第25話 全裸で有料生配信をする女上司

 満足して店を出た俺は、幸福感こうふくかんつつまれていた。

 なんて幸せな時間を過ごせたのだろう。

 テスト撮影して、更にまた倉片さんの大胆だいたんな姿を見られた。あんな世界があるのかと今夜初めて知ったな。

 だけど、あのままもいけない。


 明日、説得をこころみる。そう決意した。



 ◆



 自宅のアパートに帰って早々、俺は寝落ちした。疲労が全身を押しつぶし、睡魔すいまおそわれたのであっという間に夢の世界に。



 次の日の朝を迎え、耳をつんざくようなアラームによって目覚めた。

 今日も大学サボって職場へ行かねば。

 きっと倉片さんも来るだろうし。


 それに、編集スキルをもっと上達させねばならない。伊勢崎さんや織田の為にもがんばらねば。なによりも金の為に!


 いつも以上にやる気を上げ、俺は昼頃になって家を出た。出勤時間が決まっていないし、ならば好きな時間で出るッ!

 本当にこんなんでいいのか不安になるが、これで月収三十万円なら楽で助かる。


 職場であるマンションへ到着。

 セキュリティを突破して職場へ。

 廊下ろうかを歩いて向かうと妙に静かだった。この奥の部屋が確か伊勢崎さんの撮影部屋のはず。挨拶あいさつもしたいし、入るか。


 ノックするものの――反応なし。


 うーん、このまま黙って編集部屋にいるのもなんだかなぁと思った。ので、俺はそのまま撮影部屋に入った。

 扉を開けると……そこには。



「キョウくん!?」

「え……伊勢崎さん、なにを……」



 伊勢崎さんは裸だった。しかし、よ~く見ると危険な部分は上手く隠していた。というか、意図的に隠しているというか。絆創膏ばんそうこうのようなものでおおっているな。



「今、生配信していたところなの」

「そ、そうでしたか!」


「すごいでしょ。これなら乳首とか隠せるんだ」


 ずいっと見せつけるように体をこちらに向ける伊勢崎さん。す、すげえ……巨乳デカイ。しかも形の良い胸だ。それでいて細くて綺麗きれいなんだよなぁ。あまりに卑怯チートすぎる肉体美だぜ。倉片さんといい勝負だ。



「でも、なんでセルフモザイクなんです?」

「これからがすとこ! キョウくんも見る~? 有料だよ」


 マジか。そういう流れだったのか。

 配信もただの配信ではなくて『有料生配信』らしい。金を取ってやっているわけね。よく見るとチャットがまばらならがに流れているし、視聴者数も数十名。多分、課金者だろうな。

 へえ、過激なエロ部分は有料にしているわけか。

 どうやら、これから“トンデモない”行為をするようなので、俺は部屋から出ることに。これ以上は気まずい。


 しばらくしてマッサージ機のような振動音がひびいた。


 な、なるほどね。伊勢崎さん、ガチでそういう風に稼いでいるんだな。


 織田も探そうとしたが今日は不在らしい。いったい、いつもどこで何をしているんだかな……?


 気にせず、俺は編集部屋で編集ソフトをいじっていた。早くれないとな。


 ああ、そういえば昨日撮りまくった『テスト動画』を確認していなかった。あの素材を使い、編集の練習でもしてみるか。


 データをPCへ取り込み、編集ソフトに投げた。


 読み込まれた動画データをさっそく再生。すると見事に主観で撮れていた。……おぉ、マジのAVじゃん。

 ただ、ちょっと揺れが激しかったり、妙にフォーカスが合わなかったりして散々だ。う~ん、これを正式に使うとなるとクレームモノだな。

 やはり、撮影技術不足。あとで空気人形を相手に練習してみっか。なぜかこの部屋にはアダルトなグッズも散乱しているし。自由に使っていいらしい。


 有名で男のロマンでもあるオ●ホグッズ『天牙テンガ』もあるとはな。

 俺の為に買ったのだろうか……。伊勢崎さんめ!



 ひたすら編集をして未公開で投稿もしたりした。うん、今日はこんなところだろう。三時間ほどの労働をして、俺は休憩に入った。直後、スマホにメッセージが。



『今から行くね!』



 なんと、倉片さんからだった。

 やった! 職場に来てくれる!


 よし、ならばまずは見学店のことを話さねば。辞めてもらい、女優に専念せんねんしてもらう。

 かなり勇気が必要だけど、昨晩十分すぎるほどの勇気を貰った。


 この際だ、彼女が困っていることも聞いてしまおう。



 一時間ほど待ってようやく倉片さんは出勤した。……きた!



 玄関まで向かうと、とても可愛らしいドレスのような黒ワンピース姿の倉片さんがそこにはいた。な、なんて可憐かれん

 あまりに可愛すぎて目が飛び出そうになった。

 笑顔も天使そのもので、俺に向けられていた。



「こんにちは、キョウくん」



 こんなにも宝石のように美しいのに、なぜ裏の世界にいるんだよぉ……! 本当にもったいない。でも、まだ引き返せる。俺が救うっ!

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