第28話 その理由とは
報酬の件はあとで教えてもらえるはず。
今日はもう時間的にも
というか、もう住み込みでいいのかも。
伊勢崎さんは「好きに使ってどうぞ」と歓迎してくれた。なので、俺は
倉片さんもほぼ同じで、家に帰る
空き部屋だった隣の部屋を使い、そこで宿泊することも多くなっていた。一緒にいる方が楽しいし、撮影も楽だからと嬉しいことを言ってくれた。
「さて、そろそろ飯にしよか」
「
最近、外食へ行くことが多かった。俺のおごりで。
倉片さんと一緒にデート感覚でファミレスや牛丼屋、うどんそば屋、ラーメン屋など近所を
「美味そうなカレー屋を発見した。そこへ向かう」
「いいね! わたし、カレーが大好きなんだ」
マジか。そりゃ好都合だ。これから行くカレー屋は専門店でインド人が運営している本場の味が楽しめるお店だ。
評価も高くて期待できる。
伊勢崎さんに一報だけは入れ、職場を後にした。
徒歩で駅へ向かい、電車に乗り三駅揺られていく。到着して駅を出て徒歩で向かう。近所にあるようだった。
スマホのナビを頼りに『グリーンスマイル』というお店へ向かう。そういえば、似たようなタイトルの映画があったような……。あれは無関係か。
お店に到着。そこはコンビニ店のような箱でなかなか広かった。てか、コンビニの跡地を利用しているような雰囲気だな。
「ここらしい」
「へえ、グリーンスマイルって言うんだね」
「評価は高いよ。きっと美味いさ」
「うん、楽しみ!」
目を星のように輝かせ、期待に胸を膨らます倉片さん。ここ最近の中では一番反応が良い。俺自身も楽しみであった。
インド人がやっているカレー店とか初めて入るからな。
中へ入ると割と普通の喫茶店風な内装だった。ほ~、こりゃシッカリしているな。
木製の机と椅子がいたるところにあり、結構広かった。二十名は余裕だろうか。
案内を受けて奥の机へ。
すでに他のお客さんがカレーを楽しんでいた。わぁ~、良い匂いだ。
席に座り、さっそくメニューを手にする。
「ほー、本場のカレーだ」
「す、すご。ちゃんとナンなんだね」
インドだからナンなんだろうけど、てかナンとか初めて食う気がする。セットがあるようなので、それにした。
織田のようにカタコトのインド人に注文をして、しばらく待つことに。
その間、俺は倉片さんに気になっていることを話した。
「あ、あのさ」
「うん?」
そう、俺はずっと前から倉片さんのある事に関して聞きたかったことがある。今こそ聞くべきだと判断した。
「倉片さん、金に困ってるんだよな?」
「……まあね」
「その理由を教えて欲しい。俺で良ければ力になれると思うんだ。ここ一か月、肉体的にも精神的にもお互いを支える関係になってるし、隠し事はなるべく減らしたい」
そう本音を伝えると倉片さんは「そうだね」と、ちょっと諦め風にため息を吐いた。きっと、本当は語りたくないのだろう。でも、ようやく重い腰をあげて真実を話してくれた。
「理由は三つあるの」
「三つも!?」
「三番目からいこうかな」
「お、おう。頼む」
身構えていると倉片さんは、まず三番目の理由を話してくれた。
「結婚資金」
「え…………?」
「結婚資金を貯めているの」
「結婚資金だって!?」
「だって、いつか結婚したいじゃん。その相手がキョウくんの可能性が高そうだけどね」
いたずらっ子のように微笑む倉片さん。その眼は割とマジに見えた。って、そりゃ嬉しすぎるって!
そうだったのか、結婚を考えているんだな。そのためにお金を貯めているんだ。なんだか立派なだなと俺は思った。てか、相手が俺の可能性が高いって、もう幸せすぎて泣きそう。
よーし、二番目と一番目の
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