな。しかも半年で。



「はや! どこに入ったの?」



 大胆にはだけている谷間を強調しながら、小向さんは言った。



「AVを作る会社だよ」

「へ……。それってアニマルじゃない方!?」


「うん。アニマルではない方」


「……わぁ」



 こりゃ引かれたかな。どのみち幽霊部員みたいなものだから、構わんけど。と、思いきや小向さんは目をオリオン大星雲のようにキラキラさせていた。



「まさか興味あるの?」

「いや~、すごいなって。そういう会社って本当に実在するんだねー!」

「そりゃ、世の中にはえっちな動画が無限にあるからね。それこそ宇宙にある星のように数えきれないほど」


「へー! あたし、キョウくんならいいけどなー!」

「はいっ!?」



 突然、凄いことを言い出す小向さん。なんでそうなるぅ!


「だって織田ちゃんのこと面倒見てくれたし、ありがとね」

「ああ、その織田について聞きたかったんだ!」




 俺はこれまでのことを詳しく丁寧に話した。

 すると、小向さんは驚いていた。


 まさか織田が『詐欺師』であるとは思わなかったようだ。俺もだけどな。



「……そんな。でもそんなことするようなコには見えなかったけど」

「俺もそう思った。でも、現実は違った。俺の職場も倉片さんも被害を受けている。なんとか見つけて捕まえたい。なにか知らないか?」



 そう聞くと小向さんは、なにか思い当たることがあるようだった。



「うん、実はね……。昨日、織田ちゃん大学を退学したんだよね」

「え?」


「だからまだ都内にいるんじゃないかな」


「マジっすか!」

「うん。なんかまだやることがあるって言ってた。ここにも来たんだよね」



 こりゃ有力な情報だぞ。織田はまだ日本どころか都内にいる。ならば、捕まえられる可能性もあるということだ。

 しかし、まだやることがある? なにを?

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