第35話 浮かび上がる真実
まさかのまさか両想いだったとは。
これで正式に俺と倉片さんは付き合うことになった――。
職場のマンション(寮も兼ねている)へ帰宅。倉片さん共々無事に帰還した。
そういえば、織田はどうなった?
あれから伊勢崎さんから連絡はないし、警察の気配もなかった。
念のためと俺は別室へ向かい、伊勢崎さんの様子を見に行った。
撮影部屋の扉をノック。
……しかし、これといった反応はなかった。
出かけているのか?
少し心配になり、俺は扉を開けた。
部屋の中には伊勢崎さんの姿はなかった。……アレ、どこへ行ったんだ?
まあいいか、それよりも眠い。昨晩はそれほど眠れていないし、睡眠時間が削られているからなぁ。
倉片さんと共に編集部屋で仮眠を取ることにした。
時計を見ると三時間経過していた。……やっべ、寝すぎた。
昼になっていた。
倉片さんはまだ眠っている。
正直眺めていたいが、後回しだ。
織田がどうなったのか、いい加減に気になる。
それに伊勢崎さんの姿も見当たらなかった。
探さねばならない。
編集部屋を飛び出し、改めて撮影部屋へ向かう。
今度こそいるといいのだが。
ノックすると今度は反応があった。なんだか幽霊みたいな、か
「どうぞ……」
「入ります」
扉を開けて中へ。
そこには疲れ切った顔の伊勢崎さんの姿があった。
「どうしたんです?」
「……警察署行ってきた」
「なるほど。で、織田は見つかったんですか?」
そう聞くと伊勢崎さんは顔を青くしていた。なんだ、その反応。まるで悪いニュースがあるような感じじゃないか。
――その通りだった。
「おだっち……
「へ……? なにを、言って、いるんですか……?」
突然のことに俺の
あんな美人なアメリカ人がそんなことするわけねえ!
「ホントだよ。しかも、彼女はアメリカ人ではなくてイタリア人ね」
「は?」
いやだって、まて……アイツは俺にアパートを貸してくれたぞ。同じ大学に通う知り合いだった。そんなヤツが詐欺師だって? ありえないだろ。
「イタリアンマフィアのボスの娘なんだってさ。本当の名前は『ラッキー』って言うそう」
「は!? はぁ!?」
「警察が全部教えてくれた」
どうやら、俺がお邪魔していたアパートは元々は誰かが住んでいた部屋らしく……あの織田が取り上げたものらしい。あの部屋からどこかに働きに出ていたようだ。
それが詐欺の現場のようだ。
だが、なぜ俺はなにも盗られなかった?
気づかないうちに何か奪われていたか?
いや、覚えはまったくない。織田なりの
それとも、これから判明するのか。
「会社に損害はあるんです?」
「うん。売上金、全部海外の銀行に送金されていた。彼女に任せていたから……」
織田に財務管理を任せていたみたいだ。もともと二人で始めた事業らしいから、自然な流れだったようだな。
売上金の全てを根こそぎ持っていかれ、伊勢崎さんも深いショックを受けていた。
俺も自身もまだ現実を受け入れられないというか、信じられない気持ちでいっぱいだった。
どうしてた。どうしてなんだ、織田よ……。
「織田はまだ国内にいるんですかね?」
「分からない。もしかしたら、もう海外へ高跳びしてるかもね」
「…………」
残念そうに肩を落とす伊勢崎さん。この世の終わりのような顔をしていた。
そして、更に最悪なニュースが耳に入った。
「そういえば、警察に詳しく聞いたんだけどね。投資詐欺だとか闇バイトだとか、そういう方面の犯罪にも手を染めていたみたい」
投資詐欺……?
闇バイトだって……?
どこかで聞き覚えがある。
…………っ!
そうだ、俺は倉片さんからそのことを聞いたじゃないか!
まさか倉片さんを
織田――いや、あのラッキーとかいうイタリア人か!!
許せねえッッ!!
なんとかして見つけ出してやる。この俺が詐欺師をぶっ潰してやる。
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